DAMとは?CMSと組み合わせるメリットも含めて解説
デジタルの普及により、人々の生活には便利なデジタルサービスが溶け込んでいます。それはデジタルの先進的な活用を推進してきた企業、たとえばAmazonやNetflixのような企業によって基準が作られ、他の企業へと波及していったためです。ただ、魅力的なデジタル体験の構築は、どの企業にでもすぐ実現できること、という訳ではありません。
魅力的なデジタル体験は、魅力を生み出す源となるデジタルコンテンツを豊富に用意し、それを巧妙に体験へと転換させることから生まれます。これはかなり大変なことですが、幸い、それを効率化するテクノロジーがあります。それがDAMです。この記事では、そもそもDAMとは何か、どのようなメリットがあるのかを解説します。
目次
- DAMとは?
- デジタルアセットの活用に注目すべき理由
- DAMとCMSの組み合わせと代表例
- DAMとCMSの連携によるメリット
- DAMに関するまとめ
DAMとは?
DAMとはdigital asset managementの略語で、デジタルアセット管理、あるいはデジタルアセット管理の仕組みを提供するシステム、アプリケーションのことです。DAMは、画像や動画といったデジタルアセットを一元管理し、整理、加工、配信といった作業を効率化します。
デジタルアセットとは
また、DAMという用語に含まれる「デジタルアセット」とは、画像、動画、PDF文書、音声、3Dなどの、さまざまなデジタルフォーマットの素材を意味しています。デジタルアセットは、webサイト、電子メール、SNS投稿記事、ディスプレイ広告バナー、モバイルアプリ、デジタルサイネージといった、あらゆるデジタルチャネルの体験を組み立てるときに使われます。もちろん、カタログやリーフレット、郵送物、冊子、ポスター、屋外広告など、リアルチャネル向けのクリエイティブもデジタルアセットから制作するのが通例でしょう。
デジタルアセットの用途
企業が取り扱うデジタルアセットは、その企業の取り扱う商品やサービス、あるいは企業のブランドパーパスを、消費者、取引先、流通事業者、あるいは従業員まで、社内外のあらゆる人々に向けて表現するときに使われます。商品やサービスの機能やメリット、概観や内装、構成や利用シーンなど、ブランドとしての世界観を、人々にわかりやすく伝えるには、魅力的なデジタルアセットを取り揃えなければなりません。
デジタルアセットとDAMの役割
さらにデジタルアセットは、表現したい場面に応じて選定されたものを、配信先や掲出先の仕様に応じて加工し、組み立てる必要があります。チャネル毎の画像サイズ、解像度、動画エンコードといった仕様の違いに応じて、原本アセットからバリエーションを生成し、利用することになります。
このように、DAMには、膨大なアセットを取り扱う能力、そこから適切なアセットを見つけ出せるよう管理する能力、そして、利用先となるチャネルに応じて提供する能力、が求められます。
DAMとCMSの関係
DAM(デジタルアセット管理)と表現すべきことが増加し、チャネルが増えれば、必要となるアセットの量も自ずと増加していきます。そのためDAMは、ビジネスを成功させるために不可欠なものとなっています。
一方でCMS(コンテンツ管理システム)は、コンテンツを任意のチャネルに配信する役割を担います。
そのため、DAMとCMSは異なるシステムですが、それぞれが連携するのが理想的です。DAMとCMSが密接に連携していれば、どのチャネルでも一貫した体験に保つことができるからです。DAMとCMSはどちらも、企業の生産性を左右する重要なデジタル基盤と言えます。
デジタルアセットの制作から集中管理、利用まで、どのような役割をDAMが果たすのか、組織をまたいでDAMを活用するにはどうしたらよいかなどについては、以下のガイドで詳しく解説しています。
デジタルアセットの活用に注目すべき理由
DAMは企業にとって重要なデジタル基盤、と述べましたが、なぜ重要なのでしょうか。なぜデジタルアセットを管理すべきなのでしょうか。それは、デジタルアセットを管理することが、顧客体験を左右し、企業と顧客の関係を好転させるからです。
ある調査によると、消費者の約30%は、できのよくないデザインや分りにくい表現に、不満をいだいています。そして、消費者の5人に3人が、企業はこうした課題に対応すべきだ、と回答しています。こうした消費者の動向から、DAMやCMSの重要性がわかります。
