データドリブン型マーケティング戦略の実例解説

An example of data-driven marketing with an Adobe Orchestration customer journey map

今日のマーケティングは、より競争力を高めるために、データドリブン型である必要があります。堅牢なデータにもとづく戦略は、より的確なインサイト、迅速な意思決定、効果的なマーケティング施策の実現に役立ちます。

多くの企業は、膨大なデータを有しています。Statistaは、2025年末までに世界で生成、保存、消費されるデータ量は、約181ゼタバイトになると予測しています。ちなみに、1ゼタバイトは、300億件の4K映画を保存するのに十分なデータ量です。

膨大なデータを収集して活用することは、複雑に思えるかもしれません。しかし、データドリブン型マーケティングは誰もが実践できます。本記事では、データドリブン型マーケティング戦略の5つの例を挙げ、その取り組み方と効果について解説します。

データドリブン型マーケティングとは?

データドリブン型マーケティングとは、データを利用して、優れたマーケティングコミュニケーションを実施する手法です。 従来のマーケティング手法では、試行錯誤しながらターゲットオーディエンスを把握していました。一方、データドリブン型マーケティングでは、具体的な情報をもとに、マーケティング戦略のあらゆる面を的確に最適化できます。

過去数年間にわたるデジタル変革により、データドリブン型マーケティングの推進は、かつてないほど容易になっています。また、データドリブン型マーケティングに対するニーズも高まり、実現可能性と期待の好循環が生まれています。多くの企業は、データを利用してCXM(顧客体験管理)を強化しています。それに伴い、顧客もまた、詳細にパーソナライズされた、インタラクティブなエンゲージメントを期待するようになっています。それを可能にするのが、データドリブン型マーケティングです。

データドリブン型マーケティング戦略の5つの例

顧客データと企業データを活用する方法は、数多くあります。ここでは、5つの活用方法を紹介します。

Omnichannel marketing

1.チャネル全体でデータを共有

今日の顧客は、ひとつのチャネルだけで企業とやり取りすることはほとんどありません。そのため、チャネルごとにデータが分断している状況は、オムニチャネルマーケティング戦略を展開している、または導入しようとしているあらゆる企業にとって、大きな課題となります。マーケティングの意思決定をより的確におこなうためには、さまざまなチャネルのトレンドとインサイトを共有する必要があります。

これにより、統合された顧客プロファイルを構築できます。例えば、ランディングページにおける顧客行動に関するデータを、ソーシャルメディア施策で活用できるようにする必要があります。その逆も然りです。顧客がソーシャルメディアで商品を閲覧した場合、その顧客がwebサイトにアクセスした際に、同じ商品を容易に見つけることができるようにします。チャネル全体でデータを共有できるようにすることで、見込み客がチャネルをまたいで移動しても、シームレスにやり取りできるようになります。

また、データを共有することで、ある顧客接点で成功した戦略を、他の接点に適用することができます。特定のCTAが電子メールで効果を発揮した場合は、webサイトやソーシャルメディアのコンテンツでもそのCTAを取り入れてみましょう。有料広告で使用している特定のキーワードが、クリック数やコンバージョンの向上に貢献している場合は、そのデータをソーシャルメディア部門と共有し、同じオーディエンスを対象としたコンテンツを作成できるようにします。

2.デモグラフィック情報にもとづいた施策の策定

データドリブン型マーケティングのもうひとつの例は、デモグラフィック情報をもとに施策を策定することです。デモグラフィック情報には、次のようなものがあります。


詳細な顧客プロファイルを構築するためには、リードと顧客に関する膨大なデモグラフィック情報を収集する必要があります。ソーシャルメディアのアカウントやフォームなどから入手したそれらの情報は、ペルソナを最適化し、ターゲットを絞ったマーケティング施策を策定するのに役立ちます。


一般公開されているオーディエンスデータも有用です。米国国勢調査局およびその調査(米国コミュニティ調査人口動態調査など)といった情報源を通じて、膨大なデモグラフィック情報を取得できます。


今後のマーケティング施策に役立つデモグラフィック情報を収集しましょう。例えば、高級家具メーカーが、地域全体でプロモーションをおこなっているにもかかわらず、リードを獲得できていないとします。その場合、デモグラフィック情報を利用すれば、所得水準の高い地域を特定できます。それらの地域にターゲットを絞り、より多くのリソースを投入することで、パフォーマンスが向上する可能性があります。

3.カスタマージャーニーのパーソナライゼーション

顧客体験のパーソナライゼーションは、もはやオプションではなく、必須になっています。McKinseyによると、消費者の71%が、企業に対してパーソナライズされたやり取りを期待していると回答しています。また、それを実現できない企業に対して不満を持つと回答した消費者は、76%にのぼります。さらに、成長を遂げている企業では、パーソナライゼーションによって売上が40%以上増加しています。

Customer journey personalization stats


顧客データは、コンテンツとコミュニケーションをパーソナライズする唯一の方法です。顧客の名前を電子メールに記載するだけでは不十分です。データを活用すれば、顧客をより詳細に把握し、独自の優れたパーソナライゼーションを実現できます。

