ABM戦略を効果的に実践するには?ABMの推進に有効なツールも解説
ABM(Account Based Marketing:アカウントベースドマーケティング)が、近年B2B領域のマーケティングで定着しつつあります。
この記事では、ABMのメリットやABMの手法から、ABM戦略を効果的に実践する方法や、ABMの推進に有効なツールなどについて解説します。
目次
- ABMはアカウント(企業)にアプローチするマーケティング活動
- ABMが注目される理由
- ABMが有効な4つの領域
- ABMのメリット
- ABMの戦略策定に役立つフレームワーク
- ABMを実践するためのステップ
- ABMの実践でおすすめするツール
- ABMの成功事例
- MAを活用して、ワンチームでのABMを実現しよう
ABMはアカウント(企業)にアプローチするマーケティング活動
ABMは、B2B企業におけるマーケティング戦略のひとつです。アカウント(企業)をターゲットとしてアプローチを行います。現在の主流である「リード(個人)を対象としたマーケティング活動」の対局にある概念で、自社にとって価値がある優良アカウントに対してマーケティング活動を行うのが特徴です。
自社にとって有益な顧客を選び、それぞれに合わせた戦略を立てて利益を最大化することがABMの手法ですが、これは法人営業で長く行われてきた戦略で、決して新しいものではありません。これまで大手企業や上顧客を専任で担当する「アカウント営業」が行ってきた活動を、営業部門とマーケティング部門が連携して行うものであり、顧客第一での営業活動を展開してきた日本では、むしろなじみのある考え方だといえます。
まずは、リード単位のマーケティング活動と、ABMとの違いを整理しておきましょう。
個人を対象としたリード単位のマーケティング活動
従来のリード単位のマーケティング活動は、個人を対象として行います。ターゲットが商品やサービスを購入するまでの行動、思考、感情などのプロセスを分析し、プロセスごとのタッチポイントに適切な施策を行います。
マーケティング担当者は、さまざまなオンラインチャネル、および展示会の出展やセミナーといったオフラインチャネルで認知度を高め、できるだけ多くのリードを営業部門へ送り出すことを目指します。
アカウント(企業)を対象としたABMのマーケティング活動
ABMでは、ターゲットをアカウントレベルで設定し、マーケティングおよび営業リソースを集中させて、アカウントごとに最適化したキャンペーンを展開します。リードベースのマーケティングが「認知してもらうこと」からスタートしているのに対し、ABMにおけるアカウントベースのマーケティングは、「ターゲットを特定すること」が起点になっているのが大きな違いです。
営業部門とマーケティング部門は、下記のような基準で重点顧客を設定し、企業や組織にまつわる属性情報を収集してマーケティング施策を展開していきます。
<重点顧客の設定基準例>
- 企業規模が大きく高い収益を期待できる
- 知名度があり市場インパクトが大きい
- 業界内での競合優位性が高い
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.live/jp/blog/fragments/offer-003353-why-should-use-abm
ABMが注目される理由
前述したとおり、ABMは日本ではなじみのある考え方ですが、なぜ今、注目されているのでしょうか。理由は主に、3つあると考えられます。
MA(マーケティングオートメーション)の進化
ABMが注目される理由のひとつは、優良企業の選別や、選別した企業ごとのマーケティング施策立案など、人の手では工数がかかりすぎる部分について、SFA(Sales Force Automation:営業支援システム)やCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)、MA(Marketing Automation:マーケティングオートメーション)といったマーケティングテクノロジーで補えるようになったことが挙げられます。
特に、CRMの普及に伴って、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)が重視されるようになったことは、ABMの必要性を高める大きな要因となりました。LTVとは、顧客が生涯にわたって企業にもたらす価値のことです。顧客の商品やサービスに対するロイヤリティを高め、良好な関係を維持することによって、LTVを最大化することが重要視されています。
LTVを向上させるには、自社にとって優良顧客となりうるターゲット企業を定義し、合致する企業へ積極的にアプローチしていく方法が有効であり、ABMとの親和性が高いといえるでしょう。
