CMSとは?コンテンツ管理システムの種類や仕組みなどを解説

CMSとは、コンテンツを制作、編集、公開するプロセスを効率化するソフトウェアです。デジタル変革と顧客体験の向上に対する注目の高まりから、CMSに改めて脚光が集まっています。

この記事では、CMSの意味と背景、アジャイルCMSやヘッドレスCMSなどの種類、最新トレンドもふまえて、CMSを詳しく解説します。

CMSとは?

CMSとはcontent management systemの略で、webをはじめとするデジタルチャネルに、コンテンツを制作、編集、公開するためのソフトウェアです。日本語では「コンテンツ管理システム」となります。企業はCMSを利用することで、顧客に届けたいメッセージを効率的に発信できるようにします。

CMSの概要

CMSはインターネットの黎明期から普及期にかけ、webサイトのコンテンツを管理するために登場し、web CMS、WCMとも呼ばれていました。SNSやスマートフォンの登場を経て、デジタル時代の今では、管理すべきコンテンツの増加だけでなく、配信対象とすべきデジタル顧客接点も多様化の一途を辿っています。そのため今日のCMSは、webサイト、モバイルアプリを始めとする、さまざまなデジタル顧客接点を対象として、コンテンツを管理、配信する役割を担っています。

CMSは小規模企業でも使われることもありますが、中堅規模以上の企業向けCMSでは、コンテンツの量や更新量、配信対象となるデジタル顧客接点の数などが増えても、破綻すること効率的に運用できるように設計されています。またCMSは、組織でさまざまな役割を担う多くのメンバーが利用するため、役割に応じた使い勝手、コラボレーションの効率性推進なども重要な役割となります。

CMSが重視される理由

CMSは以前から存在する領域ですが、いま重視されている理由は何でしょうか?主な理由を5つ取り上げます。

理由1.魅力的な顧客体験の創出が求められている

企業と顧客の接点として、デジタル体験が重要なのは言うまでもありません。B2Cにおける消費者、B2Bにおける取引先とも、知りたい情報を欲しいときにいつでも得られることが、当たり前になりました。顧客にとってブランドや製品の情報をきちんと得られることが、顧客の欲求やニーズを満たすことにつながるからです。

そうした企業と顧客のインタラクションの場となるデジタル顧客接点において、期待される体験を創出し、適切な相手に的確なコンテンツをタイムリーに提供するのが、CMSの今日の役割となりました。

理由2. 対応すべきデジタルチャネルが増えている

CMSのコンテンツ配信先となるデジタルチャネルは、webサイトはもちろんのこと、モバイルアプリ、メール、SNS、実店舗におけるキオスク端末やデジタルサイネージ、IoT機器などのスマートデバイスなど、多岐にわたります。コネクテッドカー、VR/AR、メタバースなど、これからも新たなデジタルチャネルが登場するでしょう。

理由3. 管理すべきコンテンツの量が増えている

またCMSが管理するコンテンツは、それらの任意のチャネルに対応できるだけでなく、顧客の興味関心に即した、感情に語りかけるものが必要になります。顧客のニーズは一人ひとり異なるため、制作し、管理すべきコンテンツの数は増加する一方でしょう。

理由4. パーソナライゼーションが求められている

そしてCMSは、コンテンツとデジタルチャネルを結ぶだけでなく、コンテンツ配信先となる一人ひとりの顧客像を把握したうえで、適切に配信すること、つまりパーソナライゼーションも求められます。

理由5. コラボレーションの促進と業務効率化が求められている

自社の語るべきストーリーをコンテンツ化するには、マーケターが企画し、クリエイターが制作します。特定のデジタルチャネルに対応するには、エンジニアがフロントエンド開発を担います。CMSは、これらの異なる役割を持ったメンバーがコラボレーションしながら、すばやく企画を体験へと変えていく役割を担います。コンテンツ制作、フロントエンド開発、そしてシステム全体の運用管理を、CMSは迅速化、簡素化、効率化する役割を果たします。

このように、WCMSの時代には思いも寄らないほど複雑化した状況を解決するために、先進的なCMSの果たす役割に期待が集まり、注目されているのです。

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CMSの種類

CMSには、簡易なものから非常に高度なものまで、webサイト構築用ツールから、制作から編集、公開までのプロセス全体を効率化する大規模CMSスイートまで、非常に幅広いものが存在しています。マーケティング施策によって使い分けるテンプレート、ドラッグ&ドロップ式のインターフェイス、クラウドサービスとして提供されるものなど、CMSによってさまざまな特性があります。

