カスタマーマーケティングとは?注目される理由や施策、事例を解説
カスタマーマーケティングは、顧客を獲得した後にフォーカスした、既存顧客に対して行うマーケティングのことです。カスタマーマーケティングの概念は以前から存在していましたが、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を高めるカスタマーサクセスが浸透するにつれ、その重要性があらためて注目されるようになりました。
ここでは、カスタマーマーケティングとは何かという基本のほか、注目すべき理由や、具体的な施策について解説します。
目次
- 既存顧客に対して行うカスタマーマーケティング
- カスタマーマーケティングが注目される理由
- カスタマーサクセスの代表的な方法
- カスタマーマーケティングで期待できる効果
- カスタマーマーケティングの施策
- MAでスムーズなカスタマーマーケティングを
- Marketo Engageを活用したカスタマーマーケティング事例
- MAを活用してカスタマーマーケティングに取り組もう
既存顧客に対して行うカスタマーマーケティング
カスタマーマーケティングとは、既存顧客に対して行われるマーケティングのことです。
新規顧客獲得のために行うマーケティングは、潜在顧客を掘り起こして育成し、製品やサービスを購入してもらうことを目指します。一方で、カスタマーマーケティングで目指すのは、既存顧客のLTV向上です。
カスタマーマーケティングの具体的な例としては、顧客ロイヤリティの向上やアップセル、クロスセル、購入した人の定着を図るオンボーディング、継続的な利用につなげるリテンションマーケティング、購入者の口コミ促進などが挙げられます。
カスタマーマーケティングが注目される理由
既存顧客との関係づくりに注目したマーケティングは、決して珍しいものでも、新しいものでもありません。これまでも、多くの企業が新規顧客開拓と並行してカスタマーマーケティングに取り組んできました。
では、なぜ今、あらためてカスタマーマーケティングに注目が集まっているのでしょうか。理由は大きく2つ考えられます。
既存顧客維持にかかるコストの低さ
カスタマーマーケティングが注目されている理由のひとつは、新規顧客開拓にかかるマーケティングのコストよりも、既存顧客維持にかかるマーケティングのコストのほうが低いということです。
新規顧客開拓に必要なマーケティングのコストは、既存顧客維持の5倍といわれています。売上は同じでも、新規顧客開拓は顧客の獲得にかかるコストが大きい分、利益率が下がります。一方、既存顧客維持は、新規顧客開拓よりもマーケティングのコストが低いため、利益率は高くなります。
企業が成長する上で新規顧客開拓は欠かせないものですが、安定した利益を得るには、戦略的に既存顧客を維持していくことが必要です。
サブスクリプションの増加
企業が商品やサービスを一定期間提供し、顧客は月額や年額で定期的にその利用料を支払うサブスクリプションの増加も、カスタマーマーケティングへのシフトを後押ししています。
サブスクリプションは、導入時のコストを下げ、契約を継続してもらうことによって収益基盤の安定を図ることができます。サブスクリプションの解約を阻止し、一定の売上を獲得し続けるためには、カスタマーマーケティングが有効です。
カスタマーサクセスの代表的な方法
カスタマーサクセスとは、企業が顧客を成功に導くための行為を指します。カスタマーサクセスで成功体験を得た顧客は、ロイヤリティやLTVの向上が期待できます。
カスタマーサクセスは、カスタマーサポートと混同されやすいのですが、別のものなので注意しましょう。カスタマーサポートは顧客の不満を受動的に解決するのに対して、カスタマーサクセスは顧客の成功のために能動的にアプローチするのが特徴です。
また、カスタマーマーケティングは既存顧客に実施するマーケティングすべてを指しますが、カスタマーサクセスは顧客を成功に導くための行為のみを指します。
カスタマーマーケティングを成功させるためには、カスタマーサクセスを実施し、顧客ロイヤリティを向上させる必要があります。代表的な方法は、顧客をLTVの高い順に「ハイタッチ」「ロータッチ」「テックタッチ」の3つの層にセグメントし、それぞれの層に応じたアプローチを行う方法です。
ハイタッチ:コンサルティングに近い形で顧客に寄り添う
ハイタッチには、LTVが最も高い顧客層で、顧客を確実に成功へと導くためのコンサルティングに近いアプローチを行います。カスタマーサクセス担当による定期的なサポートや高頻度の対面ミーティングなど、個別最適化されたアプローチを行うため、多くの人的リソースが必要です。
なお、ハイタッチで発見された課題を長期的にフォローする場合は、少ないリソースで効率良く対応するために、ロータッチとテックタッチ向けのアプローチ方法を適用するのが現実的です。
ロータッチ:ハイタッチより効率性を重視する
ロータッチには、ハイタッチよりLTVが低い顧客層で、少ない人的リソースでハイタッチよりも効率的にアプローチを行います。
実施するアプローチは、電話やメール、研修など、効率を重視したものです。
テックタッチ:テクノロジーで広くアプローチする
ロータッチよりLTVが低い顧客層であるテックタッチには、ツールなどのテクノロジーを使ってアプローチを行います。
