MQL(Marketing Qualified Lead)とは?インサイドセールスで使われるマーケティング用語
B2BビジネスやB2Cの検討型商材ビジネスにおける営業プロセスの中で、マーケティング活動を通じたリード創出や見込客育成の概念が普及してきました。また、IT企業やスタートアップ企業を中心に、新規顧客獲得マーケティング部門と営業部門の中間にインサイドセールス(内勤営業)部門を設置し、フィールドセールス(外勤営業)が訪問する前のアプローチを最大化しながら適切な情報提供を行う、営業の分業制を敷く企業が増えてきています。
アドビでAdobe Marketo Engageビジネス領域を担当するチームにおいても、インサイドセールス部門(SDR: Sales Development Representative)を設置し、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスの分業制によるビジネス拡大に努めてきました。
本記事では、アドビで蓄積してきたノウハウやオペレーションの中から、B2Bマーケティング やインサイドセールスの共通言語として使用している用語をいくつかご紹介します。とりわけ、マーケティング部門からインサイドセールス部門へ引き渡す基準の1つであるMQL(Marketing Qualified Lead)について解説します。
なおアドビ社内のオペレーションは年々進化しており、ここで解説するのは以前まで採用していたものです。
目次
- B2Bマーケティングにおける営業とマーケティングのプロセス
- MQLとは?
- ステージ1: SQL
- ステージ2: Lead
- ステージ3: Recycled
- ステージ4: Disqualified
- MAとMQL、インサイドセールスの関係性
はじめに、既に インサイドセールス 部門を設置し、MQLの概念も理解しているものの、自社に合ったマーケティング戦略や目標設定にお困りの場合、参考になる記事があります。こちらも併せてご覧ください。
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B2Bマーケティングにおける営業とマーケティングのプロセス
下図は、アドビ社内で定義した、認知獲得から契約に至る収益サイクルモデルです。アドビのサイトへ訪問した匿名段階から、商談、成約へと、見込客との関係が深まるにつれて、顧客の購買ニーズが高まると想定します。その、自社と顧客の関係を深さをステージとして細分化し、見込客の状態を管理します。
契約前のお客様のことを、日本語では一言で「見込客」としか表現しませんが、見込客のステージを細く分けることで、見込客の関心が現在どの程度なのか?を正確に把握することができます。正確に把握することによって、各々のステージの見込客に寄り添ったご提案や情報提供ができることは勿論のこと、温度感の高い見込客がパイプラインにどのくらい存在するのかが分かり、長期での売上予測の立案も容易になるのです。
見込客の各ステージの定義を下表に示します。
MQLとは?
MQLは、Marketing Qualified Leadの略で、「マーケティング施策を通じて創出された案件確度の高い見込客」のことを指します。案件確度の高さは、リードの質と言い替えることができます。また、温度の高低に例えて、温度の低いリード(コールドリード)、温度の高いリード(ホットリード)」と呼ぶこともあります。アドビのインサイドセールスのオペレーションを紹介している記事では、「インサイドセールスの業務はMQLから商談に繋げること」と説明していますが、言わばMQLはマーケティング部門から営業部門への「この見込客は自社の承認やサービスの購買を検討している可能性が高く、優先度を上げてアプローチをしてほしい」というメッセージなのです。
それでは、マーケティング担当はマーケティング施策を通じて、どのように MQL を創出するのでしょうか?
マーケティング担当は、メールやWEBサイトのコンテンツ、展示会、イベント等のマーケティング活動を通して、見込客へ段階的にアプローチを行い、購買動機を育てていきます。この見込客に対する購買動機を育成する活動を リードナーチャリング と呼んでいます。
見込客が実名化され リードナーチャリング を進めていく過程で、マーケティングオートメーション(MA)ツールのAdobe Marketo Engageを使って スコアリング(重み付け)を行います。スコアリングは、展示会やセミナーへの参加、自社サイトの訪問、ホワイトペーパーのダウンロード、メールの開封、といった行動によって徐々に蓄積されていきます。逆に、一定期間全く動きがない場合には、減点、あるいは0点にリセットします。
MAツールを活用したスコアリングとリードナーチャリングについては、以下のガイドで詳しく解説しています。
MQLの設定例として、アドビでは大きく分けて2通りの方法を採用しています。
- スコアが一定の値を超えた
- 特定のアクションを行った(例: デモ動画を視聴した後に価格表のページを見ている)
一般的には、インサイドセールスが設置されていればスコアリングの基準を低く設定することで、なるべく多くのMQLを引き渡し、逆に、インサイドセールスが存在せずフィールドセールスの人員も限られているような場合には、スコアリングを詳細に設計することで検討度合いの高い見込客のみにアプローチできるような仕組みを作っていきます。
マーケティング担当からインサイドセールスへ引き継がれた MQL に対して、今度はインサイドセールスがマーケティング施策に加えて人手による リードナーチャリング(主にメールや電話、オンラインセミナー等による啓蒙活動)を行い、更に以下の4つのステージへ振り分けていきます。