主なCMSの分類

CMSの種類として、以下のような分類がよく見られます。

フリーCMS / 商用CMS

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代表的なCMS製品

多数存在するCMSの中から企業が導入検討する際に、よく比較選定の対象となるCMS製品をいくつかご紹介します。

Adobe Experience Manager中堅規模から大規模企業向けに開発されています。オムニチャネルCMS、ハイブリッドCMS、クラウドCMS、アジャイルCMSといったCMSの種類に該当し、DXP(デジタルエクスペリエンスプラットフォーム)にも分類されます。コンテンツのオムニチャネル配信、コンテンツ制作フローの効率化、パーソナライゼーション、DAM(デジタルアセット管理)搭載、といった特長があります。WordPress世界最大のオープンソースCMSで、記事やブログのためのwebサイト構築用ツールとして知られます。DrupalWordPressよりも複雑なオープンソースの選択肢となっています。Drupalにはあらかじめテーマと拡張機能が用意されています。Drupalをベースとした商用CMSもあります。JoomlaDrupalとWordPressの中間的な存在として挙げられることが多いCMSです。Joomlaは複雑な機能を求める大企業に適しています。Squarespacewebサイト構築用ツールとして位置付けられている商用CMSです。シンプルで使いやすさを特長とするデザインテンプレート、ドラッグ&ドロップ機能を備えています。オープンソース化はされていません。WixSquarespaceと同様、Wixはウェブ開発の経験がない初心者向けです。

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CMSの仕組み、メリット、構成要素

CMSはどのような仕組みになっているのでしょうか。CMSの目的や対象規模によって、CMSが備えている機能や構成要素はさまざまですが、期待される要件を取り入れてきた先進的なCMSをモデルに、CMSの構成要素と仕組みを解説します。

CMSを使わないとどうなるか

webサイトはページで構成され、ページはHTML、CSS、JavaScriptといった記述言語で構築されています。コードを記述してページを構築し、各ページの構造を設計、管理し、公開すると、webサイトはできあがります。ページ数が少なく、情報の更新頻度も少なく、配信先がスマートフォンのみ、PCのみ、だったとしたら、CMSを使わず、手作業でも済むかもしれません。

なぜCMSが必要なのか

しかし、CMSを使わずに済むのは、そうした限定的な場合だけです。サイト全体の規模、更新の頻度、表現手法、レスポンシブ対応、複数チャネル対応といった要件を満たすには、CMSの導入は不可欠です。動的サイトの構築、膨大なコンテンツの更新、クリエイターとマーケターの連携、プレビューと承認、公開タイミングの調整、配信先チャネル間での一貫性維持、仕様の異なるチャネル毎へのコンテンツの加工や調整など、CMSによって自動化、効率化されるべき作業は膨大です。

CMSによって実現されるメリット

デジタル時代の今、一人ひとりのニーズに対応し、相手とのそれまでのやり取りの状況に応じた対応も求められます。静的で万人向けの体験よりも、動的で、一人ひとりに即した体験が望まれます。そのニーズに備えて、膨大な順列組み合わせのコンテンツのバリエーションを用意しておかなければなりません。そして、任意のデジタルチャネルを通じ、相手に応じて届けるべきコンテンツを組み立て、コンテンツを配信する、パーソナライゼーションのニーズにも応える必要があります。

このようにCMSは、表現技術、制作量や制作頻度、運用の手間や時間、顧客体験の最適化など、さまざまな課題や要件を満たすための機能を備えています。また、ワークフロー、クリエイティブツール、DAM、翻訳エンジン、CRMやMA、CDP、コマース、在庫管理やフルフィルメントなど、他の様々なシステムとの連携することで、CMSは顧客体験のハブの役割も果たします。

CMSは顧客体験のハブ

代表的なCMSの仕組み

それではCMS の仕組みを、Adobe Experience Managerを使用した場合を取り上げて説明します。

アーキテクチャ

Adobe Experience Managerでは、ヘッドフル型(従来のブラウザーで閲覧されることを前提としたwebサイトへのコンテンツ配信)、ヘッドレス型、またはそのハイブリッド型、いずれかを柔軟に選択できます。コンテンツの組み立て、管理、配信は、テンプレートを使ったオーサリング、または GraphQL API を使用した呼び出し、いずれでも行うことができます。