また、MAは見込み顧客の行動データをトラッキングし、セグメントした上で施策を立てるのに適しているため、ABMに取り組みやすい環境づくりを後押ししています。
MAについては、下記の資料で詳しく説明しています。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.live/jp/blog/fragments/offer-marketo-dg2ma
取引先との関係性の変化
ABMが注目される理由の2つ目は、取引先との関係性の変化です。
日本企業には、昔から顧客のためにひたむきに尽くす姿勢を、「顧客第一主義」として評価する風潮がありました。しかし、近年の顧客第一主義は、顧客の立場に立ってニーズに即した製品・サービスを提供するという意味で使われるようになり、取引先との関係を対等なパートナーと位置づける会社が増えてきました。
自社の売上に貢献してくれる顧客を企業側が選ぶ時代に、ABMの企業単位でマーケティング活動を行う考え方がマッチしたといえるでしょう。
事業部制の弊害
ABMが注目される理由の3つ目は、事業部制の弊害が挙げられます。
日本企業特有の組織の在り方が原因で優良顧客を逃すケースが多く、改善の機運が高まっていたことが背景にあるといえるでしょう。事業部制を採用している企業の多くは、事業部ごとにマーケティングや営業のプロセスを完結させてきました。その結果、ある事業部がアプローチに苦戦している顧客に対して、別の事業部はすでに取引をしているといった非効率的な状況が多く存在していたのです。
こうしたビジネスの機会損失を防ごうとする動きの中で、事業部ごとの連携を効率化するMA、CRM、ABMといったツールには、大きな期待が集まっています。
ABMが有効な4つの領域
ABMを実践する際には、自社で取り組むべきABMがどういった領域に該当するのかを把握した上で、戦略を考えることが重要です。
そこで、ABMはどのような事業戦略において最も効果を発揮するのか、ABMが有効な4つの領域を見ていきましょう。
新製品の提供
ABMは、新製品を提供する領域で効果を発揮します。新製品の多くは、既存製品を補完するものや代替となるものです。既存の顧客に新製品を購入してもらうことで、収益を増やす効果が期待できます。
ABMは、取引のある企業群を中心にプロモーション展開することを得意としているため、既存製品を補完・代替する新製品の販売には効果的だといえるでしょう。
既存顧客の別事業部への展開
既存顧客の別事業部への展開も、ABMの得意とする領域です。既存顧客の別事業部への展開は、すでに製品やサービスを導入している事業部で成果が上がっている場合に有効となります。
ABMでは、企業単位で顧客情報を把握しているため、複数部門を統括する部門や、他部門にも影響力を持つキーパーソンを見つけて関係を構築し、既存の事例を別事業部に展開できるよう働きかけることができます。
新規顧客への展開
現在、日本で広がっている企業データベースを活用したABMの多くは、新規顧客への展開が中心です。新規顧客への展開は、ターゲットとなる企業に近しい業界で、すでに成果を挙げている既存顧客の事例を活用します。特に、既存顧客が事業規模や先進的な取り組みなどで注目を集めている企業であれば、ターゲット企業がベンチマークしている可能性が高く、興味を持ってもらいやすいでしょう。
ABMは企業ごとに顧客情報を把握しアプローチするため、既存顧客の事例を活用可能なターゲットを選定し、マーケティング活動を実施するのにも役立ちます。
既存製品の強化
ABMは既存製品を強化し、活用度や契約更新率を高めるのにも有効です。ABMは、顧客の購入履歴や好みなどを、リード(個人)ではなくアカウント(企業)ベースで把握するため、既存製品への不満を既存製品やサービスの強化・改良に活用することができます。利用状況に応じてオプションやサービスなどのアップセルを狙うことも可能です。
このような取り組みは、販売後も顧客へのアプローチを持続し、顧客満足度を高めていく「カスタマーサクセス」としても、近年注目を集めています。一般的には、契約金額が大きい顧客をターゲットに設定することが多くなります。
ABMの戦略設計については、次の資料で詳しく説明しています。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.live/jp/blog/fragments/offer-ma-create-a-winning-abm-strategy
ABMのメリット
