顧客理解を深化させるデータ統合:DXがもたらす新たなインサイト
正しくデジタルを活用することで、マーケターは顧客のニーズや嗜好性を深く理解し、ひとりひとりの顧客に対して最適な体験を提供することができるようになります。
顧客をより深く理解するために重要なのが、チャネルや部門を横断したデータの収集および統合と、マーケターがデータをもとにインサイトを獲得しやすい分析手法の確立です。
今回は、社内外のデータをどのように収集・統合すればよいかと、どのような分析をすれば統合されたデータからのインサイトを獲得しやすくなるかについてご紹介します。
もくじ
- インサイトを獲得しやすくなる分析手法のポイント
- チャネルや部門を横断したデータの収集および統合のポイント
- Adobe Experience Cloudを用いた顧客理解基盤の実現
インサイトを獲得しやすくなる分析手法のポイント
はじめに、データから数多くのインサイトを獲得するための分析手法のポイントをご紹介します。
セグメント比較:オンライン/オフラインのデータに関わらず、分析をする際には比較対象のデータがない限り、インサイトが得られにくい状況になります。事前定義されたKPIの数値だけをモニタリングしていても、この数値が良い状態なのか悪い状態なのか、何が問題で悪い状態なのかを判断することができません。Webサイトを例にする場合、購入や資料請求といったコンバージョンに至ったユーザーに関するインサイトを得るために、コンバージョンに至ったユーザーと至らなかったユーザーのデータを比較するところから分析をはじめます。商品を例にする場合であれば、購入単価が高い商品と低い商品を比較することで、購入単価が高い商品の購入率を改善するためにどのような体験を提供すべきかのインサイトが得られやすくなります。1年間に複数回のコンバージョンが発生するような商品/サービスを扱っている場合には、1回のコンバージョンのみで離反してしまったユーザーと、2回以上のコンバージョンをしたユーザーを比較し、複数回のコンバージョンするユーザーにおける体験の違いを分析することで、複数回のコンバージョンにつながったプロモーションやキャンペーン、コンテンツといったインサイトを得ることができます。
アトリビューション分析:コンテンツの閲覧回数や商品毎の購入回数、Web広告やメールのクリック数だけを見ていても、効果的なインサイトは得られません。それぞれのアクションに対して、何がどの程度貢献したのかを分析するアトリビューション分析が重要となります。Webサイトを例にすると、デジタル上での最初の接触がWeb広告であった場合において、商品をその場で迷いなく購入するというケースは非常に稀です。実際には、Web広告によって商品が認知され、後にGoogleなどでの検索を行い、数日後に購入に至るというケースが多く見受けられます。こういったケースで得たいインサイトは、直接の貢献が高い流入元は検索エンジンであるものの、Web広告での商品認知があったおかげで、新規顧客の獲得に至ったという事実です。こういった間接効果を導き出すアトリビューション分析は、マーケティングの予算配分において活用すべき重要な分析手法となります。また、Webサイト内においても、サイト内検索や、お気に入り登録、閲覧履歴や購入履歴、レコメンドなど、商品を発見する方法は数多く存在し、各機能も直接的な貢献度が高い機能と間接的な貢献度が高い機能が存在します。Webサイト内の機能やコンテンツについても、アトリビューション分析が重要となります。Webサイトに限らず、実店舗での購入や、商談を経ての受注といったオフラインのコンバージョンに対しても、アトリビューション分析が重要です。B2Bであれば、商談を経て新規顧客の受注に至った際の最初のきっかけとしてのデジタルの貢献度の可視化は、デジタル活用を推進する上でも重要な分析手法となります。
分析の自動化:これまでは、上記のような分析はアナリストやマーケターによって手作業で行われてきました。専門家が分析することで多くのインサイトが得られる反面、インサイトの量や質は担当者のスキルに大きく左右される状況でした。今後の分析業務は、ジェネレーティブAIに代表されるAI(人工知能)やML(機械学習)より、スピーディーにインサイトが得られるようになっていきます。セグメント比較やアトリビューション分析からインサイトを得るプロセスにAIを活用することで、アナリストやマーケターはより高度な分析やパーソナライゼーションのための施策立案に多くの時間を割くことができるようになるでしょう。
チャネルや部門を横断したデータの収集および統合のポイント
前述のような分析によるインサイトを得やすい状況を作り出すために重要なのが、分析のために有用なデータを収集し、アナリストやマーケターが分析可能な状態にデータ統合するという点です。より高度なデータ活用をされたい場合には、この統合データをAI/MLの学習データとして活用できるよう、活用しやすい形式でのデータの連携および管理が求められます。ここでは、チャネルや部門を横断したデータの収集および統合のポイントをご紹介します。