インスタンス

Adobe Experience Managerは、クラウドCMS、つまりSaaSとして提供される、クラウドネイティブなアプリケーションです。IT部門は、このクラウド上で開発を行います。またクリエイターやマーケターといったコンテンツ作成者も、クラウド上でコンテンツを編集、追加、検索、組み立て、管理を行います。

オーサリング

Adobe Experience Managerの「クイックサイト作成」機能を使うと、コンテンツ作成者は、テキスト、画像、SNS共有要素などの編集可能なコンポーネントを、ページにドラッグ&ドロップすることで、サイトを構築することができます。

配信

モバイルアプリやIoTなどのチャネルへコンテンツを配信する場合は、IT部門がヘッドレスCMSの機能を利用して、そのチャネルに応じた開発を行います。ヘッドレスとは、コンテンツをプレゼンテーション層(ヘッド)から切り離すことを指します。ヘッドレスにより、コンテンツはチャネルに依存しない形式で配信されます。そして、電子メール、モバイルアプリ、ウェブページ、ソーシャル投稿など、あらゆるチャネルでコンテンツを再利用することができます。

コンテンツの制作から配信までの流れ

Adobe Experience Managerでは、企業から顧客へのコンテンツの流れを、3つのシンプルなステップで表せます。

コンテンツの作成者は、サイトのコンテンツを更新します。コンテンツ作成者は、サイトのコンテンツを更新します。更新後、プレビュー、レビュー、承認を経て、本番公開させます。

CMSの構成要素

CMSの構成要素の中核は、次の2つの部分です。

コンテンツ管理アプリケーション(CMA):サイト公開前にコンテンツの追加や管理を行うための機能要素です。

コンテンツ配信アプリケーション(CDA):CMAにアップロードされたコンテンツをバックエンドに保存し、閲覧者に配信するための機能要素です。

CMSの選び方と選定基準

マーケターがCMSを選ぶうえで重要なことは、特定のCMSの仕様に合わせて業務オペレーションを変えなければならない、というプレッシャーを感じる必要はない、ということです。自社のビジネスニーズは、マーケターが一番よく知っています。その、コンテンツの目標を達成するために、どのCMSが役立つかを選定すればよいのです。ここでは、CMSの選定を始めるにあたって考慮すべき4つの選定基準を説明します。

CMS選定基準1.自社の業界

CMSの中には、コマース機能、オンライン接客機能など、ビジネスモデルや分野に特化した機能を提供するものもあります。

CMS選定基準2.自社の規模

ビジネスの規模、コンテンツに携わるチームの人数、コンテンツの量は、どのくらいでしょうか。大規模なチームで大量のコンテンツを扱うには、その規模感に適した設計のCMSを探しましょう。

CMS選定基準3.チームのニーズ

どのような機能がCMSに必要なのか、すぐに分からなくても大丈夫です。しかし、解決したいこと、簡素化したいことなど、重視したい機能要件についての簡単なリストを作ると、CMSの選定基準を明確化し、候補を絞り込むことができます。IT部門の開発能力や運用能力は十分でしょうか?マーケティング施策を考えたとき、どのようなコンテンツが管理対象になるでしょうか?そのためのテンプレートは何が必要でしょうか?いま取り組むべきチャネル、今後取り入れるべきチャネルはどれでしょうか?ヘッドフル型(従来型)、ヘッドレス型、ハイブリッド型のどれがふさわしいでしょうか?パーソナライズは検討していますか?その粒度はどの程度精緻でしょうか?パーソナライズには不可欠となる顧客データや顧客プロファイルは、どの程度利用可能でしょうか?こうしたニーズを、ひとつづつ明確化しましょう。

CMS選定基準4.必要となる支援のレベル

自社内にいる人材だけで、CMSの実装と運用にまつわるすべての業務をまわすことができるでしょうか?多くの場合、CMSベンダー自身や、実装や開発、運用サポートを提供するCMSベンダーのパートナー企業から、さまざまな支援サービスを受けながら、CMS運用の持続と進化を図っていくことになります。そこでCMSの選定にあたっては、自社内だけでなく、そうした社外リソースからどのようなレベルの支援を得たら良いか、検討します。