ABMを推進することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。続いては、ABMの主なメリットを4つ紹介します。
リソースの無駄が減りマーケティングが効率的になる
ABMのメリットのひとつとして、リソースの無駄を減らし、効率的なマーケティングができるようになることが挙げられます。
ABMを推進すると、積極的にアプローチするアカウントが明確になります。そのため、限られたリソースを特定のアカウントに集中させることができ、効率的なマーケティングを行うことができるのです。
効果的なABMを推進するとROIに表れる
効果的なABMを推進することで、ROI(Return On Investment:投資利益率)にはっきりと成果が表れることもメリットといえるでしょう。アメリカのアドバイザリーファームであるITSMAが2014年に発表した「Account Based Marketing and ROI: Building the Case for Investment」によると、ROIを測定するマーケティング担当者の80%以上が、ABMを活用したマーケティングは、ほかのマーケティング投資よりも優れていると答えています。
効果測定しやすい
効果測定がしやすいことも、ABMのメリットといえます。ABMの測定対象は、データベース内に存在する膨大な指標ではなく、限られた対象顧客です。そのため、メールや広告、web、イベントなど、あらゆるキャンペーンの効果を測定しやすく、結論も導き出しやすくなります。
マーケティング部門と営業部門の連携がスムーズになる
ABMのメリットとして、マーケティング部門と営業部門との連携がスムーズになることも挙げられます。ABMは、マーケティング部門と営業部門が連携する上で、最も効果的な方法のひとつです。
ABMを推進すると、マーケターもアカウント営業と同じ考え方で業務を行うようになります。つまり、顧客志向を基本としてターゲット化の方法を考え、顧客との交渉から収益化までを考えられるようになるということです。
ABMを推進するマーケターは、営業と同じような言葉を使うだけでなく、営業と密接に連携して対象顧客を洗い出し、営業プロセス全体を通じて顧客にアプローチします。
営業とマーケティング、それぞれの部門が協力して成果を挙げていくための取り組みについては、次のガイドが参考になります。
ABMの戦略策定に役立つフレームワーク
ABMは、その性質上、マーケティング部門と営業部門が強固に連携し、経営層も巻き込んだ事業戦略、経営戦略としてマーケティング施策を策定することで、初めて成果を挙げられます。
ABMの戦略策定に役立つ3つのフレームワークについて、簡単にご紹介します。
自社の現状を分析する3C分析
3C分析とは、事業戦略や企業全体の戦略を立てるために使われる手法です。3C分析のCとは、Customer(顧客/市場)、Competitor(競合)、Company(自社)のそれぞれの頭文字です。
下記のように、それぞれの要素を客観的に掘り下げて分析します。
・Customer(顧客/市場)
Customerの分析を行うにあたっては、まず市場規模や成長性、購買行動に影響を及ぼす価格・デザイン・品質などについて分析し、ターゲティングを明確にします。業界の悩みが自社のソリューションで解決できるか、または差別化できるかという視点で分析することが重要です。
・Competitor(競合)
Competitorの分析では、まず競合の数や競合の強み・弱み、他社の戦略・業績、参入障壁の高さ、代替品の可能性などを分析します。その上で、自社のポジショニングを把握します。
・Company(自社)
Companyの分析は、CustomerとCompetitorの分析結果をもとに行います。CustomerとCompetitorの状況を理解し、自社の戦略を立てていくことが重要です。
業界の競争状態を分析する5 forces(5フォース)分析
5 forces分析は、アメリカの経営学者であるマイケル・ポーター氏によって考案された分析方法です。「儲かるかどうかは、参入する産業・業界によって決まる」との考えにもとづくもので、業界分析や競合分析によく使われます。
5 forces分析では、次の5つを業界の競争要因としています。
<内的要因>
- 買い手の交渉力
- 売り手の交渉力
- 業界内の競争
<外的要因>
- 新規参入の脅威
- 代替品の脅威
このうち、自社の強みや弱みが何かを理解することによって、競争をコントロールして収益を上げることができます。
ターゲットを特定するSTP分析
STPは、アメリカの経営学者であるフィリップ・コトラー氏が考案した、販促のためのフレームワークです。Segmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)の3つの単語の頭文字を取ったものです。ABMを実施するにあたって、STP分析は必須のフレームワークであるといえます。
