CXM(顧客体験管理) のあるべき姿
ジャーニーおよび顧客プロファイル管理の重要性
マーケティングDXにおいてCXM(顧客体験管理)が重要であるという点は、この記事をご覧になられている多くの方がご理解されていることと思います。改めて、なぜジャーニーおよび顧客プロファイルを管理することが今の企業にとって重要であるかについて理解し、自社にとって不足しているデータやツールを整理していきましょう。
上記のように、ITPなどのクッキーレスの流れや改正個人情報保護法の施行など、データに関するセキュリティ強化および厳密な顧客データの管理が求められている一方で、顧客体験に対する顧客からの期待が年々高まっていることから、各企業には、顧客の同意にもとづいて様々なデータを統合し、データをもとにパーソナライズされた優れた顧客体験を提供することが求められています。
ジャーニーおよび顧客プロファイル管理基盤に求められるもの
ジャーニーおよび顧客プロファイルを管理することの主目的は、パーソナライズされた優れた顧客体験を提供することです。
顧客との関わり方を再定義し、前例のない規模でデジタル体験を提供するために顧客体験管理基盤が必要とされており、この顧客体験管理基盤に対して以下の要素が求められています。
上記の中でも、事業において特に重要なのがROIです。高ROIを達成するためには、ツールの選定前にどのような優れた顧客体験を提供したいかを定義することが重要であり、ここで描く顧客体験が優れていない限り、どれだけ優秀なツールを導入しても効果が出ません。
また、優れた顧客体験を描くことができていれば、その顧客体験の提供による売上貢献度も高く試算することができるため、高度なツールの導入も検討できるようになります。
CxO/マーケター視点での顧客体験管理(CXM) のあるべき姿
それでは、CxOならびにマーケターにとっての顧客体験管理のあるべき姿とは何でしょうか。
ご存知の通り、これまでは情報収集/共有あるいはオンライン注文が中心であったデジタル上の顧客接点は、リモートワークや宅配フードサービスの増加だけでなく、QRコード決済やリモート診療、メタバースの浸透など、消費者のライフスタイルにおいてデジタルがより欠かせない状況へと急速に変化したことで、多種多用な顧客接点が生じています。
デジタル上のコミュニケーションが当たり前になる中で、デジタル上での体験に対する顧客の期待も急速に高まっていることから、この変化に対応するためにデータ戦略やパーソナライゼーションへの取り組みを進化させていかなければ、今後さらに激化するデジタル中心の競争において、企業が勝ち残ることはできないと言われています。
実際に、CxOならびにマーケターにとっての顧客体験管理のあるべき姿を考えましょう。
- リアルタイムに顧客の声を聞き、不安や不満を取り除くためのアクションを即時実行できる
- 今後のニーズを予測し、商品開発や、広告/キャンペーンの精度を高められる
- 提供する顧客体験の課題を把握し、ボトルネックを早期に解消することができる
- AI/MLを活用して顧客の期待を超えるような提案を能動的に行い、ブランドへの信頼を高められる
- 顧客体験の改善に関するPDCAサイクルを高速に回し、高頻度に改善を実行できる
上記のような顧客体験管理を実現するために、Adobe Experience Cloudでは以下のようなソリューションを提供しています。
- Adobe Customer Journey AnalyticsやAdobe Analyticsを利用し、リアルタイムにあらゆるチャネルの顧客の行動を分析・可視化し、KPIの把握だけでなく、顧客の離脱ポイントや離反確率を理解する
- Adobe Targetを利用し、最適な商品やコンテンツのレコメンドをするだけでなく、あらゆるチャネルにおいてA/Bテストを繰り返すことで、高頻度な顧客体験の改善を可能にする
- Adobe Real-Time CDPやAdobe Audience Managerを利用し、収集したデータの利用用途を正しく管理した上で、AI/MLを活用して作成したインテリジェントな顧客セグメントを分析や施策に活用する
- Adobe Journey OptimizerやAdobe Campaign、Adobe Marketo Engageを利用し、すべての顧客に対して最も関連性の高いメッセージを最適なタイミング、最適なチャネルで配信する
- Adobe Experience Managerを利用し、コンテンツの作成・更新頻度を飛躍的に向上させ、一貫性のある体験の提供を可能にするとともに、パーソナライズされた優れた顧客体験の市場投入までの期間を短縮する
