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製品情報基盤を構築し、コンテンツサプライチェーンを最適化業務効率と従業員エクスペリエンスを飛躍的に改善

ライオン株式会社

設立

1918年

所在地:東京都

https://www.lion.co.jp/ja/

ハミガキ、ハブラシ、石けん、洗剤、ヘアケア/スキンケア製品などの製造販売大手。創業は1891年。従業員数7587名(以上連結、2022年12月末時点)。国内12拠点、海外10拠点を展開する。

約2週間 → 最短1日

製品仕様書作成の作業時間を大幅に短縮

導入製品:

課題

  • 全社員の共通利用が可能な製品情報/アセットの管理基盤が存在しなかった
  • コロナ禍の在宅勤務で、コールセンターでの対応に支障をきたしていた
  • 製品画像の画素数や撮影アングルに統一性がなく、EC掲載などの新たなチャネルへの掲載に大きな手間と時間がかかっていた

成果

  • 約60ブランド、5000を超える製品のデータを基盤内に登録し、社内向けにポータルサイトを構築
  • 最新の製品情報を検索し即座に取得。適切な画像サイズでダウンロードできるようになり、作業負荷を削減。お客様からの問い合わせにも迅速に対応できるようになった
  • これまで約2週間かかっていた社内向けの製品仕様書作成作業が最短1日で完了できるように

「部門最適の結果、閉じられていた製品情報を社内に解放し“データの民主化”を実現しました」

榎本 裕美子氏

ビジネス開発センター エクスペリエンスデザイン 戦略・開発グループ

ハミガキ、ハブラシ、石けん、洗剤、薬品など、幅広い日用品の製造/販売を手掛けるライオン株式会社。多数のブランドを有し、その製品数は5000を超える。だが、同社ではこれまで自社製品に関する画像や情報を「一元管理」していた訳ではなく、個々の事業部において最適な形で整理されていた。そのため、営業やコールセンターでは、お客様から求められる必要な製品情報や画像をその都度探す作業に追われることもあったという。

2021年、コロナ禍による在宅勤務がその状況をさらに悪化させる中、Adobe Experience Managerの導入による製品情報ポータルサイトの構築プロジェクトが始まった。求めたものは、機能性と拡張性に加え、従業員体験の向上だった。

チャネルの多様化と在宅勤務への対応で、製品情報の一元化が急務に

ライオンでは、毎年多くの新製品を開発し、既存製品と合わせてドラッグストアやスーパーなどの小売店、各種ECサイトなどで販売している。製品パッケージに記載されているような基本情報は「マスターデータ」で管理されていたが、必要となる情報は部門ごとに異なるため、それぞれ独自に管理されている状態が続いていた。

営業やECサイトの担当部門では、自部門の業務効率を良くするために製品マスターからデータを抜き出して、独自にデータベースの作成を行うこともあり、それにより製品に紐付く情報が分散するとともに、部門を超えた情報共有には多くの手間と時間がかかっていた。

特に、昨今急成長しているECサイト向けの製品情報の確保に苦労していた――。同社のヘルス&ホームケア事業本部 事業統括部 事業計画室の田村 幸子氏は、次のように語る。「各ECサイトが必要としている製品情報の仕様は、サイトや製品ごとに異なります。新規のECサイ

トに提案する際も、情報の登録時に手間取ることも多く、製品情報を素早く取得するためにも共通管理基盤の必要性を感じていました」

ヘルス&ホームケア事業本部
事業統括部事業計画室
田村 幸子氏

とりわけ重い作業だったのが、製品画像の管理と仕分けだったと田村氏は補足する。「画像は事業部門ごとに管理していたため、撮影するアングルや解像度、画像のサイズが統一されていないものもありました。それらを営業資料用に加工したり、ECサイトの製品ページに必要なサイズの画像に変換したりといった作業が発生するたびに、私たちの部門がその問い合わせに1件ごとに対応していた状態だったのです」(田村氏)

営業と並んで、情報収集に苦しんでいたのは「お客様センター」のオペレーターだ。通常お客様センターには、オフィスのすぐ手に届く場所に製品が置いてあり、お客様から問い合わせのあった製品を実際に手に取って、正しい情報提供を心がけていた。しかし、コロナ禍で在宅勤務が始まるとそれができないため、情報集めに時間がかかってしまう、という課題を抱えていた。

ビジネス開発センターエクスペリエンスデザイン戦略・開発グループの榎本 裕美子氏にとって、これらの状況は早急に改善すべき課題だった。

榎本氏は、当時考えた製品情報基盤の方向性について、次のように話す。「新しい製品データベースで目指したのは『民主化』です。これまでは、『前任者がそうだったから』という理由で、各部門が使いたい情報だけを独自に蓄積しているケースもありました。それを打破し、各部門の要求に応じて情報を取り出すことができる共通の仕組みを作ることを目指しました」

21年夏、榎本氏、田村氏を中心とした検討チームは、全社で管理する製品情報管理基盤の構築を本格的に検討開始した。

機能性と拡張性が導入の決め手に

新たな全社共通基盤の構築にあたり、ツールに求めたもの――。榎本氏は次のように語る。

「単に製品の画像や情報を集めて一元化することが目的であれば、ツールの選択肢は多かったと思います。ですが、今回ライオンが目指したのは、集めたデータを様々な部署、用途で長期的に活用できるプラットフォームの構築です」