有用なデータの収集:まずは、分析によって何を明らかにしたいかを明確にしましょう。顧客をより深く理解することが分析の主目的であれば、顧客に関するマスタ情報は必須とした上で、オウンドメディア上での行動データや、メールマガジンの開封およびクリックデータ、SNS上のデータや、商品に対するレビュー情報、アンケートデータ、オフラインイベントの参加や営業の訪問履歴、商品の購入および返品情報など、様々なデータが必要なデータソースとして挙げられます。特にオウンドメディア上では収集できるデータの自由度が高いことから、顧客の行動傾向やニーズを把握できる情報はより多く収集することが重要です。顧客ニーズを把握しやすいサイト内検索キーワードや、商品発見方法、お気に入りの情報などは漏れなく収集できるようにしましょう。また、有用という点では、顧客と紐づけられるデータを数多く集めるという点が重要です。メールアドレスや電話番号など、個人を特定できるキー情報と合わせて収集できる情報は、非常に価値が高いデータとなります。
チャネルや部門を横断したデータの収集:企業によっては、CRM部門、マーケティング部門、営業部門、IT部門などの部門毎に保有しているデータが存在しています。本来はこれらのデータを統合することで顧客のより深い理解が進むことは把握しているものの、データ統合した先の戦略が不明瞭であるために、データ統合の優先順位が上がらないといったケースが数多くあります。一方で、戦略が不明瞭なままに、データ統合を目的として各部門に協力を仰いでしまうケースも見受けられます。チャネルや部門を横断したデータを収集するためには、まずデータを活用してどのような顧客体験を提供したいかをチャネルや部門を横断した形で定義し、その具体的なユースケースをもとに、データ統合のプロジェクトを進めることが重要です。また、統合したデータをすべての部門が利活用できる状況を作り出すことも重要となります。これにより、統合したデータをもとにCRM部門はよりパーソナライズされたメールを最適なタイミングで配信できるようになり、マーケティング部門はより精Web広告のパフォーマンスを改善し、Webサイト内のUI/UXも飛躍的に改善することができます。営業部門では担当顧客のニーズをより深く把握することができるようになるため、顧客訪問の優先順位や適切なタイミングでのソリューション提案が可能になります。IT部門にとっても、部門毎に契約および管理しているマーケティングツールや分析ソリューションを統合することで、コスト削減とデータガバナンスの強化を図ることができます。
Adobe Experience Cloudを用いた顧客理解基盤の実現
最後に、顧客のニーズや嗜好性を深く理解し、ひとりひとりの顧客に対して最適な体験を提供するためのソリューションであるAdobe Experience Cloudの活用ポイントについてご紹介します。
有用なデータをリアルタイムに収集:Adobe Experience Cloudでは、自社に存在している様々な有用データを、コネクタやSDK、APIなどを利用することで簡単に統合することができます。Adobe Analyticsの場合には、リアルタイムなデータとして、オウンドメディア(WebサイトおよびMobile App)上の行動データを収集することができる上、顧客マスタや商品マスタのようなマスタ情報も定期的に取り込み、多角的且つ高度な分析を実践することができます。
チャネルを横断したジャーニー分析:オウンドメディア上の行動だけでなく、オフライン上の行動データも収集してカスタマージャーニーやアトリビューションの分析をされたい場合には、Adobe Customer Journey Analyticsを利用します。Adobe Customer Journey Analyticsの場合には、顧客に紐づくプロファイルデータや、オンライン/オフライン問わず様々なイベントデータおよびトランザクションデータをリアルタイムに収集し、チャネルを跨いだ高度な分析を実践することができます。商品に対するレビュー情報やアンケートデータ、オフラインイベントの参加や営業の訪問履歴、商品の購入および返品情報などのデータソースが重要な場合には、Adobe Customer Journey Analyticsをご検討ください。
AI/MLを活用した高度な分析:Adobe AnalyticsとAdobe Customer Journey Analyticsには、数々のAI/MLを活用した高度な分析機能が搭載されています。今回ご紹介したセグメント比較に特化した機能や、異常値を自動的に検知する機能、異常値に対する貢献度を分析する機能などが搭載されています。Adobe Customer Journey Analyticsの場合には、Customer AIの機能を利用することで、傾向スコアリングによって顧客ひとりひとりのコンバージョンや解約、離反に対するスコアを自動的に計算するだけでなく、その要因も自動的に分析することができるため、より多くのインサイトをスピーディーに獲得することができます。
このように、正しくデジタルを活用することで、マーケターは顧客のニーズや嗜好性を深く理解し、ひとりひとりの顧客に対して最適な体験を提供することができるようになります。また、これからのマーケティングにおいては、ジェネレーティブ AIに代表されるAI/MLを業務に活用することで獲得した有用なインサイトこそが、魅力的でパーソナライズされた顧客体験を実現する原動力となるでしょう。データを活用した高度な「顧客体験管理(CXM)」を実現されたい場合には、ぜひアドビにご相談ください。