マーケティングファネルの作成方法
マーケティングファネルは、顧客の認知からコンバージョンに至るまでの過程を表しています。
優れたマーケティングファネルは、一夜にして生まれるものではありません。それは統合された戦略を策定し、営業部門とマーケティング部門の円滑なコミュニケーションを促進することから発展します。一方、それは時間と労力を要するものの、マーケティングファネルを構築することが、「見込み顧客」を「顧客」に変えるカギとなります。
このページでは、次のことについて説明します。
マーケティングファネルとは?
マーケティングファネルは、まず幅広いオーディエンスをターゲティングして、リードを顧客に変換する方法のことです。 どれくらいの規模を対象とするかは、予算と潜在的な見込み客数によって異なります。
時に、「セールス」や「コンバージョン」ファネルと呼ばれ、それは顧客体験を理解するためのモデルを提供し、オーディエンスのニーズにより適切に対応することができます。また、ファネル内の問題領域を特定して対処するのにも役立ち、途中で失われるリード数を減らすことができます。
理想的には、各ターゲットオーディエンスが離脱することなく、カスタマージャーニーの最終ステージに達することですが、オーディエンスは下層に行くことで必然的に減少します。「ファネル」はそのことを示唆しています。
マーケティングファネルは、次の4つのステージがあります。
マーケティングファネルは、まず幅広いオーディエンスにリーチし、リードが誰で、何を購入したいと考えているのか、また今後もリピート購入する意欲があるかどうかを直接、彼らの詳しい情報を把握することで、そのリードの数を絞り込みます。マーケティングファネルの各ステージがどのように相互作用するのかを検証し、次に各ステージを最大限に活用するための個別戦略を図るのが、ベストなやり方です。
このマーケティングファネルの主な使い方のひとつは、ファネルのどこでオーディエンスが躓いているのかを特定することです。これを見つけることで、課題への対処がとても簡単になります。
なぜ、マーケティングファネルを使うのか?
マーケティング戦略の維持
潜在的な見込み客がマーケティングファネルのどこで脱落しているかを特定できれば、マーケティング戦略の欠点に、直接対処する戦略を実行できるようになります。
一貫したプロモーション
マーケティングファネルの各ステージへの理解が深まるほど、各ステージに適した戦略を立てられるようになります。
売り上げの増加
マーケティングファネルを使用する戦術を導入すれば、見込み客の一人ひとりを販売窓口まで、上手に誘導させることができます。
時間と労力の節約
潜在的な見込み客のマーケティングジャーニーを把握し、ファネルの各ステージのマーケティング戦略を事前に決定しておけば、見込み客が離れていった際の対応策を事前に講じることができます。
販売予測
マーケティングファネルの各ステージにおける、オーディエンスの規模を把握しておくと、将来の販売数や販売金額をより正確に予測することができます。
顧客維持
既存顧客の維持は、マーケティングファネルの重要な段階です。顧客生涯価値を最大限に高めるには、オーディエンスがファネルの底に到達した時点で顧客となり、その顧客との関係を再び構築し、育成するための明確な計画を戦略に盛り込む必要があります。これにより、継続的な顧客との関係を維持し、顧客とブランドとのつながりを強化することができます。
マーケティングファネルのステージ
トップファネル
マーケティングファネルの上部は、できるだけ幅広い、多くの潜在的な見込み客を獲得する必要があります。
このステージでは、マーケティング部門は主に企業の製品やサービスに対する関心を喚起し、情報を共有する責任を負います。トップファネルから潜在的な見込み客の全員が先に進むわけではありません。コンバージョンに達する可能性が高い見込み客にのみに焦点を当てます。
そのためファネル上部はできるだけ広くすべきです。マーケティング戦術には、メールキャンペーン、検索エンジン最適化(SEO)、コンテンツマーケティング(ブログ投稿、動画、電子ブック、ホワイトペーパー等)などがあります。等)などがあります。
特定の各ステージには、以下の情報が含まれます。
- 見込み客の名前。 見込み客がマーケティングファネルに乗り、個人名がデータベースに登録された時点で取得できます。
- 見込み客の反応。 見込み客のリンククリックやメールの開封等、特定のアクションを実行した人は、ファネルの次のステージへ進みます。
- 見込み客のターゲット。 この段階では、リードスコアリングを採用して、オーディエンスが適格な潜在的な見込み客であるかどうか、また今後のマーケティング活動が必要かどうかを判断する必要があります。
トップファネルマーケティングは、購入の準備ができていない見込み客の認知度を高めることを目的としています。Googleの検索結果表示画面で上位に表示されたり、SNS上で支持されるほど、問題を解決したり、魅力的で興味深いオンラインコンテンツを制作します。
ミドルファネル
見込み客がファネルの中間に到達すると、購入が期待できるリードへと変わる可能性が高まるので、マーケティング部門は営業部門への引き継ぎの準備を始めるべきです。