営業やお客様センターなどの社内向けだけでなく、将来的には社外向けのサイトにも拡張し活用できる基盤として使いたい。そこまでの拡張性や他のシステムとの連携の良さを備えたツールは、わずかしかなかった。最終的に、アドビの「Adobe Experience Manager」が候補として残ったという。

ビジネス開発センター
エクスペリエンスデザイン 戦略・開発グループ
榎本 裕美子氏

「Adobe Experience Managerは、webサイトのフロントの表現にも使えるCMSと、DAMと呼ばれるアセット管理機能の両方を備えており、PDFはもちろん、PhotoshopやIllustratorなどとも容易に連携でき、クリエイティブな表現に秀でていました。

また、いかにも“業務ツール”を入れるつもりもなく、操作マニュアルを読まなくても、誰でも直感的、感覚的に扱えるインターフェースのポータルサイトあることが重要でした。その点でもAdobe Experience Manager は、頭1つ抜けていたと思います」(榎本氏)

こうした検討を経て、榎本氏、田村氏のチームはAdobe Experience Manager を採用する方針を固めた。会社への上申資料には、全社の現場で起きている課題と、それぞれがAdobe Experience Manager の採用でどう解決するかをまとめ、次世代の製品データベース環境としてAdobe Experience Manager の導入を決定、導入プロジェクトを開始した。

情報検索のしやすさで現場社員の評判は上々

いよいよ開始した導入プロジェクト。まずは、Adobe Experience Manager 内で使われる機能の名称や思想を理解するところからスタートしたという榎本氏。「アドビ製品の用語の裏にある思想を理解する必要がありました。プロジェクト開始時にトレーニングを受けたり、コンサルタントの方と意味を確認しながら、徐々に疑問を解消していきました」

Adobe Experience Manager の基本を学びながら導入を進め、22年10月に稼働を開始。23年現在、製品情報を扱う現場の担当者は揃ってAdobe Experience Manager の導入を歓迎している。

Adobe Experience Manager で作成された製品情報ポータル「製品詳細」ページ

「製品マスターは、従来のまま運用を続けています。Adobe Experience Manager は、製品マスターから基本情報を自動連携し、そのデータに製品ごとにユニークな情報を都度追加して、リッチな製品データベースを構築しています。自動と手動で連携させ、製品情報の登録ができるため、非常に管理しやすくなりました」(田村氏)

特に評価が高いのが、情報検索が容易になったことだ。これまで、情報を集めるのに非常に時間がかかっていた製品の生産国や危険物取り扱いに関する情報などが、Adobe Experience Manager を検索することですぐに入手できるようになったことは大きいという。

「製品に関する情報がすべて集約されていて、検索すればすぐに出てくる状態。まさにかゆいところに手が届くポータルサイトができたと感じています。今では、このポータルの魅力を感じた現場から『こんな情報も追加してほしい』『こんな機能は追加できないか』などの声も届くようになりました」(榎本氏)

外部に委託していた作業や、手間のかかる作業が一瞬で完了

また、田村氏が最重要課題としていた画像のリサイズは、Adobe Experience Manager の導入で完全に要求を満たすことができた。

「各ECサイトによって異なる画像のサイズ、解像度、フォーマットなどを指定するだけで簡単にダウンロードできます。現場が自分たちで欲しい画像のサイズに合わせてリサイズできるようになったため、私たちの部署への依頼はなくなりました」(田村氏)

外部の制作会社に依頼していた画像の加工作業もなくなったことで、依頼する手間やその時間、コストのすべてが不要になったのだった。

もう1つ、田村氏がAdobe Experience Manager の効果を実感しているのが、製品の担当部署が新製品発売時に作成する「セールスハンドブック」という資料の作成だ。従来は、情報を集めて資料にまとめる作業に1〜2週間かかっていたが、Adobe Experience Manager に集まった製品情報をAdobe Acrobat Service APIs(Adobe Documet Generation API)を通じて引き出せば、数時間でPDFとして出力することができる。「同じ情報を使って、競合製品との違いなど営業担当者向けのセールス資料も作っていますが、Adobe Experience Manager 導入後は、その内容に集中できるようになりました」(田村氏)

榎本氏は今後、Adobe Experience Manager による製品情報データベースを生活者向けの情報発信にも活用していきたいと考えている。「製品ブランドごとにwebサイトを作っていますが、ブランド規模の大小によってかなりコンテンツの充実度合いが異なっています。予算の少ないブランドは、まだ簡単な情報しか載せていないのですが、Adobe Experience Manager から高品質な画像を提供できるようになれば、サイトのクオリティを高めることができると考えています」

ライオンでは30年に「次世代ヘルスケアのリーディングカンパニーを目指す」という経営ビジョンを掲げている。多数の製品を取り扱う同社にとって、製品情報の一元化と円滑な管理体制の構築は、ビジネスの成長に不可欠な要素だった。その上で、増え続ける顧客接点に対応し、きめ細やかなコミュニケーションを実現するためには、情報基盤にも高い能力が求められる。

生活者の暮らしを向上させるという高い意識が、同社の社員には根付いている。Adobe Experience Manager が備える柔軟性と拡張性、他のシステムとの連携のしやすさは、その社員の意識と活動を支える基盤として力を発揮し始めている。

※掲載された情報は、取材当時(2023年9月)のものです。

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