顧客データプラットフォームとは?
顧客データプラットフォーム(CDP)とは、様々なシステムに分散する情報源をつなぎ合わせて、マーケティングに活用する顧客データを管理する基盤のことです。
学習内容:
- CDPとは?
- 顧客データプラットフォームは何に使用するのか?
- 顧客プロファイルとは?
- CDP、CRM、DMPの比較
- 顧客データプラットフォームのメリットは?
- CDPの仕組みは?
- CDPではどのようなデータが必要か?
- 自社に適したCDPとは?
CDPとは?
CDPは、ビジネスが様々なシステムやソースから顧客データを管理できるよう支援します。
例えば、自社に優れたマーケティング戦略があるとします。ほとんどの場合、自社のwebサイトに分析タグを設定し、消費者がどのようにサイトに関わっているかを示す行動データを収集しています。
広告キャンペーンを実施している場合は、そのキャンペーンに接触した人やその反応に関するデータを収集しています。
メールシステムでニュースレターや特別オファーを送信し、これらのメールに対する顧客のエンゲージメントを把握したい場合があります。
考慮すべきデータは大量にありますが、CDPのようなツールを利用すれば、容易に統合できます。
顧客データプラットフォームは何に使用するのか?
顧客の好みは常に進化するので、膨大な量のクロスチャネルデータを切り替え、顧客プロファイルへと変換するシステムがなければ、パーソナライゼーションは非常に面倒な作業です。この拡張性は、CDPにとって非常に重要です。
CDPが他と異なるのは、組織のあらゆる部分からデータを収集し、あらゆる顧客接点をまたいで利用できるようにする点です。CDPは、Adobe Audience Managerのようなデータ管理プラットフォーム(DMP)と類似していますが、両者には非常に重要な違いがあります。
DMPは不明な匿名ユーザーデータの管理に焦点を当てますが、CDPは既知の顧客データを使用してその情報を合理化します。CDPはメールアドレスや住所、電話番号などの個人情報(PII)を保存します。
顧客プロファイルとは?
顧客プロファイルは、顧客個人に関するあらゆるデータポイントを一元化したものです。顧客プロファイルがより包括的であれば、それだけ優れた顧客体験を提供することができます。
ただし、あらゆるデータを一カ所にまとめるだけでは十分ではありません。常に最新かつ最も正確な顧客像を提供できるよう、顧客プロファイルは更新し続ける必要があります。
リアルタイムで顧客プロファイルを更新することで、カスタマーサービスは顧客が電話をかけてくる前の行動を把握でき、必要な重要情報を得ることができます。
CDP、CRM、DMPの比較
CDPとCRMとの違いは?
CDPと顧客関係管理(CRM)システムはいずれも分析のために顧客データを収集しますが、この2つは似て非なるものです。
最も大きな違いは、収集するデータのタイプです。CRMでは、組織のビジネスチームと顧客のやり取りを整理、管理、および記録します。一方、CDPは、製品やサービスとやり取りする顧客の行動に基づいてデータを収集します。
機能や収集するデータには重複するものもあります。そのため、企業が基盤を切り替える前に、現在のビジネスツールのメリットを分析することが重要です。
いずれのタイプの製品も、マーケターにメリットがあり、顧客の全体像のプロファイルを構築し、将来のマーケティング施策やアウトリーチ施策で適切にターゲットを絞るのに役立ちます。ただし、システムエンジニアは、CDPを使用することで、顧客が好むwebサイトやアプリに関するコンバージョンファネルの弱点となる箇所を把握できます。
このテクノロジーは、CRMからの情報も含め、断片化された顧客データを取得し、個別の顧客セグメントソフトウェアだけでは構築できない、より包括的なプロファイルを構築します。
CDPとDMPの違い
CDPとDMPは両方とも収集されたデータを整理して使用しますが、データのソースが大きく異なります。CDPは社内で収集したファーストパーティデータに加え、いくつかのセカンドパーティデータを活用します。一方、DMPは外部からセカンドパーティデータを収集し、サードパーティから提供された情報に焦点を当てます。