営業担当者はリードに個人的に連絡を取るだけでなく、必要に応じてリードをマーケティング部門に戻し、さらに育成できるようにするべきです。
このステージでは、多くのリードはまだ購入の準備ができていませんが、営業担当者との個人的なコミュニケーションは、良好な関係を育む上で依然として重要です。
ミドルファネルは、次の2つのステージに分けることができます。
- リード。 ここから貴社に本当に関心を持つターゲットが特定され、真のリードとなります。営業担当者と直接やり取りをした後、次のステージに前進させることも可能です。
- セールスリード。 リードがセールスリードとなるには、購入する準備ができている適格な購入希望者であることが条件となります。そうでない場合は、リードをマーケティングに返して、さらに育成に努めるのがベストです。
ミドルファネルのコンテンツは、リードの購入意欲を高める必要があります。そのため、このステージでは、ダウンロード可能な電子ブック、貴社サイトのウェビナーへの招待、その他の教育コンテンツ等、より詳細な情報をリードに提供します。
ボトムファネル
マーケティングファネルの最終段階では、最も有望なリード、つまり購入段階に進む準備ができているリードや、将来の購入につなげるために維持したいリードを特定します。
いずれにしても、ボトムファネルでは、リードとの直接的なやり取りを促進します。試用のオファー、プロモーションコード、製品のデモなどを提供します。
営業部門は、顧客離れにつながるような強引な行動を回避しながら、リードが購入者になるのに必要なコンテンツを提供して、積極的に働きかける必要があります。
カスタマージャーニーの最終段階は、複数のステージに分けることができます。
- 機会。 これは営業部門とさらなる会話を進める準備ができており、積極的に購入を希望している段階です。
- 顧客。 リードが顧客に変わったとしても、それは取引関係の始まりに過ぎません。顧客との取引を維持するためにその関係を深め、顧客を育成し続ける必要があります。
BtoBとBtoCのマーケティングファネルの違い
BtoB
BtoBでは、例えば、複数の意思決定者に対して、貴社製品を購入するように説得する必要があるため、セールスサイクルが長くなりがちです。一般に、企業向けに販売する際にはより多くの情報を提供する必要があり、個人相手と違って衝動買いやバイヤーの欲求のみで購入につながることはあまりないと言えます。
BtoC
BtoCのセールスファネルは、企業、チーム、部門ではなく、個人を優良顧客に変えることに重点を置いているため、短くなることが多いです。BtoCマーケティングでは、多くの場合、感情的なつながりを生み出そうとします。そのため、多くの会社はSNSやTV等のチャネルに多くの広告費等を投じます。
マーケティングファネルの作り方 - 主な戦略
マーケティングオートメーションの活用
マーケティングオートメーション(MA)は、商談確度の高い見込み客を効率的に創出し、ユーザーエンゲージメントを追跡して、リードを育成するのに役立ちます。
マーケティングオートメーション(MA)ツールは、反復的なマーケティング施策を自動化するだけでなく、マーケティング部門が情報過多に悩まされることなく、自信を持ってデータに基づいた意思決定を行えるようにします。CRMと統合して、マーケティングチームへリードに関する正確な情報をリアルタイムで提供するので、カスタマージャーニーの各段階をパーソナライズでき、リードが好むコンテンツを活用してターゲティングするのに役立つMAツールを探してください。
リードスコアリングの実践
マーケティングファネルに見込み客が入ったら、営業とマーケティング施策を介してROI(投資利益率)を最大化するために、どの見込み客が最もコンバージョンする可能性が高いかを判断するための明確で一貫した方法が必要です。
そこで重要なのが、リードスコアリング(リードの価値を評価するランクシステム)を実践することです。これは、見込み客の推定価値に基づいて数値スコアを算出します。
理想的なリードプロファイルを作成するための様々な主要要素に基づいて、リードスコアを算出する必要があります。
デモグラフィック要因
デモグラフィック要因により、貴社はどのような顧客層に販売しているのかを正確に把握することができます。関連する特性には、次のようなものがあります。
- 役職
- 職務
- 購買権限
- 社歴か、商品やサービス領域の経験年数
- 使用メールアドレスの種類
- SNSへの参加とその影響力
- 所属
- キャリアへの関心
会社特有の要因
これらの要素は対象となる会社に関連しています。BtoBマーケターは、関連する意思決定者へのマーケティング方法を決定する際に、対象となる会社における以下の特性に細心の注意を払う必要があります。
- 従業員数
- 会社収益
- 業界
- 財務的実行可能性
- 所在地
行動ベースの要因
行動ベースの要因は、見込み客がとった行動に基づいており、リードスコアに好影響、または悪影響を与える可能性があります。ポジティブな影響を与える行動には、ウェブページのリピート訪問、メール内のリンククリック、自社のブログの購読などがあります。一方、ネガティブな影響を与える行動には、メルマガの購読解除、30日以上の貴社ウェブサイトにアクセスしていない、SNSの投稿で貴社に対して否定的なコメントをする等があります。