・Segmentation(セグメンテーション)
市場や顧客を、年齢、性別などの切り口で分類する。
・Targeting(ターゲティング)
セグメントした市場や顧客の中からターゲットを定める。
・Positioning(ポジショニング)
ターゲットに対して自社から出すメッセージを決め、競合との差別化を図る。
ABMを実践するためのステップ
ABMに興味を持ち、取り組みをスタートする場合には、戦略として繰り返し実行できるよう、正しいステップを踏むことが重要です。
続いては、ABMを実践するためのステップをご紹介します。
1. 事業目標を軸にABMの必要性を検討する
ABMを実行する前に、「自社にとって本当にABMは必要か」「自社とABMの相性はどうか」という観点を持って、全社的に導入を検討する必要があります。まずは、ABMの戦略を事業目標に紐づけて、新規顧客獲得数と既存顧客からの売上増加の目標を設定しましょう。
策定したABM戦略が全社的な目標に沿ったものであり、収益向上に寄与するものであると判断されれば、社内の合意を得やすくなります。
2. 顧客体験を軸に戦略を練る
営業と連携してABM戦略を計画する際には、ABX(Account Based Experience:企業に対しての一貫した顧客体験)を中心に考えることが重要です。営業とマーケティングがそれぞれ単発の施策を打つのではなく、LTVを重視して一貫性のある計画を作成しましょう。
3. プロジェクトチームを立ち上げ、社内の賛同を得る
ABMを推進するにあたっては、ABXを踏まえた一貫性のある施策を展開することが重要です。営業とマーケティングはもちろん、社内の関連部署の関係者を含めたプロジェクトチームを作ることをおすすめします。
プロジェクト内での合意にもとづいて、ビジネスゴールや収益、LTVへの貢献度合いを経営層にも説明し、賛同を得ます。
4. 営業との連携
営業に対して、ABMを実施するメリットを説明し、連携体制を構築します。優先的にアプローチするリードの定義や共通の目標、顧客エンゲージメントの指標についてもこの段階で設定しておくといいでしょう。
5. 顧客の洗い出し
下記の4つの視点を参考に、価値の高い顧客を洗い出します。ひとつの視点にこだわらず、総合的に判断することが大切です。
<価値の高い顧客の基準>
- 見込まれる取引の大きさ
- 市場での影響度
- リピーターになる可能性
- 平均以上の売上につながる可能性
また、洗い出した顧客については、自社の商材やサービスのTAM(Total Addressable Market:獲得可能な最大市場規模)がどのくらいあるのかを分析し、受注率を仮定して総収益を予測しましょう。この時点で、最初に設定した事業目標に沿った収益が見込めないようであれば、ターゲットの条件を見直さなくてはなりません。
なお、ターゲットはある程度の規模感がある大手企業であることが前提です。小規模企業に対するマーケティングにおいて、データを統合管理するABMはほとんど必要ないからです。顧客に中小企業が多い場合は、リードの数を増やすマーケティングが適している可能性があります。
6. 意思決定者やインフルエンサーの洗い出し
ターゲットとなる組織の中で、重要な役割を担う意思決定者やインフルエンサーを見つけます。営業に調査してもらうか、社外のベンダーからデータを購入して洗い出しましょう。
7. コンテンツとパーソナライズメッセージを決める
自社の製品、サービスを見直し、ターゲットの課題にどのようなソリューションを提供できるのかを考えて、コンテンツとパーソナライズメッセージを決定します。ABMにおいて効果的なのは、ターゲットが直面している明確かつ重要な課題を解決するような、価値あるコンテンツを提供することです。
8. チャネルを決める
ターゲットが属する業界や役割を踏まえて、最も高い効果を発揮するチャネルを選定しましょう。ターゲットとの接点となるチャネルには、webやメール、紙媒体などさまざまな種類があります。メールについては、オプトイン規制も視野に入れて検討します。
9. ターゲットごとにキャンペーン実施
コンテンツとメッセージの準備ができたら、ターゲットのインフルエンサーと意思決定者に向けて発信します。
このとき、マーケティングテクノロジーを活用すると、個別化されたキャンペーンを大規模に、かつ効率的に実施することができます。
例えば、Marketo Engageでは、下記のようなABM活動のサポートが可能です。
<Marketo EngageのABMサポート機能>
