分析:Analytics
分析とは、データをアクションに転換する方法を明確にするための仕組みです。分析によって、企業はデータを理解し、それにもとづいて行動するための戦略を判断できます。
ポイント
分析は、企業によるデータ活用の土台となる戦略です。
分析は主に、記述的、診断的、予測的、処方的、認知的の5つに分類することができます。企業による分析利用の成熟度が増していくにつれ、それぞれが次の段階へと発展します。
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分析に関する様々な疑問に、Nate Smithが回答します。Nateは、Adobe Analyticsのグループプロダクトマーケティングマネージャーを務め、戦略マーケティングを担当し、継続的な製品リリースに取り組んでいます。過去15年間もの間、デジタルマーケティングに携わっており、ブリガムヤング大学で情報システム分野の理学士号とMBAを取得しています。
もくじ
- 分析とデータ分析にはどのような違いがありますか?
- 分析にはどのような種類がありますか?
- 分析の各段階をどのように進めればよいですか?
- 優れた分析ソリューションにはどのような機能が必要ですか?
- なぜ分析が重要なのですか?
- 分析を効果的に活用するためにはどうすればよいですか?
- 陥りやすい失敗は何でしょうか?
- 分析は今後、どのように変化しますか?
分析とデータ分析にはどのような違いがありますか?
分析は体系的かつ戦略的におこなわれるもので、答えを得るための方法を明らかにすることに重点を置きます。収集すべきデータを明らかにするプロセスのことです。データ分析は、テクノロジーを利用して、情報を分割し、情報を見つけ出すことを指します。
分析でおこなうのは、単なるデータ収集ではありません。収集したデータを処理して、形と意味を与えます。形と意味を把握したら、データ分析の出番です。
分析にはどのような種類がありますか?
分析の主な種類には、記述的、診断的、予測的、処方的、認知的の5つがあります。記述的分析では、レポートを作成し、利用者の行動に関する情報を取得します。次の段階は診断的分析です。データに手を加えて、有意義なインサイトを取得します。特定の問題を解決するために、分析の方向性を定義したり、決定したりします。
記述的分析と診断的分析では、以前に起きた出来事に目を向け、過去を掘り下げます。予測分析では将来に目を向け、今後起こる可能性が最も高いことを予測します。予測分析では、過去に起こったことをベースにして、特定のタイプの行動やエンゲージメントを予測できます。例えば、ロサンゼルス在住で、ある企業のFacebookページからその企業のwebサイトにアクセスした顧客は、商品を購入する可能性が高いということがデータから明らかになります。これにより、Facebookページ経由でwebサイトにアクセスしたロサンゼルス在住の顧客は、買い物かごの破棄率が低いことを予測します。
予測分析のポイントは、企業がマーケティングの予算と活動を最適化できるということです。マーケティングキャンペーンに費用を費やす際には、期待する効果があることに確信をもって取り組みたいと考えます。予測分析を利用すれば、その確信を強めることができます。期待する効果を生み出すキャンペーンがどれなのかを把握することができるのです。
次の段階は、処方的分析です。予測分析では基本的に、特定の範囲内で起こる可能性が高い物事を予測します。しかし処方的分析では、成果を確実に得るために何をすればよいかをシステムが提示します。
アプリのダウンロードを例に考えてみましょう。処方的分析では、顧客のタイプ、セグメント、特性、行動など、関連するあらゆる要素を分析します。そのうえで、アプリをダウンロードした顧客に対しては、割り引きサービスについて記載した電子メールを送信するのが効果的であることをシステムが提案します。処方的分析では、データにもとづいて、対象の顧客をコンバージョンに誘導するための次のステップをマーケターに提示します。
認知的分析では、これをさらにひとつ上のレベルに発展させます。人が多数のルールを定義するのではなく、システムが動的に自ら学習していきます。割り引き情報を記載した電子メールの送信が次の処方的なステップであることを学習すると、システムはそれを自動的に知識として習得します。
分析の各段階をどのように進めればよいですか?