一部のCDPでは、考えられるあらゆるソースから情報を収集するため、サードパーティデータも含めます。
CDPでは顧客行動に関してできるだけ多くの情報を蓄積しようとするので、収集したDMP情報も活用する場合があります。CDPを利用している企業は、DMPを作成したサードパーティから情報パッケージを購入し、既存のデータと統合することができます。
追加データは、CDPエコシステム内の情報分析にさらに役立つ情報を提供し、企業が顧客行動のより包括的な全体像を把握することを保証します。マーケターは収集した情報を短期間保持した後で削除してしまうため、DMPデータパッケージの購入を決定した場合には、すばやく行動する必要があります。
CDPのメリットとデメリット
CDPのメリット
統一されたデータ形式と単一の顧客像
CDPは、カスタマージャーニーのあらゆる顧客接点で、利用可能なあらゆるツールで集めた顧客データを統合します。意思決定者は、複数のツールからのデータを手動で組み合わせたり、異なるソースからの断片化されたインサイトのみ入手するのではなく、あらゆる情報に一カ所でアクセスできます。
この単一の顧客像のおかげで、短時間で全体像を把握し、顧客プロファイルの構築にかかるマーケティングROIを最大化できます。
更新されたプロファイル
各顧客に固有の単一プロファイルでは、ユーザーがCDPと統合されたシステムが操作する度に、自動的に情報が収集されます。一部のシステムでは、リアルタイムでデータを統合することもできます。
意思決定者は、これらのインサイトにより、多数の顧客にアップデートが配信された際に、ビジネスの健全性をリアルタイムで把握できます。
施策につながる顧客インサイト
あらゆるソースから収集されたデータは特定のクライアントに割り当てられ、CDPによってビジネスが必要とするデモグラフィックへと分類されるため、CDPは実用的な行動に関するインサイトを提供できます。webサイトでのインタラクションや未開封のメールにより、直ちに改善の機会を特定できます。
プライバシーと政府規制の順守機能
CDPはあらゆる情報を一カ所にまとめるので、必要な際に調整しやすくなります。政府や業界の標準は、データの進化よりも遅れて進みます。標準が定められたら、単一のストレージデータソリューションを使用していれば、コンプライアンスに合わせて簡単に調整できます。
ソースを一カ所にまとめることで、データのバックアップのメンテナンスが容易になります。これはデータを活用する企業にとって重要なポイントです。
ファーストパーティデータ
CDPはファーストパーティデータを収集するので、企業はそのデータをいつ使用し、いつ削除するかを完全に制御できますCDPは、データの収集や機能の継続に外部サポートを必要としないため、顧客のプライバシーを保護し、ビジネスをより良く制御することができます。
CDPにはどのような課題があるか?
CDPの最大の課題は、CDPテクノロジーの運用面にあります。CDPを利用する主な目的は、異なるシステムにある大量のデータを統合することです。
成果を上げるためには、データを統合するためにチームをまとめる必要があります。しかしこれが、組織内で何らかの負の力を生み出す可能性があります。
例えば、CDPを管理するチームに他のチームが脅威を感じたり、個人的な感情がデータの利用に影響を与えたりするかもしれません。
その結果、CDPの管理が不十分になり、データの分断化という、根強い問題が発生し、顧客の包括的なプロファイルをマーケターが構築できなくなる可能性があります。
こうした顧客プロファイルがなければ、企業はパーソナライズされた体験を提供できません。これは、運用面から発生する非効率性の連鎖です。
CDPの仕組み
CDPには、カスタマージャーニーを分析できる、独自のクロスデバイス機能が備わっていますが、この強力なツールは、これほど多くの機能をどのように統合して効率的な作業を支援しているのでしょうか?