- webのパーソナライゼーション機能を使ってwebサイトにコンテンツを配信し、ターゲットの興味を引く
- 最重要のターゲットには特別なコンテンツを提供する
- Google、LinkedIn、Facebookのバナー広告のパーソナライズ機能を活用し、Marketo EngageのAdBridgeを用いて対象顧客専用の広告を出す
10. 効果を測定し、最適化する
ABMは、一度行って終わりではありません。より効果的なものになるよう効果を測定し、改善を加えて最適化していきましょう。
また、個々のキャンペーンの成果だけでなく、下記のような視点でもABM戦略の健全性を把握することが重要です。
<ABMの効果測定基準>
- ターゲットの組織内において、キーパーソンとなる人物との接触が増えているか
- webサイト訪問、ミーティング、販売機会などが得られているか
- 取引や収益が上がっているか
ABMの実践でおすすめするツール
ABMが注目され始めた背景としてご紹介したとおり、近年はマーケティングテクノロジーが急激に発達し、ABM戦略を実施する基盤が整いつつあります。これまで、人力で行われてきたために莫大な労力がかかっていたABMが、マーケティングテクノロジーによってスムーズに行えるようになり、成功に結びつく例が出てきたのです。
ここでは、ABMを推進する上で欠かせないマーケティングテクノロジーをいくつかご紹介します。
CRM(Customer Relationship Management)
CRMツールは、顧客情報と、顧客へのアプローチ状況を一元的に管理するツールです。既存顧客とのより良好な関係の構築に貢献し、アップセルやクロスセルをサポートします。
多くのCRMツールでは、アカウントに紐づけてリード情報を管理できるため、特定のアカウントの接点と活動状況を把握して、次に提供すべき情報を検討するのに役立ちます。
最近では、名刺管理ツールと連動し、名刺交換した相手の部署や役職の情報をCRMツールに蓄積することも一般的になっています。CRMツールを活用すると、ABMを推進するうえでつながりを強化すべき部署や役職者を確認したり、営業担当者が接触できていない担当者にも、マーケティング部門からのメッセージを送ったりすることが可能です。
CRMについては、下記の記事で詳しく説明しています。
SFA(Sales Force Automation)
SFAは、営業活動を見える化し、効率化してくれる営業支援システムです。
過去の営業活動において接触した人や成功事例、失敗事例をすぐに引き出せるので、ABMにおいてアプローチすべき対象者やアプローチのタイミング・方法などを参考にすることができます。
SFAについては、下記の記事で詳しく説明しています。
企業データベース
自社にとって最適なアカウントを抽出してアプローチするABMのすべてのプロセスにおいて、企業データベースは非常に重要な役割を果たします。
既存顧客リストを業界や企業規模などでセグメントし、自社に有益なセグメント情報を見つけられるほか、APIを用いてCRMやMAにデータを流し込み、それぞれのツール上で重点顧客か否かを判断するのにも役立ちます。
MA(Marketing Automation)
静的なデータを蓄積するCRM、SFA、企業データベースに対して、MAは静的な情報と動的な情報を掛け合わせてABMを実施し、効果測定まで担うツールです。
CRMや名刺管理ツールとの連携、webサイトのフォーム上からの見込み顧客獲得などによって蓄積した顧客データに、メールの開封やwebサイトの閲覧といった行動データを合わせることで、企業の検討度合いにもとづいて、最適なコンテンツを最善のタイミングで提供することができます。
さらに、見込み顧客を行動と属性情報でスコアリングし、ターゲット企業の中のキーパーソンの情報を営業に供給することによって、ABMを実現していきます。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.live/jp/blog/fragments/offer-marketo-dg2ma
ABMの成功事例
最後に、実際にABMに取り組み、成果を出している企業の事例を2つご紹介します。
村田製作所:メール施策で36%という高いクリック率を実現
株式会社村田製作所は、売上高1兆3,000億円、海外売上比率は9割を超えるグローバル企業です。顧客をオンライン・オフラインの両面でサポートし、顧客中心の世界を実現するため、2013年に国内企業ではいち早くMarketoを導入しました。
