Adobe Experience Manager:概要、仕組み、導入方法を解説
さまざまなデジタルコンテンツとアセットを把握および整理し、それらを効果的に活用することで顧客の信頼を獲得することは、困難に思えるかもしれません。
それを実現するためには、DAM(デジタルアセット管理)とCMS(コンテンツ管理システム)を組み合わせたツールが必要です。Adobe Experience Managerについて耳にしたことがあっても、導入すべきかどうか判断に迷うかもしれません。
DAMとCMSの能力を組み合わせたAdobe Experience Managerなら、顧客一人ひとりに合わせてパーソナライズされた適切な体験をタイミングよく提供できます。この記事では、Adobe Experience Managerの概要、仕組み、導入方法、包括的なデジタルコンテンツ管理に最適なツールである理由を説明します。
主な内容:
- Adobe Experience Managerとは?
- Adobe Experience Managerの仕組み
- Adobe Experience Managerの主な機能
- Adobe Experience Managerの利点
- Adobe Experience Managerの統合
- Adobe Experience Managerの導入方法
Adobe Experience Managerとは?
Adobe Experience Managerは、DAMとCMSを組み合わせたデジタル基盤です。
先進的なCMSにより、webサイトやアプリなどのチャネルをまたいで、膨大なデジタルコンテンツを効率的に管理できます。これにより、コンテンツ管理の複雑さを軽減し、時間を節約できます。
2021年のForresterの調査レポートにおいて、Adobe Experience Managerは最も堅牢なCMSとして評価されています。12万8,000以上のwebサイトが、Adobe Experience Managerをすばやく導入し、優れたCMSを実現しています。
ほかのソリューションとは異なり、Adobe Experience Managerでは、さまざまな内部システムや顧客向けチャネル全体で、データとコンテンツを管理および同期できます。これにより、統合された顧客体験を創出し、チームの時間を節約しながらブランドイメージを向上させることができます。
Adobe Experience Managerの仕組み
多くの企業がAdobe Experience Managerを導入している理由のひとつは、さまざまな機能を組み合わせてワークフローを合理化し、魅力的な顧客体験をすばやく創出できることです。Adobe Experience Managerでは、コンテンツフラグメントやレスポンシブwebデザインといった機能を利用できます。
Adobe Experience Managerは、6つの機能で構成されています。
CMS
Adobe Experience Manager Sitesは、マーケターと開発者の両方が使いやすいCMSです。テンプレートとすぐに利用できるコンポーネントにより、webサイトを迅速に構築できます。開発者は、コーディング作業を最小限に抑えながらサイトをカスタマイズできます。
開発者とマーケターは、あらゆるプラットフォームやチャネルをまたいで、コンテンツをシームレスに同時公開できます。さらに、ジェネレーティブAI(生成型AI)であるAdobe Sensei GenAIを利用すれば、ブランドボイスの変更、コンテンツバリエーションの追加、あらゆるコンテンツへの変更の反映が容易になります。
Adobe Experience Manager Sitesなら、さまざまな顧客セグメントに合わせてパーソナライズされたエクスペリエンスを構築できます。例えば、企業と個人の両方に対応するソフトウェア企業の場合、数回クリックするだけで、両方のオーディエンス向けのランディングページをすばやく作成できます。
Adobe Experience Manager Sitesは、スピード、使いやすさ、セキュリティを兼ね備えており、リソースが限られている中小規模企業と、ビジネス環境がより煩雑な大規模企業の両方に対応します。
DAM
Adobe Experience Manager Assetsは、あらゆるデジタルアセットを管理する、クラウドネイティブなDAMです。統合されたDAMエコシステムにより、部門やシステムをまたいで、画像、動画、3Dモデルなどのアセットに容易にアクセスできます。
