コンテンツ管理システム(CMS)とは何か?その仕組みも解説

Content management system

消費者がお気に入りのブランドや商品と接するとき、デジタル体験を好むことは周知の事実です。そして、どのような体験においても、自身の欲求やニーズに合わせてパーソナライズされていることを期待しています。ビジネスの観点からは、カスタマイズ可能なコンテンツを提供し、webサイト、アプリ、ソーシャル、IoT、その他の新興チャネルなどで更新をおこなうために、特別なリソースが必要となります。

しかし、非効率的なコンテンツワークフロー、ユーザーフレンドリーなコンテンツ作成、公開ツールの欠如、進行が遅くコストのかかる開発サイクルなどのために、マーケティング部門やIT部門は、質の高いコンテンツを迅速に制作するために多大なリソースを費やしています。

それでは、この課題はどのように解決できるのでしょうか?マーケティング部門とIT部門が、クラウドを利用して連携することがその答えです。適切なコンテンツ管理システム(CMS)は、あらゆるチャネル、デバイス、アプリをまたいで、オーディエンスが関心を寄せるデジタル体験を制作、管理、提供するのに役立ちます。マーケターは、開発者に負担をかけることなく、デジタル体験向けのコンテンツを制作することができます。小さな変更を開発者に依頼して、時間をかける必要がなくなります。

マーケティングに適したテンプレートと開発者向けのツールを同一のプラットフォームに統合することで、パーソナライズされた記憶に残るコンテンツを迅速に公開することができます。適切なテクノロジーが備わっていれば、顧客とつながる機会を逃すことはありません。

この記事では、次の内容について解説します。

CMS(コンテンツ管理システム)とは?

CMS(コンテンツ管理システム)とは、webサイトやアプリなどのデジタル資産を構築、管理できるプラットフォームのことです。CMSを利用すれば、複数の部門メンバーがコンテンツを制作、編集、公開することができます。また、コンテンツを保存するための一元化されたデータベースとしても機能します。

コンテンツ管理システムの重要な側面は、クリエイターがデジタルコンテンツにリアルタイムで変更を加えているときに、公開形式を確認できることです。この機能により、クリエイターは、webサイトやアプリを作業中にすぐにプレビューすることができます。CMSは、リソースを一元化し、ワークフローを合理化するために、企業のデジタルアセットリポジトリと直接統合する必要があります。これにより、あらゆるアセットが最新の状態に保たれ、重複や手戻りでタイムリーな運用が妨げられることがなくなります。

CMSの仕組み

CMSなしでサイトを運営している場合、大きな課題に直面している可能性があります。手作業でサイトを運営していると、たとえば、高度に技術的な静的ウェブページの編集のために何日もかかり、今日のデジタル時代には許容できない時間がかかってしまいます。パーソナライズされたコンテンツの継続的な提供に対する需要がますます高まっている中、それを促進するために構築されたシステムが必要です。

CMSによるコンテンツ公開がどのように機能するか、Adobe Experience Manager Sitesを利用した例を見てみましょう。

Adobe Experience Manager Sitesでは、従来のコンテンツ配信、ヘッドレス、ハイブリッドコンテンツ配信のいずれかを柔軟に選択できます。テンプレート駆動型のオーサリングまたは GraphQL API を使用して、コンテンツを構成、管理、配信できます。これにより、コンテンツ作成者は、開発者が大規模なパーソナライゼーションの構築に使用するのと同じクラウドネイティブなシステムの中で、新しいコンテンツを容易に検索、追加、編集、管理することが可能です。たとえば、スピーディなサイト作成機能により、テキスト、画像、ソーシャルメディア共有ブロックなどの編集可能コンポーネントをサイトページにドラッグ&ドロップで追加することができます。開発者がバックエンドで作業している間に、これらすべてをおこなうこともできます。

マーケターがコンテンツを制作したら、IT部門は「ヘッドレス」機能を活用して、複数のチャネルにコンテンツを配信することができます。コンテンツがプレゼンテーション層(ヘッド)から切り離されると、メール、モバイルアプリ、wenページ、ソーシャル投稿など、どのようなプラットフォームにも対応できるように、チャネルに依存しない形式で配信することができます。