消費者や取引先などの顧客に対して、より優れた企業であることをアピールするためには、パーソナライゼーションが鍵となります。消費者の50%以上が、メッセージをパーソナライズする企業から購入する可能性が高いと回答しています。パーソナライズされていないマーケティング施策は、応答率が低下します。
企業規模によらないデジタルアセット管理
とはいえ、適切なデジタルアセットを使って魅力的な顧客体験を構築することは、たいへんな作業です。それは、体力のある大企業だけが考えればよいことでしょうか。
確かに中堅企業は、数十億ドル規模の企業と比較すると、それほど多くのマーケティングリソースを保有していません。さらに、中堅企業の創業者や従業員は、多数の仕事を兼務していることが多く、パーソナライズされた体験を一貫して提供することは困難であり、時間もかかります。
しかし顧客は、顧客体験の提供元となる企業の規模について、特に配慮することはないでしょう。そのため中堅企業でも、時間とコストを節約しながら、コンテンツの制作と配信を拡大しなければなりません。そのため、CMSとDAMへの投資は不可欠でしょう。
デジタルアセットから組み立てられた顧客体験のよしあしが、どのように顧客体験に影響を与えるのかは、日本の消費者向け調査からも読み取れます。
DAMとCMSの組み合わせと代表例
長年事業を展開している企業にとって、CMSは非常に重要です。もし新規ビジネスを起業するなら、まずはブログから始めることでしょう。この段階でも、CMSの重要さは変わりません。この状況は、インターネットの黎明期から見られました。例えば、CMS提供サービスの先駆けのひとつであるBloggerは、1999年からブログパブリッシングサービスを開始しました。
コンテンツの制作、編集、整理、公開を支援するCMS
CMSを利用している企業では、チャネル全体における、あらゆるコンテンツの管理と公開を一元化し、ワークフローを合理化しています。またCMSを利用すると、デジタルコンテンツにアクセスし、プラットフォームをまたいで同時に展開し、コンテンツのパフォーマンスをリアルタイムで評価できます。
CMSとDAMを組み合わせで、コンテンツ配信を効率化
歴史的にはCMSの重要性が先行して広まった訳ですが、今ではCMSとDAMの組み合わせの重要性がますます高まっています。CMSとDAMを組み合わせれば、写真、動画、ロゴなどのコンテンツを効率的に発見、取得、公開できるだけでなく、公開後のコンテンツのパフォーマンスを分析することもできます。
DAMのような使われ方をしているツールとして、Google Driveなどのインターネットストレージが挙げられます。写真や動画をストレージに保存し、SNSへの投稿、友人とのファイル共有などをした経験があれば、それは既に、DAMを利用しているようなものです。これをビジネスに当てはめると、扱うデジタルアセットの規模の大きさや、売上などもたらされるビジネス成果の大きさが違いますが、デジタルアセット管理とコンテンツ配信の組み合わせによって実現されることと似ている、と言えるでしょう。
DAMとCMSの代表例
企業向けのDAMをいくつか挙げます。
- Adobe Experience Manager Assets
- Byuder
- Canto Cloudinary
- Stylelabs
- Widen
- Brandfolder
また、以下は人気のあるCMSです。
- WordPress
- Joomla
- Drupal
- Adobe Commerice(デジタルコマース用)
- Squarespace Wix
グローバルで著名なDAMでも日本ではあまり知られておらず、選択肢は限られるかもしれませんが、顧客体験の向上や作業効率化など、企業にメリットをもたらすDAMを見つけるには、以下のガイドが参考になります。
DAMとCMSの連携によるメリット
DAMを採用したとき、特にDAMとCMSを組み合わせて連携運用したときに、どのようなメリットが企業にもたらされるでしょうか。DAMとCMSを連携させると得られるメリットは、3つ挙げられます。
1. 生産性の向上
CMSを利用していない企業では、webサイトを更新する作業には困難が伴い、時間がかかります。マーケティング部門の従業員だけでは更新できないことが多くあります。そうした場合、IT部門に依頼しても、ある程度の時間がかかります。
社内のさまざまな更新を、IT部門や開発者に頼っているからです。IT部門は、より緊急性の高い優先事項に追われているのが現状です。