例えば、ソーシャルメディア用テンプレートをDAMに保存し、チームと共有できます。チーム全体でこのテンプレートを利用するように促すことで、あらゆるソーシャルメディアコンテンツが自社のガイドラインを遵守できるようにします。また、誰がテンプレートの変更と調整をおこなっているのかを追跡できます。
Adobe Experience Manager Assetsは、アドビのクラウド上に構築されているため、大きなファイルをローカルに保存する必要はありません。他のアドビ製品と統合することで、企業の成長に合わせて拡張し、ワークフローを高速化できます。
デジタル登録とデジタルフォーム
Adobe Experience Manager Formsは、登録や入会手続きなどのデジタルフォーム管理をエンドツーエンドで合理化します。紙のフォームをデジタル化することで、ワークフローを高速化できます。
デジタルフォームの作成、電子サイン、オンボーディングを容易に自動化できます。例えば、営業部門は、何十通もの電子メールを配信するのではなく、新規顧客向けのオンボーディングフォームを利用できます。顧客がオンボーディングを完了して契約に署名すると、システムがオンボーディングメッセージを自動配信します。これにより、営業部門の作業時間を節約し、顧客により優れたエクスペリエンスを提供できます。
複数のプラットフォームをまたいで、社内外のフォームを容易に作成できます。
デジタルスクリーン
Adobe Experience Manager Screensは、実店舗やイベント会場向けのデジタルサイネージを作成および管理するデジタルサイネージツールです。実店舗のデジタル掲示板と通信できるため、オムニチャネルビジネスに最適です。
サイネージを容易に作成および更新できるだけでなく、単一のダッシュボードから複数の場所のメッセージを調整することもできます。例えば、実店舗を運営している場合、Adobe Experience Manager Screensを活用すれば、店内のディスプレイにスマートな商品レコメンデーションを追加したり、各店舗の顧客のニーズに応じて商品レコメンデーションをカスタマイズしたりできます。これにより、店内体験を強化し、顧客に有益な情報を提供するとともに、店舗スタッフの時間を節約できます。
今日の顧客は、オンラインとオフラインの両方で一貫性のあるエクスペリエンスを期待しています。Adobe Experience Manager Screensなら、オンラインとオフラインのマーケテイング施策を統合できます。
デジタルガイド
Adobe Experience Manager Guidesは、製品ドキュメントとサポートコンテンツを作成するコンポーネントコンテンツ管理システム(CCMS)です。CMSと混同されがちですが、両者には明確な違いがあります。CCMSは、構造化されたコンテンツ管理機能を使用して、コンテンツをコンポーネントとして管理し、必要に応じて容易に調整できるようにします。
例えば、製品の機能を変更する場合、顧客に一貫性のあるエクスペリエンスを提供するために、あらゆるヘルプドキュメントにその変更を反映させる必要があります。CCMSを利用していない場合、変更を手作業でおこなう必要があります。Adobe Experience Manager Guidesなら、コンテンツコンポーネントを交換するだけで、大規模な変更を容易に実行できます。
製品の機能は時間の経過とともに変化するため、従業員と顧客の両方に混乱をもたらす可能性があります。Adobe Experience Manager Guidesを活用すれば、ユーザーガイドをすばやく作成してリンク付けできるため、誰もがより優れたエクスペリエンスを得ることができます。
Adobe Learning Manager
Adobe Learning Managerは、同時のトレーニングプログラムを構築できるツールです。顧客エデュケーション、セールスおよびパートナーのトレーニング、フランチャイズ加盟企業および店舗のトレーニング、従業員の再教育、コンプライアンスのトレーニングに活用できます。
通常、自社独自のパーソナライズされた学習体験を構築するには、多くの時間を要します。Adobe Learning Managerなら、コンテンツマーケットプレイスに用意されている86,000以上のコースを利用して、社内外の学習コンテンツを制作できます。さらに、ゲーミフィケーション、リーダーボード、ソーシャルラーニングなどの魅力的な機能も備えています。
例えば、新しいマネージャーをトレーニングするために、リーダーシップのベストプラクティスに関するコンテンツを制作できます。また、顧客向けの魅力的な学習体験を構築し、エンゲージメントと売上を向上させることができます。
