評価の高いCDP製品の特徴とその選択方法
B2CかB2Bかを問わず、ほぼあらゆる業界において顧客のデジタル化が加速しています。企業がさらなる成長を遂げるためには、各業界のデジタルトレンドを把握し、デジタルファーストな顧客体験を実現する必要があります。顧客一人ひとりに合わせてパーソナライズされたデジタル体験を大規模に提供するためには、膨大な顧客データを収集しなければなりません。
さまざまな情報源から得られる顧客データの多くは、整理されていません。あらゆる顧客データを適切に管理および活用できるかどうかが、今後のビジネスの勝敗を分ける重要な要素のひとつとなります。
そこで、CDP(顧客データプラットフォーム)の出番です。
CDPは的確な意思決定に欠かせないツールです。しかし、市場には多くのCDP製品があり、自社に最適なCDP製品を見つけ出すことは容易ではありません。本記事では、企業のビジネスニーズやオーディエンスに合わせて、最適なCDP製品を選ぶための方法を解説します。
CDPとは?
CDP(顧客データプラットフォーム)とは、一人ひとりの顧客から直接収集したデータをつなぎ合わせて、統合された顧客プロファイルを構築するためのソリューションです。 さまざまな情報源から得られるこれらの1stパーティデータは、オーディエンスの傾向と行動パターンを包括的に把握するのに役立ちます。1stパーティデータを統合することで、詳細にターゲットを絞ったマーケティング施策を実施できるようになります。
今日、あらゆる業界で優れたCDPの重要性は高まり続けています。例えば、GoogleがChromeブラウザにおける3rdパーティクッキーの廃止を発表したとき、マーケターは、顧客データの収集が今後さらに困難になると考えました。CDPは、クッキーレス時代のデータ戦略を支える救世主のような存在です。
CDPなら、実店舗から電子メール、webフォームに至るまで、さまざまな情報源から1stパーティデータを収集して整理することができます。これらのデータをつなぎ合わせて単一の顧客プロファイルを構築すれば、あらゆるチャネルやシステムをまたいで活用できます。例えば、実店舗で収集したデータをもとにソーシャルメディアマーケティングに関する意思決定をおこなう、コマースプラットフォームで得たデータをカスタマーサポートチームと共有する、といった具合です。
CDPの能力は、それだけではありません。AI(人工知能)とマシンラーニング(機械学習)を備えた高度なCDPは、顧客の行動を予測して、次に取るべき施策を提案してくれます。CDPから得たインサイトをもとに、顧客にどのような電子メールを送信して、商品をレコメンドし、マーケティング施策を実施するべきかを的確に判断することができます。
CDPにはいくつか種類がありますが、その能力が重複しているため、明確に分類することは容易ではありません。一般的に、次の4種類に分けられます。それぞれの相違点を詳しく見ていきましょう。
- マーケティングクラウドCDP:大規模なベンダーが提供しているCDPです。主なセールスポイントは、他社製品と統合できることです。既存のマーテク製品をそのままCDPと統合できるので、ベンダーを変更する必要はありません。
- スマートハブCDP:すぐに利用できる操作しやすいCDPです。「スマート」という名前のとおり、高度な分析と予測機能を搭載しており、顧客の行動にリアルタイムで対応できます。
- マーケティングデータ統合CDP:分析や予測よりもデータ管理に重点を置いたCDPです。セグメンテーションを実行することはできますが、意思決定をサポートする機能は限られています。
- エンジンおよびツールキットCDP:独自のニーズに対応できるCDPを求めている企業に最適です。ただし、このタイプのCDPは仕組みが複雑で高額なため、CDPをカスタマイズしたい場合や高度な技術が必要な場合を除いて、他のCDPを選ぶことをおすすめします。
数百ものCDPベンダーの中から自社に最適なものを見つけ出すのは至難の業です。その中から、評価の高い13製品に絞って、特徴を解説します。
市場をリードする13種類のCDPの特徴
1.Adobe Real-Time Customer Data Platform
Adobe Real-Time CDPは、B2BとB2Cを問わず、さまざまなチャネルからデータを収集して整理し、統合された顧客プロファイルを構築できるクラウドベースのソリューションです。新しいデータを収集するたびに顧客プロファイルがリアルタイムで更新されるので、マーケターは顧客との最新のやり取りをもとにパーソナライズされた体験を創出することができます。
Adobe Real-Time CDPの強みは、リアルタイム機能にあります。顧客が行動を起こすたびに顧客データが自動で更新されるので、顧客の属性と行動を迅速かつ包括的に把握することができます。
2.Treasure Data CDP