適切なコンテンツの組み合わせ
様々なタイプの見込み客は、多様な形式のコンテンツを受け入れます。ブログ投稿のみを見込み客に提供すると、電子ブック、ガイド、レポートなどの長文のコンテンツを探している見込み客を逃してしまいます。また、テキストコンテンツのみを制作すると、動画やライブストリームなどの視覚的なコンテンツを好む見込み客に無視されてしまいます。
コンテンツを制作する際は、主な目標は販売ではなく、見込み客の関心を引き付け、彼らに情報を伝えることであることを理解してください。長々としたセールストークだけのコンテンツに興味を持つ見込み客はほぼいません。その代わりに、コンテンツ内の適切な場所に、関連するCTA(コール・トゥ・アクション)を設置しましょう。
見込み客が興味段階にいる場合、貴社の関連する製品やサービスを簡単に紹介した、有益なブログ投稿を提供しましょう。見込み客が貴社を知り、貴社の見解を信頼するようになると、そのCTAにより反応を示すようになります。
引き継ぎミスを避けるための調整
引き継ぎとは、ボトムファネル付近でマーケティング部門から営業部門へと、見込み客からら強力なリードとなった人を引き渡す重要な瞬間です。
チームリーダーは、両部門のすれ違いを避けるため、戦略セッションを実施する必要があります。例えば、マーケティング部門が適格なリードの全体像をある程度把握していたとしても、営業部門の見解と一致していない可能性があります。
マーケティングと営業間で常にコミュニケーションをとることで、引き継ぎ時のすれ違いを回避しましょう。また、両部門が、適格なセールスリードの要素に関する定義に同意する必要があります。
リードが購入する準備ができていることを示す行動パターンを特定するために、マーケティング部門と営業部門が共同でデータを監視する必要があります。両部門の定期的なやり取りを促進することで、誤解を防いで両者の取り組みを強化できます。
ファネルにおける顧客の移動パターンを把握
カスタマージャーニーを整理すると、マーケティング部門とセールス部門のコミュニケーションが、これまで以上にスムーズになります。両部門の共通言語を確立することで、同じデータと戦略を使用して、見込み客やリードをファネルの下方に導くタイミングや、信頼関係の構築と育成する目的で、ファネルの上方に戻す必要があるかどうかを特定できます。
マーケティング部門とセールス部門の連携を強化することで、ファネルの各ステージの影響力が飛躍的に高まります。
カスタマージャーニーを整理するには、理想的な見込み客やリードが実際の成果のバランスを取る必要があります。見込み客やリードがコンテンツにどのようにエンゲージし、インタラクションを通じてどのように行動するのかを把握しましょう。
同時に、質問することを恐れてはいけません。ファネルを抜けた見込み客やリードは、現在のニーズや、ファネル内での体験が彼らの意思決定にどのような影響を与えたのかについて、率直にフィードバックしてくれることが多いからです。
各ファネルの測定方法
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コンバージョン率‐ この指標は各マーケティングチャネルのパフォーマンスを評価するのに役立ちます。コンバージョン率(CVR)を算出するには、コンバージョン(ファネルの次のステージに移行した見込み客やリード)の合計数を、現在のステージの見込み客やリード、または訪問者の総数で割ったものを100倍して、パーセンテージで表します。例えば、ランディングページのキャンペーンを実施し、1,000人の訪問者がページにアクセスしたとします。そのうち、150人がフォームを記入し、eBookをダウンロードしました。これはファネルの中間段階のアクションです。CVRは次のようになります。
CVR = (150 ÷ 1,000) × 100 = 15%
これは、訪問者の15%が次の段階に進んだことを意味します。チャネル全体でCVRを追跡することで、最も高いエンゲージメントを生み出している戦略を特定するのに役立ちます 。
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エントリーソース - トラフィックの発生元
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ステージ滞在時間 – 見込み客やリードが各ファネルステージに留まっている時間
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ステージからの離脱 - ファネルを離れる見込み客やリードの数
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コンテンツエンゲージメント率 - 最も多くのコンバージョンと収益を生み出しているコンテンツ
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商談化率 - 現在のファネルにいる見込み客やリードの数