分析への取り組みの成熟度が低い段階では、記述的分析を使用するしかありません。その場合は、業界でバニティメトリクス(虚栄の指標)と呼ばれるものを使用することになります。例えば、競合企業がアプリを運用しているので、アプリを開発したいと考えている上層部がいる場合は、それが重要プロジェクトになり、アプリがどの程度の成果を上げたのかを確認することが目的になります。ここで、ダウンロード数は実質的な成果指標にはなりません。ダウンロード数がビジネスにどの程度の効果を与えるのかを示す指標がないからです。
このようなケースで、バニティメトリクス(虚栄の指標)に関する記述的分析や基本的なレポートが使用されます。これは、有料メディアなどに過度の予算を費やしている企業で多く見られます。こうした企業が重要視するのは、Googleでのクリック数やインプレッション数のみです。そういった指標はレポート作成が容易ですが、結局はマイクロコンバージョンでしかありません。
記述的レポートの観点からは、アプリで獲得した売上やアプリを起点にして生まれた売上が、優れた指標となります。
診断的な観点では、ここで記述的分析を細分化し、最も価値が高いターゲットの市場やオーディエンスを明らかにします。診断的分析は、あらゆるチャネルの顧客の中で、平均注文額が最も高い顧客のタイプを特定するのに役立ちます。
その後、さらに細分化して診断的分析の次の段階に進み、売上に貢献している要素を把握します。予測分析を使用するのはこの段階です。業界で大きな注目を集めている領域です。
予測分析に移行することで、どのようなアクションが実際の成果をもたらすのかについて、合理的な確証を得ることができます。例えば、診断的分析を細分化し、売上への貢献度が最も高いセグメントを3つと、そこから顧客を獲得する方法を把握した場合は、それらのセグメントに割り当てるマーケティング予算を増やします。
Google検索への投資を増やせば、その分平均注文額が高まるという予測が立ちます。それが予測の役割です。予測分析によって、予算を増やせばそのような数値が高まることを予測できるのです。
優れた分析ソリューションにはどのような機能が必要ですか?
優れた分析ソリューションでは、独自のデータを収集します。あらゆるチャネルからデータを収集できることが非常に重要です。単一の環境でオフラインチャネルとオンラインチャネルの両方のデータをまとめて分析する必要がある場合は、それを実行する機能が分析ツールに必要となります。
優れた分析ソリューションに必要なふたつ目の要素は、収集したデータを統合、正規化する機能です。分析ソリューションには、データを取得して処理する機能が必要です。統合されたデータストアがある場合は、そのデータストアがすべての土台になるからです。
分析ツールには、フリーフォーム分析機能も必要となります。データを確認して分割し、疑問の答えを調べたり、データを照会したりできるフリーフォーム環境です。
最後に、分析ツールには、優れた視覚化機能と効果的な書き出しオプションも必要です。これは、分析ツールから得た結論や出力にもとづいて行動に移ることができるようにするためです。
視覚化は、やり取りが容易になるように、わかりやすいものにする必要があります。そうすることで、訪問者や利用者の行動を明確に把握できるようになります。また、視覚化は追加の分析手法としても役立ちます。多くの人は、データのテーブルを細分化することだけを分析と考えていますが、視覚化された要素を利用した分析では、それらの要素から新たなインサイトを導き出すことができます。コンテクストを考慮して、データの関係性を把握することが可能です。
なぜ分析が重要なのですか?
最終的には、データドリブン型の意思決定をおこなうためです。それが最終目標です。企業は依然として、直感やビジネスに関する勘で非常に多くの決定を下しています。しかし、最終的には、データをもとに意思決定をおこなう方が優れていることに異論の余地はありません。
データにもとづいて判断を下すことが非常に重要です。分析の意義は、意思決定に統計的または数学的な確実性を組み込めるところにあります。
分析を効果的に活用するためにはどうすればよいですか?
