SQL(Sales Qualified Lead)とは?SQLとMQLの定義や活動内容をご紹介
はじめに
自社のマーケティング活動をより効果的なものにするためには、関わる人たち全員がそれぞれどのような目標と役割を担っているかを明確に理解している必要があります。よく言われれる「営業とマーケティングの溝」は、組織文化や社風の問題以前に、この目標設定と役割分担でつまずいている企業がほとんどです。
企業の売上や利益を伸ばす、顧客に価値を提供するなど、本来、全員の最終的な目標は同じはずです。営業とマーケティングが連携しさ、共通の目標を達成するために大切なのが、用語の定義を揃えることです。
この記事ではSQL(Sales Qualified Lead)とMQL(Marketing Qualified Lead)を中心に、マーケティングファネルの考え方や、SQLとMQLの定義を解説します。また、例としてアドビではどのように使っているかを紹介します。なおアドビ社内のオペレーションは年々進化しており、ここで解説するのは以前まで採用していたものです。
目次
- 根底にあるマーケティングファネルの考え方
- MQLからSQLにする活動
- SQLからOpportunityにする活動
- 営業が直接獲得したSGLの位置付け
- 成果を最大化する営業とマーケティングの連携
根底にあるマーケティングファネルの考え方
まず基本にあるのがファネル(漏斗)の考え方です。認知を獲得してから、Webサイト閲覧、セミナー参加、商談や見積もり提出など様々な段階を通って、実際の顧客になるまでの過程を以下のような漏斗型に見立てます。
自社のマーケティングプロセス、顧客の購買プロセスに即して、上記のファネルを定義します。各社で独自に定義を作っていくことになりますが、社内で用語と定義を揃えることでマーケティング、インサイドセールス、営業ごとの役割と目標を明確にできるようになります。
アドビでは、以下の9個のステージにわけ、利用するシステムと担当部門をわけています。
次に、マーケティングファネルの理解を深めるため、それぞれのステージについて解説します。
TOFU:Top of Funnel
いわゆる「認知」の段階です。この段階の顧客は、まだ製品やサービスの購入を検討していません。
アドビの例では、TOFUのステージにいる顧客を「Awareness:自社または製品サービスに対して認知がある」、「Friend:製品サービスについて関心を示している」の2つにわけています。この段階ではリード情報は把握できておらず、Google アナリティクス等でWeb上の行動が匿名(Unknown)でわかるに過ぎません。
MOFU:Middle of Funnel
「認知」の段階を超え、製品やサービスに具体的に興味を示し、潜在的な見込客になりはじめた段階です。
アドビでは、MOFUを5つのステージにわけています。
- Name:関心の有無にかかわらず保有しているコンタクト情報
- Engaged:コンテンツのダウンロードなど購買行動につながるアクションを取っているコンタクトの数
- Target:自社の販売ターゲットに合致しているコンタクト。学生や競合などはこの時点で排除される。
- MQL:購買状況がある程度進んでいる見込客。リードスコア100位上などの基準で絞り込みを行う
- SQL:MQLの中でインサイドセールスもしくは営業がフォローし、案件化の見極めを行う対象
ホワイトペーパーダウンロードなどをきっかけにコンタクト情報を把握しているため、この5つのステージがMA(マーケティングオートメーション)が活躍する領域です。Targetまでをマーケティングが担当し、MQLやSQLをインサイドセールスが担当しています。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/offer-marketo-dg2ma
BOFU:Bottom of Funnel
購買段階はかなり進み、最後の2ステージになります。
アドビでは、ここから担当部門は営業になります。商談履歴や受注状況をSFAツールやCRMツールで管理しています。
- Opportunity:営業が社内で決められた条件(BANT条件など)が揃い、案件登録できると判断したもの
- Customer:受注
上記のようにファネル上の各ステージを定義し、使うツール、担当部門を決めることで、それぞれのKPIや施策が導き出せますし、活動を振り返り、PDCAを回しやすくなります。
次に、MQLとSQLについて詳細に解説します。
MQLからSQLにする活動
Marketing Qualified Leadとは、「マーケティング部門が創出したホットな(例えば、リードスコア100以上など)見込客」です。
認知のフェーズを経て、「Engaged(コンテンツのダウンロードなど購買行動につながるアクションを取っているコンタクト)」の中から、「Disqualified」と呼ばれる、学生や競合企業を排除するプロセスを経て、「Target(自社の販売ターゲットに合致しているコンタクト)」と認定された見込客に対して、Webサイトのブログ、ソーシャルメディア、メール、展示会、セミナーやウェビナーなどのマーケティング施策を駆使して、彼らの購買意欲を高めていきます。
この活動は見込客の育成(リードナーチャリング)と呼ばれ、一般的にはMarketing Automationツールを使い、ツール上で、見込客の属性や行動によってスコアリングを行い、購買意欲のレベルを計測していきます。
