ステップメールとは?基礎知識や運用方法、ツール、成功事例を紹介
ステップメールは、マーケティングにおけるリードナーチャリングでよく使われる手法です。マーケティングオートメーションツールやCRMツールを導入し、顧客リストに対して、一括でセミナー告知や新製品のお知らせはしていても、「ステップメール」を実践している企業はまだまだ多くありません。
今回は、ステップメールの有効な使い方と具体的な作成方法をご紹介します。
目次
- ステップメールとは?
- ステップメールとメルマガとの違い
- ステップメールの設計方法
- ステップメールを活用するメリット
- ステップメールのデメリット
- ステップメールが効果を発揮する場合
- ステップメール施策を効果的に行う方法
- ステップメールの成功事例
- ステップメールはMAツールの導入で効率化できる
ステップメールとは?
ステップメールは、メールマーケティングの手法のひとつ。「ある時点(資料請求日、申込日、初回購入日など)を起点として、あらかじめ準備していた複数のメールを、スケジュールに沿って、順次配信する仕組み」のことです。
例えば、ウェブサイトから資料ダウンロードがあった場合、下記の4通を自動的に配信する仕組みがステップメールです。
- 資料ダウンロード直後:資料ダウンロードのお礼
- 3日後:ダウンロードした資料に関連した事例記事やホワイトペーパーの案内
- 1週間後:ダウンロードした資料に関連したセミナーの案内
- 1ヵ月後:最新のセミナーの案内
応用編として、2通目でクリックしたリンクURLによって、3通目で配信されるセミナーの案内が、より顧客の興味・関心に近いものになるといった設定も可能です。
ステップメールは、製品購入者へのフォローや製品の使い方説明、セミナー・展示会参加者へのフォローアップによく使われます。
MailChimpやBenchmark Email、配配メールなどのメール配信ソフトはもちろん、ほぼすべての MA(マーケティングオートメーション)、CRMツールにステップメールの送信機能は実装されています。MAツールの利用企業が増えるにしたがい、ステップメールを受信することが増えた方も多いかもしれません。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/offer-003329-ma-basic-email-marketing
ステップメールとメルマガとの違い
メルマガは、メールマーケティング の手法のひとつですが、新商品の情報やキャンペーン情報などを即時、もしくは定期的に顧客に伝える施策です。楽天やAmazonなどのECサイトで何かを購入した際、プラットフォーマーや各店舗から送られてくるメールがメルマガの代表例です。退会(unsubscribe)処理をしない限り、基本的には永続的に配信されてきます。
それに対してステップメールは、シナリオを設計し、あらかじめ決められた内容を3~5回に分けて顧客に届け、短ければ1週間、長ければ数ヵ月で終了するプログラムです。
メルマガとステップメールでは、目的や送る内容、タイミング・回数は、まったく別物になります。
ステップメールの設計方法
それでは、ステップメールの具体的な設計方法について見ていきましょう。
1. 顧客ニーズの理解
まずは、マーケティングの基本、顧客ニーズの理解です。自社のターゲット顧客の購買プロセスを洗い出し、顧客が課題を感じていること、必要としている情報や体験は何かを把握します。多くの場合、ペルソナやカスタマージャーニーの作成が有効です。
2. 目的の明確化
顧客ニーズを把握する中で出てきたマーケティング課題を、ステップメールで解決できるかを考えます。もっとセミナーに参加してほしいのか、具体的なお問い合わせをしてほしいのかなど、課題を達成するためにステップメールの目的を明確にします。
3. シナリオとメール文の作成
ステップメールの目的を明確にしたら、その目的を達成するための具体的なシナリオを考えます。3~5通に分けて、コミュニケーションを設計していきますが、1通につき1メッセージにとどめ、営業するのではなく、あくまでもユーザーに役立つ情報を届けることを心掛けましょう。
4. 配信結果分析&改善
ステップメールのプログラムが走り始めたら、各メールの開封率、リンクのクリック率、手順2で設定した目的の達成状況を計測して、PDCAを回していきます。
Marketoでは、iOSまたはAndroidデバイスのMarketo Momentsアプリからもメールキャンペーンの効果を把握することができます。
上記の4ステップが大まかな流れですが、シナリオ設計やメールコンテンツの作成は、初めての場合、なかなか難しいものです。