Adobe Experience Managerの主な機能
Adobe Experience Managerには、ワークフローを合理化しながら、包括的な顧客体験を実現するためのあらゆる機能が揃っています。
プロジェクトダッシュボード
ダッシュボードでは、あらゆるプロジェクトを詳細に一元管理できます。各プロジェクトは、ダッシュボードのタイル上にリソースグループとして表示されます。
例えば、ひとつのタイルであらゆるトレーニング資料を管理できます。これにより、さまざまなプロジェクトにすばやくアクセスしたり、各プロジェクトのタスク、アセット、外部リンクを追加したりできます。
すぐに利用できるツール
- Adobe Experience Managerは、コーディングすることなく運用できるプラグアンドプレイプラットフォームです。誰もが容易に設定して利用できます。
- 見たままで操作できるWYSIWYGエディター
- スタイルを調整できる編集可能なテンプレートと、ヘッダーやフッターなどのコアコンポーネント
- レスポンシブレイアウト
- アドオン
Adobe Experience Managerを利用する際にコーディングは不要ですが、開発者はカスタムコードを追加して、プラットフォームをパーソナライズできます。しかし、次のような機能により、開発に関する知識がなくてもAdobe Experience Managerを使いこなすことができます。
- ローコード設定: ローコードオプションを利用すれば、コーディングの知識がなくてもテンプレートをカスタマイズできます
- サンプルコード: サンプルコードにより、Adobe Experience Managerで何ができるのかを把握できます
- オープンソース: Adobe Experience ManagerはオープンソースのJavaにもとづいて構築されています。開発者は、オープンソースのReactコンポーネントとAngularコアコンポーネントを使用することもできます。アドビの大規模な開発者コミュニティは、Adobe Experience Managerのカスタマイズに関するさまざまな質問に回答します
クラウドサービス
Adobe Experience Managerは拡張性が高く、誰もが常に最新の機能を利用できます。アドビがあらゆるアップグレードを管理するため、ITリソースの管理にかかる時間とコストを削減できます。
アドビは、クラウドセキュリティの強化にも努めています。Adobe Experience Managerは、アクセス管理、暗号化、多要素認証など、優れたセキュリティ機能を搭載しています。
ビジュアルメディア変換
膨大なアセットを管理する場合、チャンネルごとに画像や動画のサイズを変更するのに時間がかかります。Adobe Experience Managerのビジュアルメディア変換機能を利用すれば、ファイルをさまざまなサイズや形式に一括変換できます。
例えば、Twitter、Instagram、Facebook用のグラフィックを制作する場合、各チャネルで指定されている画像サイズと形式に従う必要があります。Adobe Experience Managerなら、数回クリックするだけで、これらの画像を適切なサイズにすばやく変換できます。
オムニチャネルコンテンツの配信
Adobe Experience ManagerのヘッドレスCMSにより、あらゆるチャネルをまたいでコンテンツを効率的かつ迅速に配信できます。複数の言語でwebサイトを構築し、世界中の顧客に優れたオムニチャネル体験を提供できます。モバイルデバイスやIoTデバイスを含むあらゆるチャネルでコンテンツを共有し、複数の接点にわたって一貫性のあるエクスペリエンスを創出できます。
Adobe Experience Managerの利点
Adobe Experience Managerでは、断片的なアプローチではなく、単一基盤であらゆる機能をまとめて提供します。そうした統合基盤がもたらす利点により、多くの企業がAdobe Experience Managerを導入しています。
- 使いやすいCMS: Adobe Experience Managerでコンテンツを管理するために、特別な経験やトレーニングは必要ありません。直観的なインターフェイスにより、技術的な知識がなくても、誰もが複数のプロパティにわたるコンテンツを容易に管理できます
- 自動化されたワークフロー: AI(人工知能)を使用して、アセットのタグ付け、トリミング、配信を合理化し、作業効率を向上できます
