カスタマージャーニー
カスタマージャーニーとは、顧客になる前のブランド認知から始まる一連の段階のことであり、最終的には顧客ロイヤルティを構築する段階にまでつながります。
重要ポイント
● 顧客のブランド体験は、カスタマージャーニーと、その中で起こる一連のやり取りで構成されます。
● マーケティングにおける優れた顧客体験とは、顧客が役に立ち、有意義であると感じる適切なコンテンツやインタラクションを構築して提供した結果を表します。
● ブランドは、顧客が必要とするものを必要なときに提供する一方で、新製品やアップグレードを適切なタイミングで提供する必要があります。
● カスタマージャーニーには明確な終わりはありません。非常にロイヤルティの高い顧客であっても、ブランドは常に顧客を満足させることを目指す必要があるからです。
● 経験豊富なマーケターは、優れたカスタマージャーニー計画には常に改善の可能性があることを理解しています。特に顧客のニーズに耳を傾けることで、必ず最適化の余地を発見できます。
カスタマージャーニーに関する様々な疑問に、Kevin Lindsayが回答します。Kevinは、アドビのデジタルエクスペリエンス(DX)部門のプロダクトマーケティングディレクターです。同部門のプロダクトマーケティングの責任者を10年以上務めています。Kevinは、最適化、パーソナライゼーション、デジタルアセット管理、カスタマージャーニー管理などに注力しています。
もくじ
- 顧客体験はどのようにカスタマージャーニーと関係しているのでしょうか?
- カスタマージャーニーにはどのような段階があるのでしょうか?
- マーケターはどのようにカスタマージャーニーを計画するべきでしょうか?
- B2BとB2Cのカスタマージャーニーの違いは何でしょうか?
- カスタマージャーニー計画は、常に更新し続ける必要がありますか?
顧客体験はどのようにカスタマージャーニーと関係しているのでしょうか?
顧客のブランド体験は、カスタマージャーニーと、その中で起こる一連のやり取り(顧客接点)で構成されます。ブランド体験の中で、生活環境やブランドとの関係性に応じて、顧客は複数のジャーニーを経験するかもしれません。
マーケターの中には、「顧客体験」のことを、特定のwebページなどのようなコンテンツのことだと考えている人もいます。顧客がコンテンツを体験できるのは事実ですが、顧客体験はコンテンツと同義ではありません。マーケティングにおける優れた顧客体験とは、パーソナライズされた、顧客が役に立ち、有意義であると感じる適切なコンテンツやインタラクションを構築して提供した結果を表します。
カスタマージャーニーにはどのような段階があるのでしょうか?
例えば、あなたがニッチなブランドの潜在顧客で、左利きの人のためのペンを作っているブランドを探そうとしているとします。カスタマージャーニーは、あなたがそのブランドを初めて認知したときに始まります。まず、ネットで検索してそのブランドのソーシャルメディアのページを発見し、顧客になろうかと思いながら商品を閲覧し始めます。そして、何か購入するか、左利き用ペンのニュースレターに登録します。
マーケター側では、マーケティング部門が、コミュニケーションと登録について策を練っています。ある人がブランドと初めて合意の上でやり取りをおこなったとき、マーケターはその利用者がスムーズに新規顧客になるように努力します。例えば、「アカウントを設定しましたか?アプリはダウンロードしましたか?商品を使い始める準備はできましたか?」といった、ニーズに見合うような質問をします。
顧客体験はスムーズに進むとは限りませせん。例えば、左利き用のペンを注文したものの、ペン先を出す方法がわからないとします。そのような場合は、カスタマーサポートに連絡する必要があります。簡単な質問には簡潔な回答で、複雑な問題にはしっかりと安心感のある方法で対応してほしいものです。このカスタマーサポートとのやり取りも、カスタマージャーニーのひとつの段階と考えられます。
カスタマージャーニーのもうひとつの段階は、ブランドによるアウトリーチです。例えば、あなたが左利き用ペンに満足し、レビューを残したとします。ブランドは、あなたの顧客満足度に気づき、左利き用のらせん綴じノートに関するメールを送信します。興味を持ったあなたは、そのノートを注文し、左利き用ペンとの相性が抜群であることを発見します。あなたは、自分が所属する地元の左利きクラブへのプレゼントとして、この店から左利き用の商品をさらに購入するようになり、新商品の左利き用鉛筆が発表されたときには、大いに興味を引かれます。その時点で、あなたはこのブランドと、カスタマーサポートも含めて十分に質の高いやり取りをしており、常連客になっています。
この左利き用ペンの例は、顧客が常連客になった後も、カスタマージャーニーのあらゆる接点で、ブランドが顧客との関係を育成する必要があることを示しています。ブランドは、顧客が必要とするものを必要なときに提供する一方で、新製品やアップグレードを適切なタイミングで提供すべきです。
カスタマージャーニーには明確な終わりがありません。非常にロイヤルティの高い顧客であっても、ブランドは常に顧客を満足させることを目指す必要があるからです。ブランドは、顧客満足とロイヤルティの見返りとして売上を得るだけでなく、常連客がブランドを推薦して認知度を高めてくれれば、無料の宣伝効果を得ることもできます。例えば、左利きクラブの会員たちがその特別なプレゼントをとても気に入り、どこで入手したのかと尋ねたため、この素敵なブランドのことを教えたとします。その結果、クラブの全員がそのブランドを認知し、自分自身のカスタマージャーニーを開始するというサイクルが生まれます。
マーケターはどのようにカスタマージャーニーを計画するべきでしょうか?
