Adobe Real-Time CDPおよびAdobe Journey Optimizerの統合オーディエンス構成
お客様との会話の中で、「データウェアハウスを顧客データプラットフォーム(CDP)として使用することはできますか?」と質問されることがあります。
あらゆる企業は、既存のテクノロジー投資を再利用してコストを最小限に抑え、テクノロジーとプロセスの冗長性を排除するなど、効率性を向上させる方法を模索しています。さらに、IT部門とマーケティング部門は、ビジネス要件に対応する適切なテクノロジーソリューションを柔軟に選択したいと考えています。
この課題に対処するために、アドビはAdobe Experience Platformの新機能「連合オーディエンス構成」を発表します。この機能を活用すれば、あらゆるユースケースをまたいでデータを作成できます。Adobe Real-Time CDPおよびAdobe Journey Optimizerをご利用のお客様は、データウェアハウスパートナーのデータを活用して、価値の高い既存のオーディエンスと属性を単一のシステムで強化できます。この新機能により、マイクロセグメンテーションから、低遅延アクティベーションによる即時のパーソナライゼーションに至るまで、企業全体のユースケースに柔軟に対応できます。アドビ製品をご利用のお客様は、何のデータをいつ使用するのかを決定し、データセットや統合パターンの重複を回避できます。
新たなアプローチを導入
データ管理分野では、「コンポーザブルCDP」という概念が浸透しつつあります。CDPの導入を検討している企業は、既存のデータウェアハウスの上にアクティベーションレイヤーを配置するだけで、CDPを活用できるようになります。ただし、この戦略だけでは、リアルタイムのユースケースを実現することはできません。
コンポーザブルアーキテクチャとは、様々なコンポーネントを組み合わせて、特定のビジネスニーズに合わせて包括的なソリューションをカスタマイズするテクノロジースタックを構築するためのアプローチを指します。これは、ネイティブに連携するように設計された包括的な機能セットを提供する、パッケージ化されたシームレスなソリューションとは異なります。
一部のCDPベンダーは、CDPに通常含まれるサービスのアンバンドリングを指す用語として「コンポーザブル」を使用しています。これらのサービスには、データの取り込み、ID解決、プロファイルの作成、セグメンテーション、AIおよびマシンラーニング機能、アクティベーション用に事前構築された宛先などが含まれます。一部の「コンポーザブルCDP」製品では、既存のデータウェアハウスの上にアクティベーションレイヤーを配置するだけで、電子メールの送信などのユースケースでデータを一括出力できます。このアプローチは、一見するとアーキテクチャが簡素化され、単純なソリューションのように思えるかもしれません。しかし、詳細に検証すると、様々な制約があることがわかります。例えば、データのアクティベーションは、データウェアハウスの機能の1つにすぎません。企業が正確なデータに基づいて施策を講じることができるようにするには、適切なID解決機能とデータエンリッチメント機能も必要です。
大規模なデータウェアハウスは、組織データの長期保存向けに最適化されており、顧客エンゲージメントや顧客に関するデータが格納されていることが多いです。データウェアハウスは、ファーストパーティデータ管理に不可欠な要素です。IT部門は、ファーストパーティデータに対してSQLクエリを実行し、インサイトの獲得やオーディエンスの作成を行います。一方、データサイエンティストは、データセットを活用してモデリングやビジネスインテリジェンスを実行します。多くの場合、これらのプロセスは、ビジネスの実行および最適化に不可欠な分析ワークフローです。ただし、大規模なデータウェアハウスに格納されているデータを活用して、エンゲージメントワークフローを実行する必要がある場合、これらのシステムだけでは不十分です。重要なデータセットにアクセスする際に遅延が発生した場合、マーケティング部門が数秒または数ミリ秒単位でパーソナライズされた顧客体験を提供するのを妨げる可能性があります。
リアルタイムの対応が成功の鍵に
顧客がwebサイトやアプリにアクセスしたら、すばやくエンゲージしてパーソナライズすることで、ビジネス機会を獲得する必要があります。顧客が商品やサービスを購入した場合、広告およびマーケティング費用を削減するために、有料メディアからその顧客を除外するか、再選定する必要があります。顧客がコールセンターに苦情を申し立てた場合、担当者は、顧客とのやり取りに関する最新情報を把握し、長期的な関係の維持に努める必要があります。例えば、顧客の状況に応じて、マーケティング施策の頻度を下げたり停止したりするタイミングを見極めることが重要です。これらはすべて、重要な瞬間に顧客データを施策につなげることができる、低遅延のシステムを必要とするエンゲージメントワークフローの例です。データウェアハウスのオーディエンスの選定が遅れると、適切な顧客体験を提供する機会を逃す可能性があります。
