オムニチャネルとは?意味や戦略、成功事例をご紹介
オムニチャネルとは、企業とユーザーの接点であるチャネルを、 ECサイトなどのwebサイトだけでなく、メールやスマホアプリといったその他のオンラインの接点、さらには店舗などのオフラインの接点も含めて様々なチャネルを連携し一貫した顧客体験を提供し、ユーザーにアプローチする販売戦略のことです。オムニチャネルは考え方こそ新しいものではありませんが、SNSの流行や、スマートフォンの普及によってますます欠かせないものになりつつあります。ここでは初心者の方でもわかりやすいよう、オムニチャネルの基本的な概念から具体事例まで、網羅的にまとめていきます。
目次
- オムニチャネルとは
- 何が違う?オムニチャネル/マルチチャネル/O2O
- なぜオムニチャネルが注目されるように?
- オムニチャネルに成功した事例3選
- オムニチャネル化を成功させる4つのステップ
- オムニチャネルのまとめ
オムニチャネルとは
オムニチャネルとは、企業とユーザーの接点となるチャネルをそれぞれ連携させ、ユーザーにアプローチする戦略のことです。
例えば、洋服を買いに行ったときに、店舗に在庫がないとします。そんな時も、ECから購入できたり、受け取りは最寄りの店舗でできたりと、ユーザーが欲しい商品を好きな時に、好きな場所で受け取れるようにする戦略がオムニチャネルです。
これによりユーザーの満足度が向上し、リピート率や売り上げ向上を狙うことができます。
何が違う?オムニチャネル/マルチチャネル/O2O
オムニチャネルと混合しやすいワードとして「マルチチャネル」と「O2O」があります。
「O2O」は「Online to Offline」の略で、英語の意味通り オンラインからオフラインの店舗に誘導することに重きを置いた考え方 です。例えば、ECサイトを使うユーザーにクーポンやお得情報を付与して、実店舗での購入拡大を目指します。
「マルチチャネル」はオムニチャネルの1歩手前の段階のイメージで、複数のチャネルを使い、ユーザーが求める情報や商品を提供する戦略 です。ECサイトはもちろん、SNSやメールマガジン、テレビCMなどを用意して、様々なチャネルからユーザーにアプローチします。ただ、それぞれのチャネルが独自に働いており、統合/連携はされていない状態です。
そして、マルチチャネルから一歩進んだのが「オムニチャネル」です。あらゆる販売チャネルが統合され、どの販路からもユーザーはスムーズに購入ができるようになる ことを指します。
例えば、商品Aを店舗に買いに行ったときに、在庫がなかったためにECで検索し、購入することはマルチチャネルの範囲内です。そこからさらに、ECで検索した商品の支払いを店舗で済ませ、受け取りは自宅で行えるようになるのがオムニチャネルです。
このように、店舗とウェブサイトで、会員情報や在庫情報、物流までもを統合して、顧客にシームレスな購買体験を提供し、結果的に統合的な顧客とのエンゲージメントを可能にするのがオムニチャネルです。
なぜオムニチャネルが注目されるように?
オムニチャネルが注目されるようになった要因として、スマホとSNSの普及があります。これにより消費者の行動が大きく変わりました。
今や私たちは、商品の検討から購入まで、すべてをスマホから済ませることができます。店舗の「ショールーミング化」が叫ばれてから久しいですが、スマホの普及によってそれはさらに加速しています。その場で最安値の店舗や、SNSで口コミを検索することが当たり前になり、様々な面から一つの商品に対して調べるようになりました。
つまり、ユーザーは店舗やECなどを単独でみるのではなく、様々なチャネルを渡り歩くようになっているのです。
こうした行動の変化を受け、企業は消費者の行動に合わせた戦略が求められるようになりました。販売チャネルを一つの絞るのではなく、複数のチャネルを用意して、ユーザーが買いたいと思ったタイミングで購入できるような仕組みを作ること、まさにオムニチャネル化が求められているのです。
また、テクノロジーの進化により、顧客の行動を従来よりも正確に計測できるようになったのも一つの要因です。あるチャネルでの購買データを他のチャネルでも活用することができれば、より最適な情報をユーザーに届けることができるようになります。
こうした「消費行動の変化」と「テクノロジーの進化」を背景に、オムニチャネルが注目されるようになってきているのです。
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オムニチャネルに成功した事例3選
ここからは、実際にオムニチャネルを導入した事例を3つ紹介していきます。
イオン幕張新都心店
イオン幕張新都心店では、いくつかのアプリやデバイスを提供し、オムニチャネル化に取り組んでいます。
その一つが「イオンお買い物アプリ」内に追加された「撮って!インフォ」です。アプリを起動して、売り場に設置されているPOPやチラシをかざすと、その商品を使ったレシピ情報を取り込むことができます。これによりユーザーは献立を考える際の参考にすることができ、実際に作りたいと思った場合も、必要な食材をその場ですぐに探して購入することができます。
また、店内に「A touch Ru*Run」というタッチタブレットを設置し、店舗では取り扱いのない商品を検索できるようにしました。端末上で見つけた商品の代金はレジで支払うこともでき、さらに配達サービスを利用して自宅で受け取ることも可能です。
無印良品のスマートフォンアプリ「MUJI passport」
良品計画の無印良品では、スマートフォンアプリ「MUJI passport」をオムニチャネル専用アプリとしてリリースしています。このアプリでは、ニュース配信、在庫検索など6つの機能を搭載しており、その中でも注目されるのがマイレージ型のポイントプログラムです。
レジでスキャンするだけでマイルがたまる仕組みで、その気軽さから多くのユーザーを実店舗への誘導へとつなげました。
また、MUJI passportには、店舗の600m以内に入って操作するとマイルがたまる「チェックイン」の機能があり、チェックインした場所や時間帯に応じてクーポンなどの情報を届けることが可能になっています。
東急百貨店のスマートフォンアプリ「東急百貨」