データ収集
CDPが包括的な顧客プロファイルを作成する能力の基礎となるのはデータ収集です。幅広いマーケティングツール、API、イベントトラッカーやインポートメカニズムと統合することで、CDPはリアルタイムのインサイトを収集できます。手動でデータを管理する必要がなくなるだけでなく、最適な顧客プロファイルを作成できるというメリットがあります。マーケターはこれらのプロファイルを活用して理想的な顧客を特定し、より効果的に関わりを持つことができます。
データの活用 — データを実際に使用する
ほとんどのデータは、CDPがデータを収集および整理できる機能がなければ活用できません。企業は長期的に分析および使用できるよう、整理されたデータを保存し、そのデータを使用してカスタマージャーニーや行動に関するインサイトを取得、弱点を克服したりインタラクションの合理化に活用できます。
Adobe Real-Time Customer Data Platformは、B2BとB2Cの両方の企業を対象として、データをリアルタイムプロファイルに整理して、あらゆるチャネルをまたいでユーザーが活用できる機能を提供します。
CDPで使用するデータのタイプ
顧客データプラットフォームは主にファーストパーティデータを使用します。これには、会社のwebサイト、CRM、モバイルアプリ、ソーシャルメディアページなどの様々なチャネルから収集されたインタラクションが含まれます。
また、組織外のwebサイトやソーシャルプラットフォームから収集されたサードパーティデータも管理します。このようなデータは、オーディエンスのリーチを拡大するのに役立ちます。ただし、サードパーティデータには、データ漏洩や、データ保護対策の透明性が不足しているなど、特定のリスクが存在しています。
CDPは、支払いカード業界のデータセキュリティ基準(PCI DSS)、Appleのメール保護プライバシー(MPP)、カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)などの業界標準やプライバシー規制を遵守しています。CDPソリューションのこのビルトイン保護機能は、マーケティング活動とこれらのコンプライアンス要件の足並みを揃え、法的な承認を得る時間を節約できる可能性があります。
CDPは主に4つのタイプのデータを活用して、顧客のプライバシー保護標準を確保します。
- IDデータ 個人の名前、住所、銀行口座番号、健康情報など、個人の詳細情報で、こうした機密性の高い情報は、通常、公開されたプラットフォームからは隠されています。
- 記述的なデータ.このタイプのデータは個別データセットの基本的な機能を説明、図示、またはまとめて、プロファイルの概要を作成します。
- 定量的な行動データ.このデータは、顧客とビジネスのインタラクションに関するインサイトを提供します。マーケティングシステム、コールセンター、様々なサードパーティデータベースを通じて収集されます。
- 質的データ.定量化や、数字で容易に表すことのできない個人情報を含みます。一般的にこのデータは、音声やテキスト、画像、またはクラウドシステムなどのソースから収集されます。
自社に適したCDPとは?
どんなビジネスでも成功のためにCDPが必要というわけではありません。例えば、小規模のビジネスでは、ソフトウェアやインフラストチャ投資を追加しなくても、手作業や既存のツールを使用して収集したデータを処理できます。
CDPのニーズが不明な場合は、次の質問を自問してください。
- オーディエンスデータは分散され、サイロ化されていますか?
- マーケティングや営業、IT部門は、自社の運用範囲以外での顧客の行動に関する情報が不足していますか?
- マーケティングプログラムは、統合が追い付かないほど早く成長していますか?
- 活用しきれない情報が詰まった大規模なデータレイクがありますか?
これらの質問の1つ以上に対する回答が「はい」の場合、CDPが適している可能性が高くなります。
CDPはあらゆるビジネスの複雑性に対応できるか?