CDP Instituteは、CDPを「他のシステムからアクセス可能な、永続的かつ統合された顧客データベースを作成するパッケージソフトウェア」と定義しています。永続的かつ統合された顧客データベースを備えていない場合、「コンポーザブルCDP」ソリューションはCDPとして認められません。コンポーザブルCDPを通じてCDP機能を提供するためには、データウェアハウスと組み合わせる必要があります。このアプローチは、信頼できる唯一の情報源としてデータウェアハウスに簡単にアクセスできる、複数のシステムにデータをコピーする必要がない、所有コストが低い、といった利点が挙げられます。一方、このアプローチの欠点は明確に示されないことが多く、実際に導入するまで気がつかないことが多いです。
- データウェアハウスをCDPプロファイルストアとして再利用しようとすると、データ処理と出力の遅延により、パーソナライゼーションに対するマーケターや顧客の期待に応えることが困難になる可能性があります。
- データウェアハウス以外のアプリケーションに対して、データをコピーする必要があります。一部のベンダーは「データのコピー不要」を推奨していますが、現実には、データウェアハウスだけではあらゆるユースケースに対応できません。特に、エンゲージメントにリアルタイムで対応することが困難になります。これを実現するには、多くの場合、データウェアハウスからアプリケーションにデータを複製し、必要なユースケースを実行する必要があります。このように、データのコピーは依然として行われています。
- 総所有コストには、「コンポーザブルCDP」アプローチに関連するすべてのコストを含める必要があります。具体的には、増分データソース(従来はパッケージ化されたCDPで一定期間保持されていた、イベントレベルのデータなど)の長期保存に伴うデータウェアハウス料金と、顧客エンゲージメントのユースケースのために、データウェアハウスから頻繁にデータを取得するコストを考慮する必要があります。総所有コストは、データウェアハウスからその他のシステムへの出力コスト(特に定期的に実行される場合)により、高額になる可能性があります。
- データウェアハウスは、データの収集、管理、分析を目的として設計されていますが、CDP機能を提供するには、追加の要件に対応する必要があります。具体的には、エンリッチメントおよびコラボレーションツール、ID解決を含むプロファイル管理機能、マーケターが使いやすいUIなどが必要です。
単純な「コンポーザブルCDP」は、既存のデータウェアハウスを活用しながら、データを宛先に出力するための低コストな方法のように思えるかもしれません。しかし、このアプローチは企業のユースケース要件に対応できない可能性があります。最終的には、データウェアハウスの価値を最大化しながら、適切にパーソナライズされたエクスペリエンスに対する顧客の期待に応えるために、遅延の回避とワークフロー要件を両立する必要があります。現在および将来のビジネス目標を慎重に検討し、意思決定を行う必要があります。将来再設計が必要になるテクノロジーへの投資は、多大なコストがかかるため、意思決定プロセスで検討する必要があります。
アプリケーションではなくデータを作成
Adobe Real-Time CDPやAdobe Journey OptimizerなどのAdobe Experience Platformアプリケーションは、オーディエンスベースかつリアルタイムのエクスペリエンスを実現するエンゲージメントワークフローをサポートするように設計されています。各アプリケーションは、それぞれの分野で実績のあるリーダーとして認められています。これらのアプリケーションを活用すれば、ユースケースの実現に必要なデータをAdobe Experience Platformのプロファイルサービスに取り込み、常に最新の実用的なプロファイルを維持できます。従来のシステムや「コンポーザブルCDP」は、オーディエンスベースのバッチアクティベーションに対応します。一方、アドビは、マーケターがアクティベーションパスに従って、One to Oneのインタラクションを開始できるように支援します。Adobe Real-Time CDPは、既存のデータウェアハウスに格納されているデータのサブセットを活用し、エンゲージメントワークフローで実行することで、データウェアハウスへの投資を強化します。ただし、データウェアハウス内のすべてのデータをコピーする必要はありません。さらに、Adobe Journey Optimizerは、同様のプロファイルとオーディエンスをネイティブに活用し、あらゆるチャネルをまたいでパーソナライズされた顧客体験を提供できます。