村田製作所の製品には、コンデンサ・インダクタ(コイル)、RFID用デバイス、回路基盤、クラウド連携ソリューションなどがあります。これらの製品は、携帯電話やコンピューター、AV機器、家電製品といったエレクトロニクスの中心分野から、自動車やヘルスケア、環境、エネルギー、IoTまで多岐にわたる領域で活用されています。そのため、膨大な製品ラインナップを適切にプロモーションしていく必要があるのです。
そこで村田製作所では、Marketoを活用して「高付加価値商品の販売促進」と「コアな顧客に対する営業支援」に注力することを決めました。そのひとつが、ABMキャンペーンです。
<ABMキャンペーンの流れ>
- A社担当のセールスが名刺交換した情報を営業支援システムに登録
- 登録した情報がMarketoに自動的に連携される
- A社が興味を持ちそうなコンテンツをwebサイトにアップロードし、URLをMarketo経由で配信
- 「ぜひダウンロードしてご覧ください」というメッセージを送る
このキャンペーンの結果、同社では36%という高いクリック率で顧客の反応を得ることができました。
村田製作所の事例については、下記の記事で詳しく説明しています。
VAIO:ファンを増やす長期的なABM戦略を展開
VAIO株式会社は、長野県安曇野市に本社を置くパソコンメーカーです。2014年にソニー株式会社を離れてから、設計から製造、品質チェック、出荷までのすべてのプロセスを、本社のある安曇野工場で行っています。
コスト削減のために海外に製造拠点を置くメーカーが増える中、シェアや価格のみでの勝負にはいずれ限界がくると考え、品質にこだわった「MADE IN JAPAN」のパソコンを作り続けてきました。長期的なスパンでコミュニケーションを継続し、「ものづくりの姿勢」に共感してくれるファンを増やすことに活路を見いだしたのです。
限られた人的リソースで多岐にわたる顧客の声を吸い上げ、効率的なコミュニケーションを行うために導入したのがAdobe Marketo Engageです。webサイトのほか、セミナーや展示会などで獲得したリードに対して、Marketoのエンゲージメントメールの仕組みを使ってリレーションを継続。ナーチャリングを実践し、顧客の関心が高まったタイミングで営業がアプローチする「マーケティング×営業」のABM戦略を展開しました。
同社では、Adobe Marketo Engageを活用したABMによって、下記のような成果が得られたとしています。
< Adobe Marketo Engageを活用したABMの成果>
- リード数やリード醸成の状況、アポイント数、訪問数など、ブラックボックスだった部分が可視化され、強化すべきチャネルや予算の配分がしやすくなった
- 結果が定量的な形で見えるので、KPIや施策の見直しがスピーディーになった
- マーケターから引き継いだリードがどのチャネルから来て、どのような行動を経て今に至るのかがクリアに見え、商談が進めやすい
- スコアリングを参考に、有望なリードに効率良くアプローチできるようになった
- 展示会やイベントで商品説明に終始していたエンジニアがリード獲得を意識するようになり、顧客に対する姿勢が変わった
VAIOの事例については、下記の記事で詳しく説明しています。
MAを活用して、ワンチームでのABMを実現しよう
ABMをB2Bマーケティングに取り入れることは、営業とマーケティングの一体的な取り組みを実現し、ROIの向上につながります。重要なのは、顧客視点で情報を発信していくことでしょう。その過程において、顧客との信頼関係を構築することは、マーケターや営業にとって大きなやりがいになるはずです。
マーケターがABMの実施や現在のABMプログラムの高度化を検討するのであれば、営業部門を含めた組織全体で戦略を共有するときに、事業戦略と連動させながら実行する必要があります。最初のステップから、営業部門、経営層、そのほかの部門のメンバーとひとつのチームとなって取り組むことで、ABMの可能性をより広げていくことができるでしょう。
他部門とのスムーズな連携をするために、活用したいのがMAです。
アドビが提供するMA製品「Adobe Marketo Engage」は、事業規模を問わず、あらゆる規模、業種の企業で幅広く採用されているマーケティングプラットフォームです。今回ご紹介したABMや、ABMにおけるMAの活用方法を知りたい方は、下記のガイドが参考になります。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.live/jp/blog/fragments/offer-003353-why-should-use-abm
次のステップ
MA分野のリーダーであるAdobe Marketo Engageについてより詳しく知りたい場合は、アドビにお問い合わせください。