Adobe Experience Manager Sitesでは、作成者からオーディエンスへのコンテンツの流れが、3つのシンプルなステップに単純化されています。

  1. コンテンツ作成者が、サイトコンテンツを更新します。更新に対してプレビュー、レビュー、承認が実施され、必要に応じてチャンネルをまたいで配信されます。
  2. コンテンツが公開されます。公開はオンデマンドで実行することも、特定の日付にスケジューリングすることもできます。
  3. サイト訪問者が、ライブサイトで反映された変更を見ることができます。

このプロセスの中心となるコンテンツ管理システムは、ふたつの部分で構成されています。

  1. コンテンツ管理アプリケーション(CMA)は、CMSの一部であり、サイトが公開される前にチームがコンテンツを追加したり管理したりできるようにするものです。
  2. コンテンツ配信アプリケーション(CDA)は、CMAにアップロードされたコンテンツを取り込んでバックエンドに保存し、サイト訪問者が目にする形にします。

コードやデータベースクエリなど、技術的なことはすべてCDAが処理するため、マーケターは、オーディエンスが目にする形であらゆるコンテンツを処理することができます。手作業でHTMLページにコードを埋める時代は終わりました。マーケターは、ビジュアルコンテンツエディターの助けを借りて、webサイトの外観を簡単にカスタマイズし、テキストフォントを変更し、イラストやリンクを組み込み、コンテンツの断片を簡単にドラッグ&ドロップすることができます。この直感的なアプローチにより、ブランドアイデンティティとメッセージの目標に完全に合致した、あるべき外観を容易に構築することができます。

コンテンツを共有する準備ができた後に、HTMLファイルをサーバーにアップロードする必要はありません。CDAは、CMAで制作されたコンテンツをシームレスに結合します。CDAは、基本的なコードの組み立てをおこない、制作されたコンテンツをwebサイトに表示し、訪問者に見えるようにします。「公開」ボタンをクリックするだけで、コンテンツは思い描いたとおりに表示され、手作業によるコーディングや技術的な複雑さは一切必要ありません。

CMSの利点

CMS benefits

コンテンツ管理システムの利点は、マーケターやコンテンツ作成者の枠をはるかに超え、IT部門を含むビジネス部門全体に及びます。ここでは、CMSの部門横断的な利点について解説します。

1.容易なコンテンツの制作と公開

CMSの最も大きな利点のひとつは、コンテンツの制作と公開のプロセスを簡素化する、ユーザーフレンドリーなインターフェイスです。技術的な専門知識やコーディングの知識がなくても、webサイトのコンテンツやクロスチャネル体験を管理できます。CMSを利用すれば、使い慣れた直感的なツールを使って、webブページやブログ記事などのコンテンツを簡単に制作、編集できます。これにより、web開発の技術的な側面に悩まされることなく、高品質でクリエイティブなコンテンツの開発に集中することができます。また、開発者は、コンテンツ更新のリクエストの対応が滞ることがなくなるため、より価値の高い仕事に時間を使うことができるようになります。

2.合理化されたワークフローとコラボレーション

CMSは、コンテンツをオーサリングする企業やチームにとって、ワークフロー全体を合理化する一元化されたプラットフォームになります。複数の利用者がどこからでも効率的にコラボレーションし、webサイトのさまざまなセクションで同時に作業し、コンテンツの承認プロセスを管理することができます。マーケターがコンテンツを開発している間、開発者は同時にカスタムコードを追加しているかもしれません。CMSはまた、コンテンツの作成者、編集者、管理者にそれぞれの役割と権限を与え、コンテンツの統合性を維持しながら、誰もが効果的に作業できる環境を提供します。

3.組み込みの検索エンジン最適化(SEO)ツール

今日の競争の激しいオンライン環境では、webサイトを検索エンジンに最適化することは、知名度を高め、オーガニックなトラフィックを集めるために非常に重要です。CMSには多くの場合、検索エンジン向けにコンテンツを最適化するプロセスを簡略化するSEOの機能やプラグインが組み込まれています。カスタマイズ可能なメタタグやURL、XMLサイトマップ、正規化など、webサイトのSEOパフォーマンスを向上させ、潜在的な訪問者が検索しやすくすることができます。