IT/エンジニア視点での顧客体験管理(CXM) のあるべき姿
次に、IT部門ならびにエンジニアにとっての顧客体験管理のあるべき姿とは何でしょうか。
顧客体験管理というキーワードからは、CxOおよびマーケターが検討すべきものが多いように感じられるかもしれませんが、実際にはITならびにエンジニア視点での検討が非常に重要です。
市場には顧客体験管理を行うためのツールが数多く出回っていますが、ツールによって、リアルタイム性やプライバシー管理、拡張性や操作性などに差があることから、自社にとって最適な基盤が何かはITならびにエンジニアが適切に判断しなければなりません。
実際に、ITならびにエンジニアにとっての顧客体験管理のあるべき姿を考えましょう。
- コネクタが用意されており、現行のシステムからのデータ取り込みが容易である
- データを投入する際の連携方式やフォーマット、更新頻度が要件を満たしている
- CookieやCRM ID、メールアドレスなど、複数のキー情報をもとに顧客プロファイルが構築できる
- 顧客体験を管理する上での行動データとCRMデータがリアルタイムに紐づけられる
- 複雑なセグメント要件に対しては、SQLを利用して高度なセグメントが作成できる
- マーケターが作成したセグメントが自動的に施策実行ツールに連携され、開発なしにサイト内ターゲティングやメール配信といった施策が実行できる
- 収集したデータはセキュアな環境において保護され、GDPRやCCPAなどのプライバシー規制に準拠した機能を保有している(データのアクセスや削除要求への対応など)
- コネクタが用意されており、外部のシステムへのデータ出力が容易である
- AI/MLを活用する上での特徴量を選択/加工できる
上記のような顧客体験管理を実現するために、Adobe Experience Cloudでは以下のようなソリューションを提供しています。
- Adobe Real-Time CDPのコネクタを利用し、アドビアプリケーションだけでなく、広告、クラウドストレージ、CRM、データベース、APIなど様々なソースのデータをスムーズに取り込む
- Adobe Real-Time CDPのIdentity Serviceを利用し、複数のIDをつなぎ合わせ、顧客の包括的なビューを作成する
- Adobe Real-Time CDPを利用し、ストリーミングのデータをもとにリアルタイムなセグメントを作成する
- Adobe Real-Time CDPの顧客AIを利用し、離反やコンバージョンなどの顧客の傾向モデルを高精度で提供する(特定の顧客行動に影響を及ぼす要因と可能性の把握も可能)
- Adobe Real-Time CDPの顧客AIのデータソースとしてのデータセットを追加し、特徴量のコントロールする
- Query Serviceを利用し、SQLを利用したセグメンテーションや、ダッシュボード構築のために特定のデータのみのBIツールへのデータ連携を実現する
- データガバナンス機能を利用し、データ毎に用途のラベル付けやアクセスポリシーを設定し、プライバシーを管理する
- Privacy Serviceを利用し、個人の顧客データへのアクセスおよび削除リクエストを実現する
- Adobe Real-Time CDPを利用し、作成したセグメントをアドビアプリケーションや広告、クラウドストレージ、メール配信ツール、ソーシャルなどへ連携する
- Adobe Targetを利用し、レコメンドエンジンを含むパーソナライゼーションエンジンを構築する
- Adobe Journey OptimizerやAdobe Campaign、Adobe Marketo Engageを利用し、テンプレートにもとづくメッセージ配信基盤(メール/アプリプッシュ通知/LINE連携/リスト出力など)を構築する
- Adobe Experience Managerを利用し、テンプレートにもとづくコンテンツ・アセット管理基盤を構築する
今回は、顧客体験管理基盤を検討する際の登場人物であるCxO、マーケター、IT部門ならびにエンジニアにとっての顧客体験管理のあるべき姿についてご説明しました。
上記の内容をもとに、次回はAdobe Experience Cloudを活用して優れた顧客体験を提供している国内企業の事例をご紹介します。
ぜひ、自社にとっての顧客体験管理のあるべき姿を明確にしていただき、大規模に優れた顧客体験を提供するためのパーソナライゼーションを実行する基盤の選定と、組織横断で顧客体験を管理する体制の構築を進めてください。
優れた顧客体験の提供に対して予算およびリソースを割り当てることが、企業の競合優位性を高めることにつながり、継続的な事業の革新と創造につながっていきます。