適切なCMSを利用すれば、マーケターはIT部門に頼ることなく、自らの手でwebサイトの更新を迅速におこなうことができます。
その結果、マーケターは新しいコンテンツや体験をより早く提供できるようになります。小規模なデジタル最適化では、もはや十分ではありません。IT部門への依存を減らすことだけが、生産性を向上させる方法ではありません。
デジタルアセットの検索と再利用に、現在どれだけの時間や労力がかかっているかを考えてみましょう。80%以上の企業が、デジタルアセットを利用する際に直面する最も大きな課題は、コンテンツを探し出すことだと回答しています。
2. AIによるスマートな作業
AIは、DAMの能力を強化することで、中堅企業が、大規模な消費者層向けに、コンテンツを迅速に検索して配信する能力を提供します。
たとえば、「スマートタグ付け」機能は、マシンラーニングとAIを利用して、動画や写真に自動的にタグ付けする機能です。
スマートタグ付けを利用すれば、コンテンツを整理したり、最適な説明文を考えたりするために、マーケターが何時間も費やす必要はありません。DAMにAIを組み込むだけで、この解決策になるのです。
年間売上高約8億ドルの半導体装置メーカーであるSilicon Labsの例を考えてみましょう。同社では、Adobe Experience Managerを導入し、5,000件の技術文書のタグ付けと追跡をおこないました。このプロジェクトには、画像や写真のタグ付けと追跡、それらの管理、エクスペリエンスの配信も含まれていました。
同社では、web サイトを更新する際に、IT 部門がマーケターからの情報提供を待つことが多く、完了までに 1 週間かかっていました。今では、わずか20分で変更できるようになりました。
全社において、DAMとCMSを導入してあらゆるコンテンツを管理するのは大変な作業に思えるかもしれませんが、中小企業にとってそのメリットは計り知れません。マーケティング調査の効率化と時間短縮を実現し、コンテンツに重要なインサイトをもたらすことで、新しい魅力的な体験を提供することができます。Silicon Labsは、その代表的な例であり、マーケティングチームはわずか3人で構成されています。
3. コストの節約
多くの中堅企業では、さまざまな部門が別々にコンテンツを制作、保管しています。キャンペーン内容は、消費者がデスクトップで見るか、モバイルで見るか、Facebookで見るかによって、微妙に異なります。適切なCMSとDAMを導入すれば、コンテンツ制作を一元化し、あらゆるチャネルで同時に更新をおこなうことができます。ビジネス全体を最適化することが時流である現在、各チャネルを手動で更新することはもはや考えられません。
企業が自社のデジタル基盤としてDAMを導入したとき、どのような投資価値が得られるのかについては、下記のガイドで解説しています。
DAMに関するまとめ
CMSとDAMを併用することで、企業の収益が向上します。ひとつのアセットを複数の業務で共有する、「アセットの再利用」が可能になるためです。
調査によると、DAMを使用していない企業は、アセットの管理に44,000ドル以上を費やしていることが明らかになっています。逆に、適切なDAMを導入すれば、わずか5年間で189,000ドル近くを節約することができます。
Motorolaの例を見てみましょう。DAMを導入する前、同社では、使用する画像の追跡、変換、配布に従業員が平均20分を費やしていました。DAMの導入により、画像をすばやく見つけることができるようになり、60万ドルを節約することができました。
今日の顧客は、効率的でパーソナライズされたデジタル体験を望んでいます。あらゆる規模の企業が、それを実現することができます。それにはCMSとDAMの組み合わせが重要なのです。
中堅企業からグローバル企業までの、幅広いビジネス規模に対応できる、アドビのDAM製品「 Adobe Experience Manager Assets」は、膨大なデジタルアセットを一元管理し、クリエイティブツールのAdobe Creatice Cloudともシームレスに連携します。またスマートタグ付けや動画のスマート切り抜きのようなアセットの自動処理、デバイスに応じた配信の最適化など、コンテンツの再利用も効率化します。詳しくは、以下の資料をご覧ください。
関連資料
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