営業とマーケティングの違いや対立理由とは?連携のメリットと実現方法も解説
営業部門とマーケティング部門は密接に関わる部署であり、連携することにより多くのメリットが得られます。しかし、営業部門とマーケティング部門をわざわざ別に設置して連携を強化させることに、二の足を踏む企業は少なくありません。
この記事では、営業とマーケティングの違いを様々な観点から紹介したうえで、よくある対立理由や連携のメリット、具体的な連携方法について解説します。
目次
「営業」と「マーケティング」には共通点も違いもある
営業部門とマーケティング部門は、「売上の増加」「自社の成長」を最終目的として活動している点では共通しています。
しかし、両者には以下のように様々な違いがあり、どちらか一方だけでは効果を発揮できません。
次章から、営業とマーケティングの違いを詳しく見ていきましょう。
営業とマーケティングの違い(1)役割や仕事内容
営業部門とマーケティング部門は、組織活動における役割や、担当する仕事内容が異なります。
営業の役割や仕事内容
営業部門の役割は、顧客との直接的なコミュニケーションにより、自社の製品やサービスの購入、契約を促すことです。BtoBなら企業(法人)、BtoCなら一般消費者を対象とします。
具体的な担当業務例は、以下のとおりです。
- メールや電話での顧客へのアプローチ
- アポイントの獲得
- 商談(製品やサービスの説明、顧客のニーズや課題を踏まえた提案)
- 契約、製品やサービスの手配
- アフターフォロー
マーケティングの役割や仕事内容
マーケティング部門の役割は、市場調査やプロモーション、ブランディングなどの要素を組み合わせて、自社の製品やサービスが売れる環境を整えることです。営業部門の販売活動が成果に結びつくよう、アシストする役割ともいえます。
具体的な担当業務例は、以下のとおりです。
- 市場調査、ターゲット市場の特定
- 各種データ分析
- 製品やサービスの企画
- 広告、宣伝
- 見込み顧客の育成(リードナーチャリング)
営業とマーケティングの違い(2)アプローチの対象や接点
マーケティング部門は、不特定多数の潜在顧客がいる「市場」を対象とするのに対し、営業部門は特定の顧客を対象とします。つまり、アプローチの対象を「個」として考えるか、「グループ」「層」として考えるかという点が違うのです。
また、営業とマーケティングとでは、顧客と接点を持つタイミングにも違いがあります。顧客が製品を知ってから購入に至るまでのプロセスをモデル化した、「AISCEAS」をもとに見てみましょう。
【AISCEASモデル】
- Attention(注意)
- Interest(興味、関心)
- Search(検索)
- Comparison(比較)
- Examination(検討)
- Action(行動)
- Share(共有)
マーケティング部門と顧客の接点は、製品やサービスを知る「Attention」や「Interest」、情報を収集する「Search」の段階です。顧客の購入意欲が高まったら、営業部門に引き渡します。
営業部門は、製品を比較する「Comparison」から、検討する「Examination」、最終的に契約を行う「Action」までを担います。顧客が類似製品を検討し始めた段階でマーケティング部門から引き継ぎ、商談を通じて顧客の背中を押すイメージです。
ただし、近年ではデジタルマーケティングが普及したことで、メールやwebサイトなどを通してマーケティング部門が顧客と直接コミュニケーションを取るケースも増えています。
営業とマーケティングの違い(3)活動の視点
営業部門は、製品やサービスをできるだけ多く受注し、週次、月次といった短いスパンで利益を上げる必要があります。そのため、顧客ごとに見ると、短期的な視点での活動になるでしょう。
一方のマーケティング部門は、顧客との関係性を構築して長く良好に保つ必要があります。顧客の購入意欲が高まるタイミング、すなわち営業部門につなげるタイミングまで関係性を維持し続けなければならないので、長期的な視点での活動になります。
営業とマーケティングの違い(4)必要な資質やスキル
営業部門とマーケティング部門は、役割や仕事内容の違いによって、求められる資質やスキルも違ってきます。
営業に必要な資質やスキル
優秀な営業と呼ばれる人は、総じて高いコミュニケーション能力を有しています。
多様な価値観を持つ顧客一人ひとりと気持ちよく対話ができることに加え、単に製品を売り込むのではなく、顧客のニーズや課題に寄り添った提案をすることが大切です。そのためには、洞察力や傾聴力も求められます。
また、商談などの場で製品について的確に説明するためには、製品に関する知識が醸成していることや、市場や業界のデータを頭に入れておくことが前提となります。
マーケティングに必要な資質やスキル
マーケティングでは、製品やサービスの認知拡大やブランドイメージの向上、見込み顧客の育成などの役割を担います。
そのため、以下のような幅広い資質やスキルが求められるでしょう。
- 経営者目線での思考力
- 市場や消費者の動きに対する論理的な分析スキル
- 最適な施策の企画力
- ユニークな施策のクリエイティブスキル
- 物事を多角的に捉えて判断するスキル
- 施策の成果の検証スキル
営業とマーケティングが対立する理由
残念ながら、営業部門とマーケティング部門の対立に悩む企業は少なくありません。「営業方針や顧客の扱い方などで意見が折り合わない」「予算の取り合いになる」といった状態が続けば、両部門の本来の機能を果たせなくなってしまいます。