4.効率的なコンテンツの整理と管理

コンテンツのニーズが高まるにつれ、大量のコンテンツを管理することは困難になります。CMSは、コンテンツの整理と管理のための堅牢なツールを提供します。タグ、ラベル、メタデータなどを利用してコンテンツを分類できるため、必要なときに情報を容易に検索、フィルタリング、取得することができます。また、適切に構造化されたCMSは、コンテンツのスケジュール管理、バージョン管理、アーカイブなどの機能も備えており、コンテンツの長期的な管理と更新を効率的におこなうことができます。

5.一貫性のあるブランディングとデザイン

webサイトやほかのチャネルで一貫したブランドイメージとデザインを維持することは、認知度の高いプロフェッショナルなオンラインプレゼンスを築くために不可欠です。CMSは、ブランドガイドラインに沿って容易にカスタマイズできるテンプレート、テーマ、デザイン要素を提供します。あらかじめ定義されたレイアウトやスタイルを利用することで、webサイト全体や関連チャンネルにプッシュするコンテンツのルック&フィールの一貫性を保ち、ブランドアイデンティティを強化し、ユーザーエクスペリエンスを向上させることができます。

6.スケーラビリティと柔軟性

CMSを利用することで、技術的な費用をかけずに新しいページ、セクション、機能を追加することができます。CMSのエコシステムが提供するプラグイン、拡張機能、モジュールなどを統合することで、webサイトの機能を拡張することができ、ビジネスの拡大に合わせてオンラインプレゼンスを適応させ、拡張することができます。

代表的なCMSプラットフォーム

CMSを利用したことがあれば、おそらく各プラットフォームが特定の利用者のニーズに対応していることにお気づきでしょう。コンテンツ管理システムの中には、webサイト構築ツールとして位置付けられているものもあれば、作成、編集、公開機能も含む包括的な製品として位置付けられているものもあります。マーケティングに適したテンプレート、ドラッグ&ドロップのインターフェイス、どこからでも管理できる機能と拡張性を実現するクラウドベースのアーキテクチャのものもあります。自社に最適なプラットフォームは、ニーズや目標とするコンテンツによって異なります。

コンテンツ管理システム(CMS)を評価する際には、考慮すべき重要な要素がいくつかあります。次に、確認すべき重要な側面を示します。

世の中には多くのCMSの選択肢があります。人気のあるCMSを次に示します。

  1. Adobe Experience Manager Sites:企業の規模を問わず、大規模な企業の要件にも対応できるAdobe Experience Manager Sitesは、コンテンツの拡張、オートメーション、パーソナライゼーションを可能にします。
  2. WordPress:世界最大のオープンソースCMSであるこのオプションは、記事とブログのパブリッシング機能で有名です。
  3. Drupal:WordPressよりも高機能なオープンソースのオプションと検討されるDrupalは、ビルド済みのテーマと拡張機能を提供しています。
  4. Joomla:DrupalとWordPressの中間として挙げられることが多いJoomlaは、高度な機能を求める大企業に適しています。
  5. Squarespace:webサイトビルダーとして販売されているSquarespaceは、クリーンでユーザーフレンドリーなデザインテンプレートとドラッグ&ドロップ機能を備えていますが、オープンソースではありません。
  6. Wix:Squarespaceと同様に、Wixはweb開発の経験がない初心者にも適しています。

自社に適したCMSを活用する

パーソナライズされたコンテンツを大規模に提供することは、チームや部門の規模に関係なく負担になるものです。さらに、テクノロジーの制約によるマーケティング部門と開発者間の不十分なコラボレーションが、企業の成長を妨げることもあります。だからこそ、柔軟で俊敏なCMSでコンテンツ戦略の将来性を確実なものにすることが非常に重要です。

Adobe Experience Management Sitesのようなコンテンツ管理システムを利用すれば、どのような規模の部門やチームでも、オーディエンスにとって重要な瞬間にパーソナライズされたコンテンツを提供することができます。

Adobe Experience Management Sitesなら、次のことが可能です。

Experience manager sites

CMSを検討する際に鍵は、自社に不可欠なCMSの能力を把握することです。成長し続けためのニーズは何か、AIによる拡張性はどの程度重要か、アジャイルでクラウドネイティブなソリューションが必要か、オムニチャネルのコンテンツ配信は必要か、といったことを検討しましょう。

オーディエンスが求めているものを把握できていたとしても、それを届けることはまた別の話です。適切なCMSを導入することで、顧客一人ひとりに合わせた体験を提供できるようになります。

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