- SQL (Sales Qualified Leadの略)
- Lead
- Recycled
- Disqualified
次に、4つのステージの定義を説明します。
ステージ1: SQL
SQLはSales Qualifed Leadの略で、インサイドセールスやフィールドセールスがリードの状態を判定し、商談段階に進めることが妥当と判断したリードのことです。リードの状態は、自社の製品やサービスに適合する可能性の高い課題を抱えているかどうかを、直接会話するで判定します。
アドビ社内の例では、SQL の判断基準は以下の2つです。
- アドビ製品で実現できること(機能)がおおむね理解されている
- を踏まえ、例えば以下のような課題や改善ニーズがある
■売上拡大
- 売上拡大を狙い、効率的なマーケティングや営業の仕組みを構築したい
- 商機のない見込客や放置になっている逸注案件を、次の提案機会に繋げたい
■既存顧客の維持
- 既存顧客との接点を増やし、顧客ロイヤルティを高め、解約を防ぎたい
■マーケティング活動の効率化
- マーケティング部門のシステム(自社webサイトや自社アプリなどのデジタル分析、メール配信、ランディングページの作成等)の統合による業務効率化 等
➢ Next Step
SQLはインサイドセールスからアカウント担当営業へ引き継がれ、営業担当は顧客とのミーティングで課題を深堀し、改善提案へと進みます。
SQLの設定については、以下の記事を併せてご覧ください。
ステージ2: Lead
個人レベルで情報収集をしている段階、検討を迷われている段階のような、フィールドセールスから具体的な提案が必要な段階ではないものの、インサイドセールスから個別に継続的な情報提供やご支援をして検討を進めていただきたい見込客を指します。アドビではSFA上で次回の活動予定を残し、アプローチ漏れがないように管理しています。
➢ Next Step
インサイドセールスはLeadへのリードナーチャリングを継続し、SQLへステージを上げられるよう、興味関心を高めていきます。
ステージ3: Recycled
現時点では購買動機を持たない、購買意向が十分ではないと確認できた見込客を指します。例えば、競合サービスを使い始め、当分リプレースが難しい MQL や、別プロジェクトで手が取られ、検討タイミングが半年先になる、といった情報が確認できた MQL を指します。現時点では商機が確認できない MQL でも、半年先や1年先には状況が 変わっている可能性がありますので、Recycled になる理由によって Lead へ戻す期間を設定します。
➢ Next Step
Recycledはインサイドセールスの手を離れ、再びマーケティング担当がリードナーチャリングを行い、購買意向を育成します。
ステージ4: Disqualified
自社にとっての競合企業や学生など、見込客ではないと判断した人を指します。Disqualified を見込客リストの対象から外すことにより、見込客だけにアプローチを集中させることができます。
MAとMQL、インサイドセールスの関係性
Adobe Marketo Engageを使い、見込客の購買までのステージを正確に把握することで、インサイドセールスは検討度合いが高まったお客様に対して優先的にアプローチができます。また、スコアリング情報だけでなく、実際のウェブ閲覧情報やメール開封状況を基に見込客の興味の範囲を推定することで、従来、営業担当が初回訪問で確認するようなレベルの情報(ビジネス目標や課題等)を、インサイドセールスが電話で確認できるようになるのです。初回訪問でお客様の課題に沿ったご提案を、インサイドセールスが自ら行うつもりでヒアリング出来るよう心掛けています。
Adobe Marketo EngageのようなMAツールを使ってリードナーチャリングやリードスコアリングをおこない、MQLを営業担当がフォローするなら、インサイドセールスは設置しなくてもよいのでしょうか?もちろん違います。インサイドセールスには、MAツールや営業担当にはできないこと、具体的には短期間に多くの見込客の方々の「生の声」を確認し、社内へフィードバックを行うという重要な役割があります。MQLは本当に案件確度が高いのか、逆にMQLの基準が厳しすぎて本来アプローチすべき見込客へのアプローチが漏れていないか、このフィードバックは適宜行っていきましょう。一方で、MQLだけにアプローチをすればいいわけではなく、インサイドセールスが自らの経験を活かして新たなMQLの基準を見つけることや、SQLのフィールドセールスへの引き渡し状況によってMQL以外の情報を頼りにアプローチを進めていく必要があります。
インサイドセールスは日々、マーケティング担当と営業担当へ見込客の傾向や状況を共有します。どのように見込客をフォローしていくべきか、何をヒアリングすべきか?何をテーマに提案すべきか? を常に話し合い、マーケティング担当と営業担当との三位一体で、見込客へのアプローチを効率的に進めているのです。
本記事では、アドビのインサイドセールスチームのオペレーション概要を例に取りながら、オペレーション用語をご紹介いたしました。
アドビのガイド「営業とマーケティングの連携による販売力強化」では、より詳細に各用語の解説やマーケティングからインサイドセールスへの引き渡しにおける検討事項、営業とマーケティングの連携方法について解説しています。是非ご覧ください。
次のステップ
MA分野のリーダーであるAdobe Marketo Engageについてより詳しく知りたい場合は、アドビにお問い合わせください。