こうした対立の背景には、お互いの立ち位置や役割を理解していないことによる、すれ違いや思い込みがあると考えられます。営業とマーケティングがそれぞれどのような考えを持っているのか、簡単に見ていきましょう。
【営業部門の考え】
- マーケティング部門から確度の低い顧客ばかり送られてくる
- マーケティング部門は現場を理解していない
- 売上に直接貢献しているのは営業部門なのに、マーケティング部門が指示ばかりしてくる
- マーケティング部門は予算に見合った成果を上げていない
【マーケティング部門の考え】
- やっとの思いで育てて引き継いだ顧客に、営業部門がすぐに連絡をしない
- 営業部門は目先の数字だけにとらわれて、顧客に喜んでもらうことを忘れている
- まるで自分たちだけの力で数字を作っているような態度で、営業部門からマーケティング部門への感謝がない
- 営業部門は短期的な売上を追うだけで、中長期的な戦略がない
営業とマーケティングが連携するメリット
対立構造になりがちな営業部門とマーケティング部門ですが、両部門が連携すると、収益拡大につながるメリットが生まれます。
業務効率の向上
部門間の連携体制がないと、営業部門は顧客の状態を把握できません。
優先順位の低い顧客に何度もアプローチしてしまったり、複数の営業担当が同一顧客に連絡してしまったりと、営業部門の業務効率は向上しないでしょう。
対立構造を解消し、マーケティング部門と適切に情報を共有し合うことができれば、営業部門は労力を抑えて契約獲得を目指せるようになります。
機会損失の減少
不十分な連携は、「マーケティング部門が育てた確度の高い見込み顧客を、営業部門が引き継いでタイミングよくアプローチする」という基本的な流れにも支障をきたします。
営業部門が連絡をとったときには、既に顧客の購入意欲は低下し、他社製品の購入を検討していたとなれば、重大な機会損失につながりかねません。
また、既存顧客をリピーターにするための施策も、タイミングを逃せば顧客離れにつながります。機会損失を最小限に抑え、確実に受注するためにも、両部門の連携は非常に重要です。
顧客との関係性の強化
マーケティング部門が見込み顧客を獲得してから営業部門に引き渡すまでには、顧客との様々な接点があります。
マーケティング部門のアプローチ方法や顧客の反応、質問事項などを営業部門と共有しておけば、営業部門の提案が具体的かつ効果的な内容になり、顧客からの信頼度が高まります。
一方で、連携が不十分な場合は以下のようなことが起こり、顧客に不信感が生まれるでしょう。
- 営業とマーケティングの両部門から繰り返し同じ説明をされる
- 各部門の説明内容に一貫性がない
- 問い合わせ内容が共有されていない
上記のようなトラブルから顧客が抱いた不信感により、顧客ロイヤリティが低下する恐れがあります。
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アイデアの創出
営業部門とマーケティング部門が連携することで、情報の伝達がスムーズになります。
顧客と直接コミュニケーションをとりにくいマーケティング部門も、営業部門が現場で聞き出した顧客のニーズなどの情報提供を受ければ、リアルな意見を拾い上げられるでしょう。
その結果、マーケティング部門はよりよい施策を効率的に考えやすくなるとともに、売上につながる創造的なアイデアも生まれやすくなります。
営業とマーケティングの連携方法とポイント
ここでは、営業部門とマーケティング部門がうまく連携するための方法とポイントを、大きく分けて3つの観点から紹介します。
部門をまたいだ対話の場の設置
まずは、営業部門とマーケティング部門が、直接対話するための場を作ります。具体的には、部門を横断するプロジェクトチームを立ち上げ、ミーティングにて顧客の情報共有や意見交換をするとよいでしょう。
プロジェクトチームのメンバーは、ミーティングの内容を自分の部門に持ち帰って丁寧にフィードバックし、役立ちそうな助言があれば実行に移します。
こうした場を定期的に設けることで、両部門の連携がスムーズに進み、仲間意識も育っていくはずです。
受注までのプロセスについての合意
営業部門とマーケティング部門が連携するためには、顧客との最初の接点から受注までのプロセスについて、両部門が共通認識を持っておくことがポイントです。
それぞれが別のプロセスを念頭に置いていると、領域が重複したり、「相手がやっているだろう」という思い込みから、必要なプロセスを飛ばしてしまったりする可能性があります。
「マーケティング部門が何をやっているかわからない」といった不満も、プロセスを可視化し、お互いの領域を明確にすることで解消できるでしょう。
フレームワークでの状況把握
連携体制を構築するうえで、お互いの仕事を知ることはとても有効です。基本的なフレームワークを押さえておくと、思考を整理して現状を正確に把握できます。
ここでは、状況把握に役立つ代表的なフレームワークを4つ紹介します。なお、そのほかのフレームワークについては、以下の記事を参考にしてください。
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3C分析
3C分析は、自社の現状を「顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」という3つの切り口で分析するフレームワークです。
まずは、外部分析にあたる「顧客」「競合」の順に分析し、最後に内部分析にあたる自社について分析をします。
- 顧客:どのような潜在顧客がいるのか、市場規模はどれくらいか、市場の成長性はあるか