東急百貨店では、スマートフォンアプリ「東急百貨」を配信しています。このアプリからはフロアマップが確認できるだけでなく、商品を購入する、クーポンの情報を受け取る、といったこともできます。
またFacebookやTwitterを通じたクーポン配布も積極的に行っており、ソーシャルメディアとアプリを連携させることにより、DMよりも高い獲得率を実現することができています。
オムニチャネル化を成功させる4つのステップ
オムニチャネル化には大きな効果が期待できますが、その準備は一朝一夕でできるものではありません。ユーザーが商品やサービスに関わっている経路を確認し、さらに在庫や顧客情報を一元管理して、ECや実店舗につなげる…などと、対応しなければならない内容は多岐にわたります。
そこで今回はオムニチャネル化を実現するための4つのステップをまとめていきます。
1.ロードマップを策定する
オムニチャネル化で対応すべき内容は、自社の状況によって大きく異なります。例えばECサイトが今なければ用意する必要がありますし、顧客管理システムが未導入であれば検討を進める必要があります。
また、新システムの導入や管理システムの統合は全社をまたいだプロジェクトとなるため、「誰が」「何を」「いつ」対応するかが複雑化しやすい傾向があります。
そのためスムーズに進めていけるよう、全体のロードマップを作成したうえで、順次進めていく必要があります。
<考えられるプロジェクト関与者>
- 顧客情報を管理するシステム開発会社
- 顧客への接触方法を検討するマーケティング会社
- 商品、パッケージをデザインするデザイン会社
- 顧客の情報を収集するツールベンダー
- 上記を進行する自社プロジェクトマネージャー、メンバー
- 上記の導入、進行を検討する自社上層部
2.どのような顧客体験を提供するかを検討する
オムニチャネル化で最も大事なことは、顧客の情報や購買行動を理解する ことです。それが十分に理解できなければ、いくらチャネルを用意しても徒労に終わってしまう可能性が高くなります。
そこで有効なのがカスタマージャーニーの策定です。カスタマージャーニーでは、対象にするペルソナを策定し、そのペルソナが購入するまでの一連の流れを可視化していきます。これにより、対象とする顧客はどのような状態で、何をきっかけとして商品の検討を始めるのかなど、仮説立てることができます。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/offer-003375-fine-art-b2b-marketing
カスタマージャーニーが設計できたら、その内容と現状の顧客とのタッチポイントを比べてみます。意図通りに顧客とコミュニケーションをできているかをチェックし、できていないのであれば、顧客に与えたい体験を達成するためにはどのタッチポイントでどのような体験を提供していくか を考えていきます。
<考えられるタッチポイントやチャネル>
訪問、電話、イベント、来店、DM、Eメール、Webページ、バナー、ブログ、SNS、動画、スマホアプリ、プッシュ通知、iBeacon
3.各タッチポイントのデータ連携とシステム統合
ここでついに、オムニチャネル化の肝である各タッチポイントのデータを統合します。店舗の在庫状況、ECサイトの売上、ユーザーの過去の購入履歴など、すべての情報を統合することによって、各タッチポイントでの「購入のしやすさ」や「提供する情報の質」などを向上させます。
ただ、情報の統合の際には今利用しているツールやシステムをつなぎ合わせる必要があり、場合によってはシステム自体を変更しなければならないため、統合は慎重に進める必要があります。
一つの解決策として利用できるのが「マーケティングオートメーション(MA)です。MAツールを用いることで、Web上の行動履歴から、SFAに蓄積された顧客の購買履歴や属性などの情報などを一元管理することが可能になり、顧客に最適なコミュニケーションを図っていくことが可能になります。
「Marketo」では、SNSサービスや既存のCRMシステムと連携することができます。そのため、MAツールを入れるために既存のサービスを移行しなければならないようなことも少なく、手間をかけずにデータの連携を進めることができます。
4.カスタマージャーニーの効果検証
1~3までのすべてを対応しても、オムニチャネル化を実現したことにはなりません。ツールをつなぎ込み、データベースを整備しても、実際にそれがうまく稼働しなければなりません。
アメリカの老舗デパートメントストア「Macy's(メイシーズ)」も、当初はオムニチャネル化に成功したと言われていましたが、実際はその浸透に苦しんでいるようです。
例えば、オムニチャネル化の施策として、店舗で商品を受け取れるようにシステムを統合しましたが、商品をピッキングするスタッフがおらず、顧客側としてもどこで商品を受け取ればいいのかわかりづらくなっていたため、全体のシステムが機能していませんでした。
よって、システムの統合後に、当初想定していた動きで現場が動いているかを検証する必要があります。
具体的には、最初に想定したカスタマージャーニーに照らし合わせ、想定外の動きをしていたら軌道修正をする必要があります。
以上の1~4を実施することにより、オムニチャネル化を成功させやすくなるはずです。
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オムニチャネルのまとめ
オムニチャネル化は明日からすぐに実現できるようなものではありません。しかし、顧客の動きが大きく変化している中で、これまでと同じコミュニケーションをとっても、事業の大きな成長は見込めません。カスタマージャーニーの作成なら今日からできますし、ツールも安価にお試しできるところも増えています。まずはできるところから取り組み、将来の財産としてオムニチャネル化を進めていってはいかがでしょうか。
※参考情報
・"新しい買い物体験を"イオンのスマホ連携O2Oサービス始動 - ケータイ Watch
・東急百貨店アプリ | dマーケット アプリ&レビュー
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