CDPを検討中の企業は、ベンダーが組織の現在の業務規模に対応できるかどうかだけでなく、組織が将来目指している規模になったときにも対応できるかを評価する必要があります。
多くのCDPソリューションが抱える共通のリスクは、それらがまだ十分に成熟しておらず、顧客の成長に追いつくリソースやテクノロジーが不足しているという点です。企業の成長に合わせて拡大できるソリューションを見つけましょう。
CDPのオプションを調べる際には、各オファーの製品統合にも細心の注意を払います。CDPソリューションがパートナーと連携して製品統合を設計されていれば、製品に関する深い知識と知見を備えたシステムのメリットを享受できます。
異なるCDPを評価するには、組織内のCDPに対するユースケースを特定することから初めてください。投資から価値を生み出すためには何が必要ですか?次に、潜在的なCDPパートナーが組織のニーズを満たすために、これらのユースケースをどう活用すればよいかを理解します。
実装に最適なCDPを選択する
CDPのメリットがビジネスにとって価値があると判断したら、次の手順として、適切なプロバイダーを選択します。選択の際に考慮すべきポイントをいくつか示します。
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ユースケースを明確化する
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次のような機能や設定のリストを作成する:
- 一括更新またはライブストリーミング
- スタンドアロンまかた編成
- コストと価格構成
- 実装の容易さ
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プラットフォームの評価
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デモの依頼
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パフォーマンスのテストと評価
CDPの成功事例
TSB Bankの分析/設計担当ディレクターであるMike Gamble氏は、顧客からのフィードバックを重視しています。彼はTSBのデジタル戦略に関する業務以外にも、銀行が受け取るあらゆるレビューを評価するのに時間をかけています。
顧客を理解しようとするこの情熱は、顧客データを収集、分析、活用するためのテクノロジーを含め、同氏と彼のチームのあらゆる決断を後押ししています。オンラインバンキングやモバイルフォンを利用する消費者や中小企業が増えるなか、TSBはアドビ製品のなかでもAdobe Real-Time CDPに目を向けました。この製品は、オンラインバンキングでも実店舗の利用時でも、あらゆる顧客に一貫性のあるパーソナライズされた体験を提供します。
「当行は、各ユーザーを完全に把握する必要がありました。顧客のこれまでの経緯からニーズ、カスタマージャーニーをどのように進むかに至るまで、単一のプラットフォームにデータを一元化するのです」とGamble氏は述べています。
TSB Bankは以前、顧客データとパーソナライゼーションに対して直線的なアプローチを取っていました。チームはデータを収集して、顧客や見込み顧客を大まかに分類し、それぞれのセグメント単位でマーケティング資料を作成していました。しかしユーザーは複数のデバイスを使用して取引を行うため、こうした手法では個々の顧客に対する理解が必ずと言っていいほど断片的になり、一般的なマーケティングは的を射ないものになりました。
また、オンラインとオフラインのチャネル間でデータが共有されていないため、顧客体験の一貫性が欠如していました。
Adobe Real-Time CDPでは、同行のオンラインとオフラインのチャネルからデータを収集してつなぎ合わせ、リアルタイムで更新されるあらゆる顧客の全体像を把握することができます。以前は、データの作成、分析、実用的なインサイトの獲得に15日かかっていましたが、今では複数の情報源のデータを統合し、すばやく施策に適用することができます。
重要な瞬間に、より適切なオファーやコミュニケーションを顧客に提供できるようになったことで、顧客体験が向上し、同行の売上も増加しています。同行では、アドビ製品を導入してからわずか1年で、ローンの申し込みが400%増加しました。
顧客の全体像を把握し、リアルタイムでパーソナライゼーションを行うこと同行の強みであり、コンテンツとオファーを長期的に強化できます。特に、各顧客とコミュニケーションをとるための次善のアクションを予測する場合に効果的です。
「Adobe Real-Time CDPから得られる豊富なインサイトは、顧客体験を強化するパーソナライゼーション戦略に役立っています。最も重要なことは、お客様の過去のあらゆるインタラクションに基づいて判断が行われるため、オンラインとオフラインで一貫して豊かな体験を提供できることです」とGamble氏は述べています。
CDPの活用を始める
Adobe Real-Time CDPは、既知および未知の個人と企業のデータを収集、正規化、統合し、堅牢な顧客およびアカウントプロファイルを構築し、リアルタイムで自動的に更新します。マーケターはそうしたプロファイルを利用することで、パーソナライズされた適切なエクスペリエンスをあらゆるチャネルでタイムリーかつ大規模に提供できます。
詳しくは、Adobe Real-Time CDPの概要ビデオをご覧ください。
では、早速開始しましょう。自社にCDPが適していると判断したら、次の手順として、今すぐAdobe Real-Time CDPのデモを依頼 しましょう。