- デジタルアセットをすばやく検索: あらゆるデジタルアセットを一元管理することで、必要なアセットをすばやく見つけ出してコンテンツを制作できます
- パーソナライズされたコンテンツ: 各チャネルに合わせてコンテンツのバリエーションを容易に作成し、ターゲットオーディエンスに最適な体験を創出できます
- いつでもどこでもターゲティング: 顧客とエンゲージメントした場所にかかわらず、ターゲットを絞ったエクスペリエンスを提供できます
- タスク管理の強化: コンテンツ管理には、多くのタスクが伴います。Adobe Experience Managerなら、ダッシュボードで各プロジェクトのタスクを必要に応じて追加するなど、DAMのワークロードを合理化できます
- 容易な統合: Adobe Experience Managerは、サードパーティ製品やAdobe Marketing Cloudなどのアドビ製品と統合し、包括的に管理できます
- 柔軟性と拡張性: 数回クリックするだけで、コンテンツのさまざまなバリエーションを作成し、顧客エンゲージメントを促進できます
- アドオン: サードパーティやMagento Marketplaceから、幅広いアドオン機能を利用できます
Adobe Experience Managerの統合
Adobe Experience Managerは、すぐに利用できるさまざまな機能を備えているだけでなく、ほかのサービスや製品と統合することで、さらなる価値を提供します。
- デジタルコマースツール: Adobe Experience Managerは、Adobe Commerce、BigCommerce、Shopify、WooCommerceなどの主要なデジタルコマースツールと統合し、コンテンツ管理を合理化できます
- Adobe Workfront:Adobe Experience Manager AssetsとAdobe Workfrontを統合することで、コンテンツの承認から配信、公開に至るまで、ワークフローをエンドツーエンドで自動化できます
- Adobe Creative Cloud:Adobe Creative CloudとAdobe Experience Managerを統合することで、コンテンツのアイデア立案から、バリエーションの作成に至るまで、コンテンツを大規模に処理できます。Adobe Experience Managerでファイルを構成し、Lightroomプリセットや画像マスクの一括処理を容易におこなえます
- Adobe Target:Adobe TargetとAdobe Experience Managerを統合することで、各ターゲットオーディエンスに合わせてwebコンテンツをパーソナライズできます。Adobe Targetを通じて適切な顧客にターゲティングし、Adobe Experience Manager Sites、Adobe Experience Manager Screens、Adobe Experience Manager Formsを使用して効果的なメッセージを配信できます
- Adobe Analytics Cloud:Adobe Analytics CloudとAdobe Experience Managerの統合により、webアクティビティを包括的に把握できます。Adobe Experience Manager Formsのパフォーマンスを追跡し、コンテンツを継続的に最適化することで、大規模なエンゲージメントを促進できます
Adobe Experience Managerの導入方法
Adobe Experience Managerは、大規模なCMSとDAMを簡素化するオールインワンソリューションです。複数のソリューションとの統合、ワークフローの合理化、タスクの自動化を通じて、魅力的な顧客体験を実現できます。
導入に関するご相談は、アドビの担当者までお気軽にお問い合わせください。
DAMとCMSの能力を組み合わせたAdobe Experience Managerなら、顧客一人ひとりに合わせてパーソナライズされた適切な体験をタイミングよく提供できます。最先端のAIを利用して、webやIoTなどのチャネルを通じて、あらゆる規模の1対1のデジタルエクスペリエンスを構築、最適化、自動化、配信できます。クラウドサービスの利点を備えたAdobe Experience Managerは、最新状態が常に維持されるため、コンテンツを最大限に活用し、高まり続ける顧客の期待に応えることができます。
Adobe Experience Managerに関する詳細は、動画をご覧ください。