チャットボットや製品のwebサイトへのFAQ設置、MA(マーケティングオートメーション)を活用した顧客の行動ベースのメールやSNS配信など、最小限の人的リソースで多くの顧客に対応できるようにしましょう。
カスタマーマーケティングで期待できる効果
カスタマーマーケティングにより期待できる効果は、大きく2つあります。それは、顧客ロイヤリティの向上と、既存顧客の口コミによる新規顧客の獲得です。
顧客ロイヤリティの向上
カスタマーマーケティングにより期待できる効果のひとつは、顧客ロイヤリティの向上です。
顧客が「製品やサービスを導入して良かった」「課題が改善された」といった成功体験を得ることによって、顧客の製品やサービスに対する愛着が高まり、解約や離脱を未然に阻止できます。 アップセルやクロスセルによる売上の増加も期待できるでしょう。
既存顧客の口コミによる新規顧客の獲得
カスタマーマーケティングで期待できるもうひとつの効果は、既存顧客の口コミによる新規顧客の獲得です。
ロイヤリティが向上した顧客は、製品やサービス、またそれを提供している企業にプラスの感情を持ち、好意的な口コミをします。SNSなどを通じて口コミが広がれば、広告費用をかけずに購買意欲の高い優良な新規顧客を獲得することができます。
カスタマーマーケティングの施策
カスタマーマーケティングは、オンライン・オフライン問わず、さまざまなシーンで実施されます。代表的なカスタマーマーケティングの施策は、下記の4つがあります。
オンボーディング
顧客に製品やサービスの機能や活用方法を理解してもらい、使いこなせるように導いて、定着を促すのがオンボーディングです。製品やサービス開始時にありがちな「使い方がよくわからない」「一部の機能しか使えない」といった不満を解消する施策を実施し、早期解約を未然に防ぎます。
<オンボーディング施策例>
- セミナー開催
- FAQページの作成、充実
- チュートリアルの作成
- 導入支援、ミーティング
リテンションマーケティング
リテンションマーケティングは、顧客に対して製品やサービスへの興味を継続させ、顧客を維持(リテンション)するための施策です。顧客に製品やサービスのことを忘れられないための継続的なアプローチや、顧客行動の分析に基づいた製品やサービス、マーケティングの改善を行います。
<リテンションマーケティング施策例>
- パーソナライズされたリコメンドによる継続利用の案内
- アプリのプッシュ通知による継続利用の案内
- キャンペーン情報の配信
- 顧客行動の分析に基づいた、製品やサービス、マーケティングの改善
コミュニティマーケティング
カスタマーマーケティングの中でも、特に顧客のファン化を期待できるのがコミュニティマーケティングです。顧客同士が交流するコミュニティを運営することによって、顧客のファン化を図り、コアなファンを育成します。オンラインコミュニティを中心に、オフラインイベントを連動させるとより効果的です。
<コミュニティマーケティング施策例>
- コミュニティの開設、管理、運営
- 商品の共同企画
- 試作品のモニター
- オフラインイベントの企画、実行
利用促進
顧客に対する製品やサービスの利用促進も、カスタマーマーケティングの代表的な方法のひとつです。購入や利用に特典をつけたり、成功イメージを共有したりすることによって、顧客の利用を促進します。
<利用促進施策例>
- クーポンの発行
- 特別なキャンペーンの実施
- SNSなどを通じた成功事例や活用事例の共有
MAでスムーズなカスタマーマーケティングを
カスタマーマーケティングの実施には、膨大な顧客情報を的確に管理し、個別最適化されたコミュニケーションの実現をサポートしてくれるシステムの活用が欠かせません。
そこでおすすめなのが、複雑なマーケティングを可視化し、自動化するMA(マーケティングオートメーション)です。
MAを活用すると、下記のようなカスタマーマーケティングを実行できます。
<MAを活用したカスタマーマーケティングの例>
- webサイト上のヘルプページやコミュニティページの閲覧状況をトラッキングし、アクティブ率を測定する
- オンボーディング施策としてステップメールを配信する
- セグメントごとにニュースレターを配信する
- セミナーやオンラインコミュニティなどの集客、登録、参加者管理
- 解約阻止につながる予兆アラートの配信
Marketo Engageを活用したカスタマーマーケティング事例
アドビが提供するMAのMarketo Engageは、充実した機能とサポート体制で、カスタマーマーケティングの成功に貢献します。
Marketo Engageを活用したカスタマーマーケティングの事例を見てみましょう。
HENNGE(へんげ):顧客アンケートの回答率向上などカスタマーサクセスが進化
ID管理ソリューションのSaaS認証基盤「HENNGE One」の提供をはじめ、テクノロジーの力で顧客企業の安心・安全をサポートするHENNGE(へんげ)株式会社。
BtoBで規模の大きい顧客が多く、SaaSの中でもACV(年間契約金額)が比較的高価格帯である同社のカスタマーサクセスは、ハイタッチへのアプローチが主流。近年は、限られたリソースでハイタッチのリードを獲得するため、ロータッチやテックタッチへのアプローチの効率化を模索しています。そのソリューションとして挙がったのが、マーケティング部門で積極的に活用してきたMarketo Engageでした。
Marketo Engage導入後に得られた効果は、下記の4つがあります。