顧客データを使用してマーケティング施策をパーソナライズする方法は、無数にあります。顧客データを使いこなせるようになると、パーソナライゼーションを通じてクリエイティビティをさらに発揮できるようになります。ここでは、その出発点となる主な戦略をいくつか紹介します。

https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/getting-started-with-personalization-at-scale

4.予測分析を利用したターゲティングの強化

予測分析では、マシンラーニング(機械学習)と高度な統計モデリングを利用して顧客データを分析し、パターンを特定して今後の行動を予測します。多くの企業は、手作業での処理では間に合わないほどの膨大な顧客データを収集しています。予測分析は、データアナリストがそれらの大規模なデータセットを活用できるようにします。

予測分析の主な目的は、次のふたつです。

予測分析とAI(人工知能)は混同されがちですが、両者には明確な違いがあります。AIは、ツールです。一方、予測分析は、AIの能力を利用するプロセスを指します。例えば、予測分析を利用することで、顧客の行動データを分析し、適切なコンテンツを的確な顧客にタイミングよく提供できるようになります。

5.データオンボーディングによるオーディエンスの詳細な把握

データオンボーディングとは、オフラインの顧客データをオンラインチャネルに移行するプロセスです。オフラインデータには、顧客の連絡先情報や実店舗での購入履歴など、顧客に関連するあらゆる情報が含まれます。それらのデータをオンライン環境に移行し、マーケティング施策に活用できるようにします。

PII(個人を特定できる情報)は匿名化する必要があるため、データオンボーディングには時間と労力を要します。しかしこれは、社内のさまざまな部門が貴重な情報をすぐに利用できるようにするための重要なプロセスです。

オフラインの顧客データをオンボーディングすることで、オフラインチャネルでの顧客の行動に関するインサイトを取得できます。これにより、まったく新しいデータセットを活用して、自社に高い関心を示す顧客に広告を配信することができます。例えば、ターゲットを絞った広告の関連性を高め、パーソナライゼーションを強化するのに役立ちます。

データドリブン型マーケティングの事例:Philips

ここでは、データドリブン型マーケティングの実例として、ヘルステック企業であるPhilipsがデータドリブン型マーケティングをどのように導入し、複雑なデジタルマーケティングニーズに対応しているのかを紹介します。

同社は、商品とブランドの認知度を高めるために、動的なコンテンツの制作、配信、ローカライズの方法を標準化する必要がありました。最大の課題は、同社がデジタルプレゼンスを確立している79の市場と38の言語における、膨大な量のwebページとトラフィックに対応しなければならないことでした。

そこで同社は、堅牢なデータ管理基盤、データ分析ソフトウェア、AIを活用し、グローバルサイト全体でモジュール型のコンテンツを検証、測定、展開できるようにしました。さらに、データドリブン型マーケティングツールとPIM(商品情報管理)システムを統合しました。AIを利用した分析により、同社は顧客がコンテンツにどのように反応するのかを継続的に検証できるようになりました。それらのリアルタイムデータは、適切なメッセージをタイミングよく顧客に届け、コンバージョンを最適化するのに役立ちます。

例えば、同社はスライドインCTAを導入したことで、ニュースレターの登録数が635%増加しました。さらに、動画の自動再生機能を排除したことで、商品ページの閲覧数が15.85%向上しました。このように、コンテンツマーケティングに関する同社の意思決定は、具体的なデータに裏付けられています。

Philips data-driven marketing stat

データドリブン型マーケティングの利点

データドリブン型マーケティングは、企業にさまざまなメリットをもたらします。データにもとづく意思決定に裏打ちされたマーケティング戦略を取り入れることで、次のことが可能になります。


これらのメリットは、最終的な売上の増加に貢献します。ますます多くの企業が、マーケティングにおいてより的確な意思決定をおこなうために、データを重視するようになっています。近い将来、独自のデータを収集して活用することは、当たり前のことになるでしょう。

データドリブン型マーケティングを始めましょう

データドリブン型マーケティングを導入すれば、マーケティング施策の効果を確実に高めることができます。まずはチームを編成し、自社データの中から、マーケティングに必要なデータを把握しましょう。ここで重要な点は、データドリブン型マーケティングは目標を達成するための手段にすぎないということです。目標から逆算して施策を策定し、必要に応じてデータを組み込みましょう。

Adobe Analyticsは、単なるweb分析ソフトウェアではありません。カスタマージャーニーのどの段階においても、単一の基盤で複数のチャネルからデータを収集、分析し、そこから得たインサイトを活用できます。また、Adobe SenseiのAI能力を利用して、適切なデータ範囲を予測分析できます。

Adobe Analyticsが定型レポートだけでなく、実践的なインサイトをどのように提供するのか、アドビの担当者までお気軽にお問い合わせください。また、動画も併せてご覧ください。

その他のリソース

データドリブン型マーケティングの詳細については、次のリソースをご覧ください。