例えば、BtoBの場合なら、実際に営業の方が、顧客とどういう話をしているのかをヒアリングするといいでしょう。BtoCの場合なら、お客様が疑問や課題と感じていることをクリアにしていきます。
ステップメールを設計するということは、コミュニケーションを標準化するということ。ぜひ、設計にトライしてみてください。
ステップメールを活用するメリット
メルマガではなく、わざわざ手間のかかるステップメールを設計・運用することに、どのようなメリットがあるのでしょうか。
ブランド想起率のアップ
例えば、ウェブサイトから資料請求があった場合でも、一度、資料を送付しただけでは、多くの場合、時間が経つにつれて、顧客は企業のことを忘れてしまいます。ステップメールによって繰り返し接点を持つことで、顧客にブランドを思い起こしてもらいやすくなります。
見込み客育成
展示会で大量に獲得したリードも、すぐに商談・受注につながる企業ばかりではありません。
BtoBでは特に、顧客の購買プロセスが長い傾向があるため、ステップメールを活用して、継続的にコミュニケーションをとることで関係性を構築すれば、顧客の検討段階が上がったタイミングで自社を選んでもらいやすくなります。
より多くの情報を伝達できる
企業が伝えたい、顧客が知りたい情報がたくさんある場合、複数に分割することで、より効率的に情報を伝えることができます。情報や物が氾濫し、変化のスピードが速くなっていることで現代人は忙しくなり、注意(Attention)の獲得はますます難しくなっています。顧客が受け取りやすい単位に情報を編集し、届けることは、これからのマーケッターにとって必須のスキルになるかもしれません。
Marketoの場合、お客様の行動や状況に応じて、AシナリオのステップメールからBシナリオのステップメールに変更したり、メールコンテンツのパーソナライズにより、自然なコミュニケーションを実現したりすることができます。まずは簡単なシナリオ作成からトライして、自社のマーケティング活動に使いこなせるようにしましょう。
ステップメールのデメリット
ステップメールにはメリットがある一方で、いくつか留意点もあります。無駄なコストや工数をかけないためにも、デメリットも踏まえて施策を講じることが大切です。
メールアドレスの獲得に時間やコストがかかる
ステップメールを配信するためには、当然メールを届けるユーザーが必要です。そのため、まずはサイトへ多くのユーザーに訪問してもらい、何かしらの形で配信先のメールアドレスを獲得しなければなりません。
サイトへの集客を増やすためには、広告やSEOの実施を検討しましょう。
また、サイトへの訪問者は多いにもかかわらずアドレスを獲得できない場合は、以下の2点の可能性が考えられます。
・ユーザーにとって有益な情報を提供できていない
まず、ユーザーにとって有益な情報を提供できていない可能性があります。
メールアドレスをはじめとした顧客情報と引き換えに、資料や無料プランなどを提供するといった方法を検討してみましょう。ユーザーに「ぜひメールアドレスを投稿して、情報を入手したい」と思ってもらうことが重要です。
・コンバージョンポイントが適切に用意されていない
コンバージョンポイントが適切に用意されていない可能性もあります。
フォームの入力を促す資料ダウンロードページやデモ動画、セミナー登録などのページを充実させて、メールアドレスの獲得数を増やしましょう。
メール作成に時間がかかる
段階的に複数のメールを配信するステップメールでは、その分、メール作成に時間がかかります。
目的や内容によっても作業内容は異なりますが、基本的にはステップメール施策の手順は次のような流れとなります。
<ステップメール施策の手順>
- ユーザーに起こしてほしいアクション(ゴール)を明確に設定する
- ターゲットユーザーに合わせたシナリオを作る
- 段階的に配信するメールをそれぞれ作成する
- メールの配信設定を行う
上記のうち、特に工数がかかるのが手順2と3です。また、メールの内容を複数の担当者で確認するのであれば、さらに時間がかかるでしょう。
なお、これらの工数や時間は、MAツールによって短縮することができます。
MAにはさまざまなHTMLメールテンプレートが用意されており、複数の形式のメールを一括で複製することも可能です。メールを最初から作成する必要がないため、作業の工数や時間を短縮できます。
また、最初に細かく条件や内容を設計するよりも、仮説を立ててメールを作成し、一定数送信してから改善していくほうが、良い結果に早くたどり着きます。このような効果検証や改善がスムーズに行えるのも、MAツールの強みです。
ステップメールが効果を発揮する場合