Treasure Data CDPは、データプライバシーに重点を置いて設計されたエンタープライズ向けCDPです。主な利点は、膨大なデータを処理できることです。毎秒数百万行ものデータを伝送することができるので、大量のデータを処理する必要がある企業に適しています。標準搭載のコネクタを利用すれば、顧客データの統合に要する時間を短縮できます。
一方で、一部のワークフローに関するドキュメントが提供されておらず、実装方法がわかりにくい、という意見もあります。
3.Bloomreach Engagement
Bloomreach Engagementは、幅広いマーケティングツールを単一基盤で利用できるCDPです。柔軟性に優れた直観的な設計で、ビジネスニーズにもとづく精緻なマーケティング施策を容易に構築することができます。
単純なタスクの設定と実行は容易ですが、より複雑なプロセスの場合は、開発者やBloomreachのサポートチームに設定を依頼する必要があります。本記事で紹介する他のCDPに比べて、Bloomreach Engagementは使いこなすまでに多くの時間と労力を要します。
4.Twilio Segment CDP
Twilio Segment CDPは、設定が容易で利用しやすく、データの収集、整理、統合といった基本的なCDP機能を備えています。大きな利点は、幅広い統合オプションとChrome向け拡張機能です。他社製品と容易に統合できるので、開発者などの人的リソースが限られている企業に適しています。
しかし、Twilio Segment CDPの料金体系は高く設定されているので、あらゆる機能を利用しようとすると費用が高額になります。そのため、小規模企業、スタートアップ企業、新興企業には適していません。また、問い合わせに対する返事が遅いなど、カスタマーサポートの対応に不満を持つ顧客企業もいます。
5.Blueshift SmartHub CDP
Blueshift SmartHub CDPは、豊富な顧客体験管理ツールを備えた使いやすいソリューションです。App Hubを利用してさまざまなサードパーティ製アプリと統合できるほか、より複雑なタスクにも対応できる柔軟性も兼ね備えています。カスタマーサポートの対応も迅速で、多くの場合当日中に問題を解決できます。
その一方で、ソリューション自体のスピードの遅さが欠点となっています。多くの顧客企業が、データのエクスポートに時間がかかることを指摘しています。
6.Tealium AudienceStream CDP
Tealium AudienceStream CDPは、顧客体験のパーソナライゼーションに役立つ機能を備えた包括的なソリューションです。直観的なユーザーインターフェイスで、操作が容易です。
しかし、他のCDP製品に比べて習得が難しく、使いこなすには技術的な知識と経験が必要となります。Tealiumでは、CDPの技術的な知識がない利用者向けのトレーニングセッションとサポートを提供しています。
7.Insider CDP
Insider CDPは、大規模企業のマーケターから高い評価を得ています。大きな利点のひとつは、アプリ内通知やプッシュ通知といったモバイルデバイス向け機能です。
しかし、ツールや機能が多岐にわたっているため、Insider CDPを初めて利用する場合は使いこなすことが難しいかもしれません。もうひとつの欠点は、高額な利用料金です。一部の利用者は、同社の料金プランは高額でオプションも限られていると指摘しています。
8.Listrak CDP
Listrak CDPは、小売企業に適したCDPです。シンプルで使いやすいので、複雑なデータ分析が不要な小規模企業および中規模企業に適しています。Listrak CDPは、電子メールマーケティングとSMSマーケティングを包括的にサポートするワンストップショップを目指しています。電子メール配信リストの拡大を促進する機能であるGrowth Xcelerator Platform(GXP)は、多くの顧客企業から高い評価を得ています。
Listrak CDPでは、SMSと電子メールをひとつの基盤で管理できますが、SMSに特化した機能は搭載されていません。SMSセグメンテーション機能に改善の余地があるほか、電子メール施策とSMS施策から得たデータのフォーマットが必ずしも一致していないという欠点があります。さらに憂慮すべきことは、ユーザーインターフェイスのアップデートが長期にわたって実施されておらず、陳腐化によって操作しづらいものになっていることです。
9.Optimizely Data Platform
Optimizely Data Platform(旧称Zaius)は、B2Cの電子メールマーケティングとセグメンテーションに適した包括的なCDPです。セグメンテーションとキャンペーンの設定操作はシンプルでわかりやすく、カスタマーサポートも優れているという評価を得ています。
しかし、電子メール機能は充実しているものの、SMS向けサービスは他社に後れを取っています。顧客企業は、SMS分析は簡易的なものにとどまり、SMS配信のスケジュール管理機能も一貫性がないことを指摘しています。