アドビではスコアが100以上の見込客をMQLと定義し、マーケティング部門がMQLになったと判断した場合、インサイドセールス部門に引き継ぎます。
※アドビのインサイドセールスの役割やKPIについて『インサイドセールスとは?基本知識やメリット、成功事例を紹介』で詳しくご紹介しています。
SQLからOpportunityにする活動
MQLの次のステージであるSales Qualified Leadは、インサイドセールスがニーズを確認し、営業に引き渡す見込客です。
インサイドセールスは見込客にメールや架電を行い、ニーズや課題感を聞きながら、提案の機会を窺います。そして、製品やサービスによって見込客の課題解決が実現できると判断した場合、営業担当者との商談をセッティングします。営業に引き渡せる見込客を、SAL(Sales Accepted Lead)と呼びます。
アドビのインサイドセールスチームで使っている用語をご紹介した『MQLとは?インサイドセールスで使われるマーケティング用語』でも解説していますが、アドビではSQLの判断基準を以下の2つとしています。
- アドビ製品で実現できること(機能や価値)を概ねご理解いただいている
- 1を踏まえ、以下のような課題や改善ニーズがある
- 売上拡大
- 売上拡大を狙い、効率的なマーケティングや営業の方法を構築したい
- 商機にない見込客や放置されている失注案件を、次の提案機会に繋げたい
- 既存顧客の維持
- 既存顧客との接点を増やし、顧客ロイヤリティーを高め、解約を防ぎたい
- マーケティング活動の効率化
- マーケティング部門のシステム(Webのアクセス分析、メール配信、ランディングページの作成等)統合による業務効率化
- 売上拡大
SQLの見極めができ、営業に引き渡した場合、「Opportunity(営業が社内で決められた条件(BANT条件など)が揃い、案件登録できると判断したもの)」となります。さらに、成約に至り、取引が決まった場合は「Customer(受注)」とステージが進みます。
営業が直接獲得したSGLの位置付け
ここまでマーケティング、インサイドセールス部門の活動によって、見込客を創出するプロセスをご紹介しましたが、日本の場合は、営業がお客様のところに足繁く通い、直接引き合いを獲得する文化がまだまだ根強くあります。
企業によっては、業界の交流会やセミナーに参加する、ゴルフや飲み会に顔を出す、といった活動により、個人的な人間関係を構築することで、大きな引き合いを開拓するトップセールスがいるかもしれません。
このような、営業が潜在顧客へと直接アプローチし、案件化したリードをSGL(Sales Generated Lead)と呼びます。
テクノロジーが発展したとはいえ、仕事は人と人がするもの。「個の時代」と呼ばれたりもしますが、法人取引でも、企業よりも「企業内の優秀な個人」に顧客が付く事例は多数見られます。営業が人と人の関係性の中で、顧客からの要望を引き出し、案件につなげていくスタイルも引き続き重要なことは間違いないでしょう。
一方、コーポレートエグゼクティブボードが1,400社以上のB2B企業を対象に行った調査では、B2B商材の購買行動のうち、57%のプロセスは顧客が自発的に行動していることがわかりました。顧客は自ら情報収集を行い、課題を解決する方法を見つけ出す力を持ち始めています。インターネットの普及によって顧客の情報行動や購買行動は大きく変化し、マーケティング活動を通して、認知獲得からMQL や SQLへと購買意欲を高めていく活動の重要性は明らかです。
成果を最大化する営業とマーケティングの連携
今回、MQL、SQLをはじめ、マーケティングファネル内の各ステージの流れを解説しましたが、「有望な見込客」に対する定義を明確にまとめている企業は44%に過ぎない、というCSO insightの調査もあり、浸透にはある程度の時間がかかるかもしれません。
そもそも、マーケティングはファネルの上部を担当し、種をまく職業。一方、営業はファネルの下部を担当し、まかれた種から実った果実を刈り取る職業。ホモサピエンスという同じ種族ではありますが、明確に役割と特性が違います。
マーケティングがリードを育成(ナーチャリング)し、見込客として営業に渡しても、まだ商談に進む段階に達していないリードだったなら、営業の生産性が損なわれかねません。Landspaceとアドビが共同で行った調査によると、きちんとリードナーチャリングしない限り、営業部門はリードの最大80%を放置してしまう可能性があることが明らかになっています。しかし、適切にリードナーチャリングすることで、その数は25%まで減少します。
それぞれのステージで用語や目標、役割を定義し、関わる人たちの本来の最終目標である売上や利益、顧客への価値提供の最大化が実現できるようにしていきましょう。
異なる視点を持ちつつも、同じゴールを目指しているはずのマーケティング部門と営業部門。それぞれを密接に連携させ、販売力の強化を目指したいなら、次のガイドが参考になります。
また、マーケティング施策全体の精度を向上させるには、データにもとづいたマーケティング活動の成熟度を高めていく必要があります。データドリブン型マーケティングというアプローチの概念と実践方法については、次のガイドが参考になります。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/offer-003334-data-driven-b2b-marketing
次のステップ
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