メールマーケティングには、ステップメール以外にもメールマガジンやターゲティングメールなど複数の手法があり、ステップメールが効果を発揮するのはどのような場合なのか、迷う方もいるかもしれません。
続いては、特にステップメールによる効果が期待できる2つの条件をご紹介します。
ユーザーが時間をかけて購入を検討する場合
ステップメールは、ストーリー性を持つ複数のメールを段階的に届けることで、ある程度の時間をかけてユーザーを育成する手法です。そのため、ターゲットとなるユーザーが、サイト閲覧や資料請求などの情報収集を行うなどして、購入検討に時間をかける場合に効果を発揮しやすいという特徴があります。
シナリオの作成や改善の際には、メールを届けるタイミングによって、ユーザーの求める情報が異なるという点を意識することが重要です。
例えば、商品購入の直後にサンクスメールを配信し、さらに2日後に関連商品を紹介するメールを配信して反応が悪かった場合は、2回目のメールを届けるタイミングとその内容が悪かったと推測できます。
購入から2、3日目ではユーザーが商品を使っていなかったり、効果を実感できていなかったりする可能性が高く、関連商品を紹介されても興味を惹かれないということです。
このような場合は、2通目のメールでは購入商品の活用方法などの内容にとどめ、3通目で関連商品を紹介することで、シナリオの改善が期待できるでしょう。
ユーザーが時間をかけて商品やサービスについて学ぶ場合
ユーザーが継続的に商品やサービスについて学んだり、理解を深めたりする必要がある場合にも、ステップメールは大きな効果を発揮します。今までにない斬新な商品や、一度にすべてを把握するのが難しい複雑なサービスなどがあてはまるでしょう。
時間をかけて商品やサービスについて知ってほしい場合、1通目から積極的に営業をかける必要はありません。まずはユーザーとの信頼関係を構築し、商品やサービスについて理解を深めてもらった上で営業を行ったほうが、コンバージョンに結びつきやすいためです。
例えば、全5通のステップメールを送る場合は、営業をかけるのは3通目と5通目のみで、それ以外のメールでは、商品やサービスに関する基礎知識や活用事例などの情報を提供し、ユーザーとの信頼関係を深めていきます。
ステップメール施策を効果的に行う方法
ステップメールは通常、数週間から1ヵ月程度かけて、複数のメールを配信することを想定しています。さらに、長期的なフォローが必要であれば、ユーザーの関心や検討状況に応じて、シナリオやメール内容を切り替えることも欠かせません。これらの作業を手動で行うと、かなりの工数が必要です。また、手動の作業が増えると、ミスをする可能性も高まります。
MAツールを導入することで、ステップメールなどのマーケティング施策を効果的に行うことが可能になります。
MAツールがステップメール施策に役立つ理由
MAツールとは、マーケティング施策の自動化や収益プロセス全体の効果測定に役立つツールを搭載した、マーケティングプラットフォームです。
MAツールには下記のように、マーケティング施策に役立つさまざまな機能が含まれています。
- メールマーケティング
- ランディングページおよびフォームの作成
- キャンペーン管理
- リードナーチャリング/スコアリング
- リードライフサイクル管理
- CRM統合
- レポーティング機能
MAツールを導入すれば、手作業ではどうしても工数がかかってしまうシナリオの作成および改善が自動化できるため、ステップメール施策の作業効率を大きく向上できるでしょう。
また、MAツールの導入はステップメール施策の作業効率化だけでなく、精度向上にも役立ちます。
MAツールは、ユーザーの活動情報をあらゆる接点から収集し、そのデータに基づいたシナリオ設計ができる機能を搭載しています。各種テクノロジーと連携できるツールを導入すれば、MAツールを主軸として、さまざまなマーケティング施策の精度向上が期待できるでしょう。
メール送信後、メール開封率やクリック率、ウェブサイトでの行動、セミナー申込みなどのデータは、すべてMAツールに蓄積されます。さらに、CRMツールと連携することで、商談や売上につながったかどうかもまとめて確認できます。このように、複数の軸で分析できることは、ステップメール施策の精度向上にも大きく貢献するでしょう。
メールマーケティングについて、詳しくは下記のページでご紹介しています。
MAツール提供企業のサービスを利用するとさらに効率的
MAツールを導入して、ステップメールなどのマーケティング施策を行う際には、MAツール提供企業のコンサルティングサービスや、支援サービスを積極的に利用することもおすすめです。