10. Salesforce Marketing Cloud CDP
Salesforceはマーテク分野の主要企業のひとつであり、同社のMarketing Cloud CDPは、CRMをはじめとした同社の他製品と統合できます。Marketing Cloud CDPはデータの収集と自動化に重点を置いており、Marketing Cloud Personalizationと連携させることでマーケティングのパーソナライゼーションを強化できます。
他のCDP製品とは異なり、Marketing Cloud CDPは幅広い機能を備えた包括的なソリューションではありません。また、同社の各種ツールは高額なので、大規模企業に適しています。
11.Lytics CDP
Lytics CDPはシンプルで使いやすいソリューションであり、顧客の行動と意図にもとづいたパーソナライゼーションに主眼を置いています。セグメントビルダー機能を利用すれば、自社のマーケティング施策に合わせてオーディエンスをカスタマイズできます。特に高い評価を得ている機能のひとつは、AIを活用したオーディエンスの構築とセグメンテーションです。
Lytics CDPを他製品と統合する場合、開発者の協力が必要となることがあります。また、カスタマーサポートに問い合わせた場合、返信に最大1週間かかることがあるため、多くの場合、自力で問題を解決することが求められます。
12.SAP CDP
長年、ビジネス向けソフトウェアを開発してきたSAPは、強力なデータ分析能力を主軸とするCDPを提供しています。
同社では、あらゆるチャネルをまたいでパーソナライズされたマーケティングコンテンツを提供するために、CDPとEmarsysソフトウェアの連携を推奨しています。他のCDP製品とは異なり、SAP CDPは統合型のソリューションではありません。そのため、既存のSAP基盤を有している企業に適しています。SAP CDPは、顧客の全体像を詳細に把握するのに役立ちますが、使いこなすにはトレーニングが必要となるため、CDPを初めて導入する場合は難易度が高いかもしれません。
13.Optimove CDP
Optimove CDPは、小売企業とゲーム企業向けのCDP製品であり、データ、分析、エンゲージメントをはじめとした包括的な機能を備えています。セグメンテーション、キャンペーン構築、カスタマージャーニーツールが特に優れており、直観的で使いやすい設計になっています。
リアルタイムのデータ管理機能も搭載されていると謳われていますが、顧客企業はその機能がないと、指摘しています。
自社のニーズに最適なCDP製品を選ぶ方法
これまで紹介してきたCDP製品の中から、自社にとって最適なものを選ぶことは容易ではありません。続いて、優れたCDP製品に求められる主な能力の一部を紹介します。CDP製品を選定する際に、考慮しましょう。
- リアルタイムデータ:優れたCDP製品は、顧客のプロファイルとセグメントをリアルタイムで更新し、全社にわたって常に最新のデータを提供します。競争の激しい今日のビジネス環境で勝ち抜くためには、数日の遅れも許されません。
- 行動トリガー:優れたCDP製品なら、行動トリガーを利用して顧客の行動を把握し、統合された顧客プロファイルを構築できます。
- 分析/予測/インサイト:優れたCDP製品を活用すれば、データを詳細に分析して、ターゲットオーディエンスのエンゲージメントを促進するための実践的なインサイトを獲得できます。
- データプライバシーとガバナンス:導入を検討しているCDP製品が、データ保護とプライバシーに関する要件を遵守していることを確認しましょう。
- 統合:事前に構築されたコネクタを利用して、CDP を任意のチャネルで既に使用しているアプリケーションと統合できる必要があります。
Adobe Real-Time CDPは、これらの能力だけでなく、ビジネスの成功に必要なあらゆる要素を備えています。さまざまなデータをひとつにまとめて分析し、そこから得た実践的なインサイトを全社で共有することで、あらゆるチャネルをまたいで顧客とのエンゲージメントを大規模に推進できます。Adobe Real-Time CDPなら、CRM、ロイヤルティプログラム、web検索などのあらゆる顧客接点から収集したデータをつなぎ合わせて、統合された顧客プロファイルをリアルタイムで構築できます。
Adobe Real-Time CDPのセグメンテーション機能を利用すれば、重要な瞬間に適切なコンテンツで消費者を惹きつける体験を提供することができます。さらに、あらゆる顧客データはプライバシーツールで保護され、地域や組織のデータポリシーに確実に準拠できます。これらのあらゆる機能が、B2BとB2Cの両方に対応しています。単一のCDPで、B2CとB2Bの両方に対応します。
Adobe Real-Time CDPが自社のビジネスにどのように役立つのか、動画でご確認ください。