組織は規模を問わず、多くのチャネルからデータを取得し、様々な形式やプラットフォームで格納しています。デジタルメディアやソーシャルメディアの急増に伴い、データ量も増加しています。それらのデータが統合されていない場合、意思決定に不可欠なインサイトを獲得することはできません。CDPは、そうしたデータの分断を最小限に抑えるために開発されました。今では、データの統合だけにとどまらず、さらなる進化を遂げています。企業は、エンゲージメントのユースケースを実現するために、様々なシステムからデータにアクセスできることを求めています。データレジデンシー、冗長性、データの最小化などの動向により、一部の組織は、CDPに取り込むデータを見直すようになっています。
そこでアドビは、Adobe Experience Platformの新しい機能である連合オーディエンス構成を発表しました。大規模なデータウェアハウスを活用して、価値の高いターゲットオーディエンスにアクセスおよび作成できます。これにより、Adobe Experience Platformのリアルタイム顧客プロファイルとオーディエンスを強化および補完し、セグメント化、ターゲティング、アクティベーションを促進して、優れた顧客体験を提供できます。さらに、メタデータを介してリモートデータベースを関連付けることで、仮想データベースを作成できます。これにより、アクセスの簡素化、重複の排除、ユーザーエクスペリエンスの向上を実現できます。チームは、エンゲージメントワークフロー向けのオーディエンスを作成する際に、データセットをAdobe Experience Platformに直接取り込んだり、データウェアハウスのデータセットにアクセスしたりできます。このアプローチでは、データウェアハウスへの投資とアセットを活用し、Adobe Real-Time CDPとAdobe Journey Optimizerを強化します。連合オーディエンス構成を活用すれば、重要な新しいユースケースをまたいで、バッチ機能とリアルタイム機能を組み合わせて活用できます。
- 連合オーディエンスのセグメント化:Adobe Real-Time CDPとAdobe Journey Optimizerで、マーケターが使いやすいUIを活用して、ドラッグ&ドロップ操作でオーディエンスを作成できます。クエリをデータウェアハウスにプッシュし、重複を回避しながら、機密性の高いデータをデータウェアハウスに保持できます。また、重要なデータセットに柔軟にアクセスできます。
- オーディエンスのエンリッチメント:企業データを活用して、Adobe Real-Time CDPとAdobe Journey Optimizerで構築されたオーディエンスを強化できます。これにより、Adobe Experience Platformに保存されない、プロファイルベースおよび非プロファイルベースのデータセットを活用して、ターゲティングとパーソナライゼーションを促進できます。例えば、小売企業は、最近オンラインで商品を購入したオーディエンスに、売上の高い実店舗リストを追加して、オンラインおよび実店舗のクロスチャネルプロモーション向けのオーディエンスを作成できます。
- プロファイルのエンリッチメント:チームは、リアルタイムの顧客体験の創出に不可欠なプロファイル属性を、データウェアハウスから選択できます。これらのプロファイル属性は、Adobe Journey Optimizerを介してアクセスできる、Adobe Real-Time CDPの実用的な顧客プロファイル内に保持されます。これらのデータポイントは、顧客の行動とユースケースに応じて、イベントによってトリガーされる下流プロセスでのセグメント化とパーソナライゼーションに活用できます。これにより、連合オーディエンスの属性と、顧客プロファイルに保持されるその他の属性や行動シグナルを、リアルタイムのセグメント化とパーソナライゼーションに活用できるようになります。
Adobe Real-Time CDPおよびAdobe Journey Optimizerをご利用のお客様は、連合オーディエンス構成を活用して、何のデータをいつ使用するのかを柔軟に判断し、データセットや統合パターンの重複を回避できます。企業データを使用して価値の高いオーディエンスと属性をキュレートする連合アプローチと、リアルタイムのクロスチャネルエンゲージメント向けに最適化されたシステムを組み合わせることで、アドビ独自のソリューションを提供します。これにより、データの移動を低減するだけでなく、価値の高いオーディエンスと属性を活用し、チャネルをまたいで一貫性のあるアクティベーションを滞りなく実行できます。
ソリューションの謳い文句や利点に疑念を持つこともあるでしょう。単純な「コンポーザブルCDP」では、低遅延のユースケースやリアルタイムのパーソナライゼーションに対する、顧客やマーケターの期待に応えることはできません。企業は、アプリケーションではなくデータの作成に専念し、ユースケースに必要なデータセットをアクセス可能かつ実用的なものにする必要があります。Adobe Real-Time CDPとAdobe Journey Optimizerの連合オーディエンス構成を活用すれば、エンゲージメントユースケースを実行して顧客体験を向上させる能力を犠牲にすることなく、何のデータをどのシステムに保持するのかを自由に決定できます。