例えばアドビの場合には、アドビはテクノロジーベンダーであるだけでなく、コンサルティングサービスも提供しています。顧客体験戦略の策定、顧客体験のデザイン、組織体制構築、プロトタイピングと開発など、企業が必要とする支援に応じたサービスを提供します。また、アドビの広範なパートナーネットワークから、さまざまな支援を得ることができます。

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基盤としてのCMS

さまざまな進化を遂げてきたCMSは、その中核的な役割であるコンテンツ管理だけでなく、コンテンツの管理と配信にまつわるさまざまなシステムとの連携によって、それらを繋げる「ハブ」となること、デジタル基盤としての役割を果たすことも、求められるようになりました。このように、多様なテクノロジーのハブのような役割を担うCMSを、CXM(顧客体験管理)基盤、DXP(デジタルエクスペリエンスプラットフォーム)などと呼ぶこともあります。

たとえば、CDP(顧客データプラットフォーム)、パーソナライゼーションエンジン、コマース基盤、MAなどの他システムとの連携です。このようなハブとしての能力、システム連携の拡張性も、CMSの選定基準として考慮するとよいでしょう。

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CMSのメリット

選定したCMSを導入し、開発や実装などの構築を経て、運用するまでの工程は、難しく感じるかもしれません。実際、CMSを自社のサーバーファームに導入するオンプレミス型が主流の時代には、CMSの構築と運用には高度なスキルとプロジェクト管理能力、そしてある程度の長さの実装期間が不可欠でした。また、パフォーマンスの設計、ピーク時への対策、セキュリティへの対策、アプリケーションや基盤自身のアップグレードと後方互換性の検証など、さまざまな困難が伴いました。これらはいま、クラウドCMSの登場により、ほとんどが解消しています。そのため、CMSを導入してから、運用を開始し、顧客体験の提供を通じて価値を創出するまで、システム面ではなく、より戦略面に注力することができるようになっています。

CMSを利用する戦略的価値は、なんといってもデジタル顧客体験の向上にあります。とくにコンテンツ配信のパーソナライズは、テクノロジーを活用しなければ成り立ちません。

マーケティング部門やIT部門の負担を増やすことなく、コンテンツ創出量を増やし、パーソナライゼーションの粒度を精緻化させることができるのは、Adobe Experience ManagerのようなCMSを活用する大きなメリットです。デジタル顧客体験の向上によって、顧客を惹き付け、魅了し、関係性を強化して、ビジネスを成長させることができます。

Adobe Experience ManagerのようなCMSを使用するメリットをまとめます。

CMSのメリット1. オムニチャネル体験の迅速な提供

インコンテキスト編集、ドラッグ&ドロップ機能、カスタマイズ可能なテンプレート、Adobe Creative Cloudとの連携などにより、マーケターの生産性を向上、コンテンツ制作を加速します。

ヘッドレス機能により、チャネル毎にコンテンツを再作成することなく再利用しつつ、IT部門の開発生産性を維持しながら、任意のチャネルに対するコンテンツ配信を実現します。

CMSのメリット2. コンテンツ制作ワークフローの合理化

デジタルアセットを制作するクリエイター、コンテンツを組み立てるマーケター、チャネル毎の仕様に応じた配信を実装する開発者など、コンテンツにまつわるさまざまな役割のチームによるコラボレーションを効率化し、ワークフローを合理化します。

コンテンツの一元管理により、手作業を排除し、ワークフローの分断を防ぎ、無駄な作業や重複を減らしてコストを削減し、組織全体の生産性を向上します。

CMSのメリット3. 将来にわたる拡張性

エクスペリエンスの最適化、パーソナライズ、AIを活用した自動化、コンテンツに関するインサイト獲得など、コンテンツにまつわる多様なシステムと連動し、コンテンツから最大の価値を導きます。今存在する多彩なデジタルチャネルだけでなく、今後登場するであろう未来のテクノロジーにも備えることができます。

まとめ

CMSには、対象とする用途や規模の異なるさまざまな選択肢があります。その中で、中堅規模以上の企業が抱える課題のほとんどに対応でき、オムニチャネルへの対応、コンテンツ制作の迅速化と生産性向上、クラウドネイティブな拡張性と安全性、といった圧倒的な特長を、アドビのCMS製品であるAdobe Experience Managerは備えています。CMSを選定する際には、ここまで解説した点なども踏まえて、アドビのCMSを検討してみましょう。

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参照トピック

https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/page-request-consultation