- 競合:競合の強みは何か、市場におけるシェアはどれくらいか、顧客の反応はどうか
- 自社:自社の強みは何か、自社が現在とっている戦略はどうか
3C分析を行うと、自社が置かれている状況を客観的に把握でき、他社と差別化できるアピールポイントが明確になります。
PEST分析
PEST分析は、「政治(Politics)」「経済(Economy)」「社会(Society)」「技術(Technology)」という4つの切り口から分析するフレームワークです。
- 政治:事業に関連する法律の規制、政策にはどのようなものがあるか
- 経済:景気や物価の動向はどうか
- 社会:流行は何か、ライフスタイルに変化はあるか
- 技術:事業に影響する新たな技術やツールは開発されているか
PEST分析で外部環境が経営にどのように影響するのかを把握することで、自社理解や顧客理解が深まります。
STP分析
STP分析は、「セグメンテーション(Segmentation)」「ターゲティング(Targeting)」「ポジショニング(Positioning)」という3つの切り口から分析していくフレームワークです。
- セグメンテーション:顧客の属性やニーズなど、様々な軸で市場を細分化する
- ターゲティング:細分化した市場のなかから、自社と相性がよいターゲット市場を決める
- ポジショニング:ターゲット市場における自社の立ち位置を明確にする
STP分析を実施すると、限られたリソースをどこに注げばよいのか、どうすれば他社と差別化できるのかがわかりやすくなります。
4P分析
4P分析は、「製品(Product)」「価格(Price)」「流通(Place)」「プロモーション(Promotion)」の4つの要素を分析するフレームワークです。これら4つの要素を組み合わせることを、「マーケティングミックス」といいます。
- 製品:何を売るか(品質、機能、デザイン、ブランド名など)
- 価格:いくらで売るか(標準価格、値引額、支払条件など)
- 流通:どこで売るか(流通チャネル、流通範囲、輸送方法など)
- プロモーション:どうやって売るか(販売促進方法、広報の体制など)
4P分析は、製品の強みや弱み、自社の戦略などをあらためて見直したいときに活用できます。
なお、本章で紹介した内容を含め、営業とマーケティングの連携については、下記の資料で詳しく説明しています。併せて参考にしてください。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/offer-ma-lead-to-revenue-practice
営業とマーケティングの連携を促進するにはツールの活用が有効
営業部門とマーケティング部門の連携をさらに促進するためには、ツールを活用するのがおすすめです。ここでは、具体的なツールとしてSFA(営業支援システム)やMA(マーケティングオートメーション)を紹介します。
SFA(Sales Force Automation:セールスフォースオートメーション)
SFAは、日本語で「営業支援システム」と呼ばれ、営業担当者の行動を最適化することで生産性を高めるツールです。
個々の営業の活動内容や、商談の進捗状況をリアルタイムで可視化できるので、マーケティング部門が引き渡した顧客へのアプローチが適切に行われているか客観的に把握できます。
受注率低下の要因となっているボトルネックや、失注の原因も見極めやすくなるので、マーケティング部門と営業部門の業務見直しにも活用できるでしょう。
MA(Marketing Automation:マーケティングオートメーション)
MAは、顧客情報の収集と蓄積、見込み顧客の育成、マーケティング施策の分析といった機能を有し、収益につながるマーケティングをサポートするツールです。
MAを導入するとマーケティングの内容や成果が可視化され、優先順位の高い顧客が明確になるので、営業効率が向上します。
また、顧客が特定の行動をしたときにアラートを発信する機能を活用すれば、顧客が「買いたい」「知りたい」と思ったタイミングを逃さず、営業活動につなげることが可能です。
MAについては、下記の資料で詳しく説明しています。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/offer-marketo-dg2ma
部門間の連携を効率的に進めるアドビの「Adobe Marketo Engage」
アドビが提供する「Adobe Marketo Engage」は、営業部門とマーケティング部門の連携を助ける豊富な機能を有するMA製品です。
例えば、営業とマーケティングの両部門が収集した顧客情報を一元管理し、顧客を追跡しながら、ステージやステータスに応じたフォローを漏れなく行えます。
また、先述したSFAやCRM(顧客管理システム)ともスムーズに連携し、データを同期可能です。
Adobe Marketo Engageを活用し、営業部門とマーケティング部門の連携を深めましょう。
ツールを導入し、営業とマーケティングの連携を深めましょう
営業部門とマーケティング部門は、それぞれの役割やアプローチの対象などに応じて、売上を増加させ、自社を成長させることを目指して活動しています。
すれ違いや思い込みによる対立を避け、両部門が連携することで、業務効率の向上や機会損失の減少、顧客との関係性の強化といったメリットを得られます。
連携を促進する際には、アドビのMA製品「Adobe Marketo Engage」をぜひご活用ください。
(公開日:2021/10/23)