例えばアドビでは、MAツール「Marketo Engage」を導入していただいたお客様に対して、担当コンサルタントがツールのスムーズな立ち上げをサポートする初期導入支援サービスをはじめ、マーケティング戦略立案支援やシステム連携開発支援、メール配信に関する支援など、豊富な支援メニューをご用意しています。
ステップメールの成功事例
ここでは最後に、株式会社ビープラウドの事例をご紹介します。アドビのMAツールMarketo Engageを導入し、ステップメールを活用したマーケティングが参考になるはずです。
ビープラウドのオンライン学習サービス事業にMAツールを導入
ビープラウドでは、プログラミング言語Python(パイソン)を、2008年より主言語として採用。システム開発事業をはじめ、Pythonのプログラミング教育事業や技術書執筆、監修事業なども展開し、ソフトウェア開発のプロフェッショナルとして業界内で注目を集めています。
その教育事業のひとつが、ウェブブラウザで学べるPythonオンライン学習サービス「PyQ(パイキュー)」です。同社は、BtoCで直接販売するサービスの認知度向上を図り、Marketo Engageを活用してマーケティング施策を展開しています。
ステップメールでオンライン学習サービスの認知度向上を目指す
アドビのMarketo Engageを選んだ理由は、MAツールの中でも機能性が高く、導入支援サービスが充実していたためとのこと。2018年5月に導入し、アドビのコンサルタントのアドバイスも受けつつ、まずは収益サイクルモデルの構築に着手したといいます。導入から3ヵ月以内に、顧客との中長期的な関係構築を実現するエンゲージメントプログラム機能を稼働させることを目標にスタートしたのだそうです。
このように、導入早期から収益サイクルモデルの構築に取り組んだことで、見込み客の遷移も明確になり、課題も可視化されたとのこと。その結果、エンゲージメントプログラム稼働の際も、課題を反映しつつ効果的に進めることができたといいます。
無料体験期間中にステップメールを配信し、有料会員増加を狙う
同社は、ペルソナを基にメールマーケティングを実施。「無料試用から購入フェーズに至る有料化率の向上」を目標とし、無料プログラム体験中にステップメールを7日間かけて配信したそうです。
ステップメールの内容は、「PyQ 7days Pythonチャレンジ」という学習コンテンツ。Pythonの使い方を、プログラミングの基礎からゲーム感覚で学べるコンテンツです。
エンゲージメントプログラムによってユーザーの行動も分析しつつ、コンテンツの難度は適切か、無料期間中の進捗で有料化率はどのように変化するのかといった点を見ながら、コンテンツや施策の改善を進めていったとのことです。
MAツールを活用し、新規有料化会員20%増を達成
Marketo Engageを活用し、ステップメールによる購入促進を含めた複数の施策を行ったことで、無料試用開始からの有料化率は20%から71%に上昇し、新規有料化会員は20%の増加を実現。導入から1年で、BtoCの売上だけでも1.5倍を達成したといいます。
ステップメールはMAツールの導入で効率化できる
ステップメールは、売上や見込み客が不安定という場合にも効果が期待できるメールマーケティング施策です。まずは簡単なシナリオ作成からトライして、自社のマーケティング活動で使いこなせるようにしましょう。
シナリオの作成や改善にはある程度の工数はかかりますが、MAツールを活用すれば効率的に施策を進められることも期待できます。
アドビのMAツールMarketo Engageは、お客様の行動や状況に応じて、メールコンテンツのパーソナライズにより、自然なコミュニケーションを実現します。
例えば、関心度の高い人にはより多くの情報を、そうでない人にはボリュームを抑えたサマリー情報をといったパーソナライズも、Marketo Engageで実施可能です。AシナリオのステップメールからBシナリオのステップメールへの変更や、配信頻度の異なるシナリオへの変更といった機能が、メールコンテンツの細かなパーソナライズを支えています。
そのほかにも、一度送信されたメールを再度送信することがないよう制御できるため、メールを受け取る側の不快な体験を減らすこともできます。
Marketo Engageを導入することで、必要なときにメールマーケティングのパフォーマンス指標を確認することも可能です。
メールの開封率やクリック率はもちろん、メールを通じたウェブサイトでの行動やセミナー申込みなど、企業側が目標としているユーザー行動を測定することもできます。目的や指標に応じたさまざまな効果測定が可能になったことにより、ビジネスへの貢献度も高まるはずです。
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