・顧客アンケートの回答率が向上
CRM上のオンボーディング完了へのステータス変更をトリガーに、Welcome DMを郵送。その後、Marketo Engageでオンボーディングに関するアンケートを自動配信し、アンケート未回答の顧客にはさらにリマインドメールを自動配信しました。Marketo Engageを導入し、最適なタイミングでアンケートやリマインドメールを配信することで、アンケートの回答率が向上しました。その結果、能動的な行動をしていない顧客であっても状態を可視化できる割合が増えました。
・顧客へのメールの開封率が向上
Marketo Engageのメールテンプレートを活用したリッチなHTMLが顧客の注目を集め、契約更新に対するお礼メールの開封率が30~40%から50~60%に向上。Marketo Engageのテンプレートを活用したことで、簡単にHTMLメールが作成でき、作業時間も短縮されました。 お礼メールには、顧客の利用状況を知るための「診断ツール」を付加しているため、Marketo Engageの導入は顧客状況の把握にも貢献しています。
・顧客とのコミュニケーションが効率化
Marketo Engage導入後、顧客とのコミュニケーションの効率化に成功し、浮いた時間をほかの業務に活用できるようになりました。具体的には、新機能実装を知らせるメールが未開封の場合や、オンボーディング完了の120日後に状況を確認したい場合、Marketo Engageでメールを自動配信するといった方法で、コミュニケーションを効率化しています。
・ハイタッチへのアプローチの効果が向上
Marketo Engageでロータッチ、テックタッチへのアプローチを継続することで、顧客との距離を縮めることに成功。その結果、ハイタッチへのアプローチの効果も向上しています。
HENNGEの事例については、下記の記事で詳しく説明しています。
弥生:顧客数が増加し顧客ロイヤリティも向上
会計ソフトなどの業務ソフトや関連製品の開発・販売・サポートを行う弥生株式会社。
マーケティングとプロモーションを、「新規顧客開拓」と「既存顧客との関係強化」に大別し、Marketo Engageは後者のうち、「導入後から利用定着、アップセル」の領域に活用しています。
同社の製品のうち、「やよいの青色申告 オンライン」は有償のプランが初年度無料。「やよいの白色申告 オンライン」は、すべての機能が永年無料。目指しているのは、白色申告よりも節税効果の高い青色申告に挑戦し、「やよいの青色申告 オンライン」にアップグレードをしてもらうことです。
契約継続を最終目標とし、そのために顧客が、弥生製品で業務をスムーズに遂行できる状態を目指すことにしました。
Marketo Engage活用施策のKPIは、弥生製品を使って確定申告書類を作成した顧客の数と、「やよいの青色申告 オンライン」へのアップグレード数に設定。Marketo Engageを活用し、下記の3つの施策を実施しました。
・導入支援メールの配信
Marketo Engageで、導入支援メールを自動配信。導入初期に行うべきことをまとめ、契約後の日数をトリガーとしてステップメールを配信しました。
・確定申告支援メールの配信
確定申告の時期に合わせて、つまずきやすいポイントをまとめた確定申告支援メールを配信。Marketo Engageを活用し、顧客が利用している機能に応じて個別最適化したメールを配信しました。
・青色申告のメリットの案内
「やよいの白色申告 オンライン」で確定申告書類を作成した顧客の情報をMarketo Engageに連携し、青色申告のメリットを案内するメールを配信。メール配信後に、アップグレードの確度に合わせて、DMや電話など、複数チャネルを組み合わせてアプローチしました。
約4年をかけて上記3つの施策を実行した結果、弥生製品を使って確定申告書類を作成した顧客の数は4年前の2.7倍、「やよいの青色申告 オンライン」へのアップグレード数は2.3倍と、KPIを達成することができました。
また、顧客へのアンケートやSNSで、弥生の製品や確定申告応援メールへの好意的な反応が見られるなど、Marketo Engageを活用した施策は、顧客ロイヤリティの向上にも貢献しました。
弥生の事例については、下記の記事で詳しく説明しています。
マルケトブログクラウド会計ソフト利用者シェアNo.1の弥生が語る、ロイヤリティを高める既存顧客向けマーケティング
MAを活用してカスタマーマーケティングに取り組もう
カスタマーマーケティングは、LTVの向上には欠かせません。カスタマーマーケティングを成功させるためには、顧客の属性や行動からニーズを読み取り、きめ細やかな対応を行う必要があります。
しかし、きめ細やかな対応を手作業で行うと、すべての顧客に最適なタイミングでアプローチすることが難しい上に、人的リソースの確保も困難です。MAを活用し、最適なタイミングで顧客にアプローチすることで、効率的にカスタマーマーケティングに取り組みましょう。
Marketo Engage は、一人ひとりの属性や行動に応じた顧客体験を提供し、効率的にLTVを最大化することができます。興味のある方は、下記から無料でダウンロードできるeBookをご参照ください。
LTVを最大化するマーケティング
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