データガバナンスと分析ガイダンスにしっかりと重点を置く必要があります。組織やチームに、どのような安全策とベストプラクティスを導入する必要があるのかを考える必要があります。
データガバナンスは、各チームによるデータの利用方法についてのルールを規定する、企業のプレイブックのようなものです。データガバナンスを導入していない場合、異なるグループ間で変数の定義が異なり、分析はもちろんのこと、レポートさえも統合することができません。
企業はまず、データを収集するのではなく、戦略の策定に注力する必要があります。多くの企業では、「データレイクを構築し、あらゆるデータを取り込んで保管すれば、顧客とカスタマージャーニーに関する優れたインサイトを抽出できるだろう」と考えています。しかし、それではビジネス成果を高める行動につながるインサイトを得ることはできません。そうではなく、「2020年はオンライン販売を50%増やす必要がある」と考えれば、そこからすぐに道が開けます。ビジネス成果を高めるインサイトを得るためには、どのようなデータを収集、分析すればよいのかがわかります。そのため、まずは戦略を策定することが大事です。
その後、3個から5個の主要ビジネス目標(KBO)を設定することになるでしょう。この5個の目標は戦略に影響します。
これは車に例えることができます。アナハイムからサンフランシスコまで運転するという戦略があるとします。アクセルを踏むことや、車そのものを入手することなど、車に関する重要な目標がいくつかあります。戦略は車に乗って出発することであり、主要ビジネス目標はアクセルを踏んで発進することです。
KBOの中にはKPIがあります。KBOが戦略に影響を与えていることを示す指標です。もう一度車の例で考えてみると、アクセルを踏む際に、どれだけ速度を出しているかを示すスピードメーターが、KPIゲージになります。この場合、時速が追跡対象の候補となるKPIです。
したがって、戦略と、3個から5個のKBO、各KBOにおよそ3個から5個以内のKPIが必要です。それらを用意できたら、各KPIの達成に必要な戦術を定義します。例えば、ある小売業者が、オンライン売上を50%高めることが必要だと判断したとします。おそらく、平均注文額をX%高めることがKBOのひとつとなるでしょう。そこで、平均注文額をKPIとしてチェックすることになります。では、それを実際に実現するために取るべき戦術は何でしょうか。オンラインショップで購入手続きをおこなう際にクロスセルを仕掛けたり、電子メールでプロモーションコードを配信して割引を実施したりすることなどが、適用する戦術として考えられます。そういった戦術を絞り込んでいくと、何をすればよいかがわかります。そのうえで、それらの戦術、作成したエンゲージメント、バックアップするファネルであらゆるデータを収集し、戦略に役立てます。
陥りやすい失敗は何でしょうか?
大きな失敗は、データガバナンスを導入しないことです。また、企業は、間違った疑問点や指標に重点を置いたり、分析ツールを購入した時点ですべてが完了したと思い込んだりすることもあります。分析や統合をおこなわなくても、あらゆるデータを収集すれば、後で理解できると思い込んでいる場合もあります。
多くの企業が、あらゆるデータをデータレイクにまとめようとしています。こうした企業では、一元化されたアナリストチームやデータサイエンスチームが、信頼できる唯一の情報源を活用して、優れたインサイトを獲得しています。しかし、ひとつの小さなグループにインサイトの獲得を任せることはできません。企業には多くの従業員がいて、それぞれの業務のために、リアルタイムのデータとインサイトが求められています。それらを一元化されたチームで管理しようとすれば、電子メール担当のマネージャーがレポートを申請しても、レポートが届くのが3週間後になり、時機を逃してしまうこともあります。
また、人間の理解をなおざりにして、常に具体的な数値だけに頼るのも、データを無視することと同じくらい間違いです。例えば、何かを示唆する具体的な数値データがあるものの、業界で経験を積んだ自らの感覚とはかけ離れていたとします。そうしたケースでは、質的要因を考慮に入れ、データの収集や分析にエラーがなかったかを理解しようとする必要があります。
分析は今後、どのように変化しますか?
今後、対応が必要となる分析の大きな課題は、プライバシーです。特に、ヨーロッパのEU一般データ保護規則(GDPR)やカリフォルニア州のプライバシー法などに準拠することが重要です。また、チャネルの急増も課題となります。これまでデジタル化されていなかったものが、現在ではデジタル化されています。それらはまったく新しいデータセットやチャネルとなって、既存のデータと統合しなければならなくなります。webとモバイルはチャネルとして成熟しつつありますが、音声アシスタントなどの新興チャネルが生まれています。
AIやマシンラーニングで分析を支援する拡張分析も増えるでしょう。AIの機能が支援していることに気が付かないまま、高度な分析をおこなっている担当者もいます。
参照トピック