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成約率 - 別名「勝率」で売上につながる商談の割合
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顧客獲得単価(CPA)‐ CPAは特定のアクションを完了するための総コストです。最初の接点から最終的なコンバージョンに至るまで、1人の顧客をマーケティングファネルに誘導する際に発生するコストです。
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ライフタイムバリュー(LTV)‐ 顧客が初めて購入した後、生涯にわたって何度も購入してもらうには、どうすればよいでしょうか? 関連性の高い製品、追加機能、定期購入は、LTVと利益の拡大につながり、将来のマーケティング戦略の策定、予測、予算の決定にも役立ちます。
マーケティングファネルの例:BtoBとBtoCの比較
BtoBマーケティングファネル
- BtoBマーケティング責任者は、自社の改善に何らかの形で役立つ製品やサービスを探すために詳細なリサーチを行う専門家になる傾向があります。その結果、セールスサイクルが長くなる傾向があります。
- 見込み客やリードがいつファネルから抜けたとしても、BtoBやBtoCのマーケターは貴重な情報を確保することができます。重要なのは、その情報を最大限に活用し、将来的にファネルから離脱する見込み客やリードの数を減らすことです。
- BtoBのマーケティングファネルでは、感情に訴えたり、気まぐれで決定を下したりすることはありません。BtoBで売上につなげるためには、見込み客やリードがビジネス上のニーズに最も適したものを決定したときです。ほとんどの場合、これらの見込み客やリードの前に立ちはだかる問題はデジタル露出を通じ、直接コミュニケーションするのに必要なレベルの信頼関係を確立することです。
- BtoBマーケティングファネルでは、Googleで貴社の商品やサービスを検索し、貴社のランディングページを見つけた見込み客に対して、無料のebook、またはガイドをダウンロードするように促します。見込み客は後日、製品に関するさらに詳細なレポートをダウンロードするために再度、貴社のウェブサイトにアクセスします。商品やサービスの詳細、企業情報、競合他社についてさらにリサーチした後、デモをリクエストするため、貴社に連絡をします(あるいは営業担当者がこの見込み客に連絡を取る場合もあります)。営業は、CRMやマーケティングオートメーションツールのサポートで、既に作成された包括的なプロファイルに基づいて、顧客のニーズに適した製品パッケージを提示することができます。
BtoCマーケティングファネル
- BtoCの見込み客は、まるで自分が何を求めているのか分かっていなかのように、マーケティングされることが多いです。例えば、BtoCのマーケターが顧客に対し、詳細なレポートを提供することはほとんどありません。彼らは高評価や注目を集める広告、感情に訴えるストーリーで見込み客にアプローチする傾向があります。
- BtoCの見込み客は、ウェブサイト上部のバナー広告をクリックしてカスタマージャーニーが始まり、店舗のウェブページのポップアップでメールアドレスを入力します。その後、商品を「お気に入り」に保存し、後で購入するかどうかを検討します。フォローアップメールを受け取った後、後日、見込み客は店舗のウェブページに再度アクセスし、買い物かごにその商品を追加、フォローアップメールを通じて受け取ったプロモーションコードを使用して、その商品の決済を行います。
- BtoCマーケティングファネルでは、見込み客がオンラインストアを訪れて商品を閲覧するように促すとともに、見込み客にプレッシャーを与えることなく、購入意欲を育むためのシナリオを作成します。もし、見込み客の気が変わったら、後で購入するためにその商品を保存しておくこともできます。
見込み客やリードがいつマーケティングファネルから抜けたとしても、BtoBやBtoCのマーケターにとって貴重な情報は残されています。重要なのは、その情報を最大限に活用し、将来的にファネルから離脱する見込み客やリードの数を減らすことです。
マーケティングファネルをMarketo Engageで構築し、最適化を
Adobe Marketo Engageは、マーケティングファネルの各ステージを最大限に活用するためのリード管理ツールを提供します。このプラットフォームでは、見込み客やリード、そして顧客に関するデータの分析、チャネルにまたがったマーケティングコンテンツのパーソナライズ、マーケティング予算の管理などを行うことができ、マーケティング部門と営業部門のプロセス全体を可視化することができます。Marketo Engageを活用することで、ターゲットとするオーディエンスを決定し、そのニーズに合わせたマーケティングキャンペーンのカスタマイズが可能です。
このMarketo Engageの概要動画をご覧いただき、Marketo Engageが効果的なファネルマーケティング戦略の策定能力をどのように強化できるかをご確認ください。