マーケターは、カスタマージャーニーに、画一的なテンプレートを使うべきではありません。特定のデモグラフィックにもとづいたものであれ、個々のペルソナにもとづいたものであれ、柔軟で個々のタイプに合わせたカスタマージャーニーを計画する必要があります。
カスタマージャーニーマップの作成を開始するには、顧客接点やうまくいかないパターン、カスタマージャーニーの各ステップに至る具体的なルートを調べるのが最善です。特定の購入者のペルソナを示すパターンを繰り返し確認できたら、それを別のカスタマージャーニー計画に適用できるかもしれません。
マップ作成プロセスを開始するもうひとつの方法は、目標を設定することです。自社のブランドは何をしようとしているのか、どのように顧客を獲得するのか、これまでの経験からブランドの典型的なカスタマージャーニーはどのようなものか、潜在顧客を示す利用者の行動にはどのようなものがあるか、といったことを検討します。
顧客の長期的な行動を記録し、分析する唯一の方法は、データを利用することです。例えば、ある小売店のwebサイトで潜在顧客がジョギングシューズを購入し、会員特別割引に申し込む際、電子メールを登録したとします。その電子メールの利用者が、オーガニックスポーツドリンクのトライアル購入を申し込んだ場合、そのメールアドレスには、この人物が熱心なランナーであることを示すデータが添付されています。以前に同じ企業の他のブランドとやり取りしたことがある場合、そのデータも揃っています。ブランドは、これらのジャーニーをマッピングし、特定の顧客がどのような段階を辿るのかを予測することができるので、優れたカスタマージャーニーの実現に向けて、顧客体験を最適化することができます。
顧客体験の最適化の例として、次善の対応や次善のオファーを予測することが挙げられます。顧客層をまたいで、カスタマージャーニーを改善する方法が複数見つかる可能性があります。マーケターは、顧客の行動の変化に対応し、それに応じてカスタマージャーニーマップを更新する必要があります。
そのためには、顧客の視点を理解し、顧客からのフィードバックに積極的に耳を傾けることが重要です。これは、予想外のアクションに対応することでもあります。例えば、ブランドのカスタマーサービスとのやり取りに不満を持った常連客が、すぐにその企業との関係を絶ち、webサイトに辛辣なレビューを残すかもしれません。その企業では、カスタマーサービスにおける質の低い顧客体験について、予想も把握もしていなかったかもしれません。しかし、顧客が関係を断った後にすぐに行動を起こさなければ、その顧客を永久に失うことになるでしょう。マーケターは、過ちを正し、顧客との関係を維持するために、パーソナライズされたオファーやメールの計画を立てることができます。
B2BとB2Cのカスタマージャーニーの違いは何でしょうか?
回答:B2BとB2Cの大きな違いのひとつに、顧客の購入プロセスと、それに対応するマーケターのエンゲージメントプロセスがあります。B2Bでは、カスタマージャーニーのある段階で、関わる人が変わります。カスタマージャーニーを開始した人が、中間の段階や顧客ロイヤルティの段階を通過するとは限りません。
例えば、B2Bバイヤーが、自社に導入するソフトウェアをあるソフトウェア企業から購入するとします。そのソフトウェア企業は、導入されたソフトウェアが最終的にはその会社全体で使用されるように、多くの関係者に連絡を取ることに努めます。しかし、この目標を達成するためには、的確なタイミングで適切な人を巻き込み、入念に計画されたカスタマージャーニーへと顧客を導く必要があります。これは、関係者が、購入した商品に満足して価値を実感しているか確認することでもあります。このプロセスは、B2Cのカスタマージャーニーとは大きく異なります。通常、大手のB2Cブランドでは、ひとつのアカウントに多額の売上を期待してはいないため、顧客一人ひとりとの緊密な関係を維持することはありません。
このような複雑な購入プロセスは、B2Bマーケターにとって難しい面もありますが、簡単な面もあります。B2Bブランドは一般に、何百万人もの個々の消費者や様々な市場力学を気にする必要がないからです。また、通常、B2Bでは、サイクルの終わりに、維持や更新のためにより多額の投資が必要になります。
カスタマージャーニー計画は、常に更新し続ける必要がありますか?
経験豊富なマーケターは、優れたカスタマージャーニー計画には常に改善の可能性があることを理解しています。特に顧客のニーズに耳を傾けることで、必ず最適化の余地を発見できます。
また、カスタマージャーニーに終わりはないということも覚えておくことが大切です。たとえある人が顧客でなくなったとしても、質の高いやり取りをおこなうために、ブランドができることは必ずあります。私たちは、たまにしか購入しない顧客でも、ブランドとの関わりをある程度は保っていたいと考えていることを発見しました。適切なレベルのエンゲージメントを見つけることが鍵です。役に立つコンテンツや便利なヒントを提供したり、あるいは顧客の行動に注意を払っていることを示すだけでも十分な場合があります。
顧客体験は一人ひとりで異なります。ある人は不満を感じているかもしれず、ある人は商品を気に入り、ポジティブなレビューや評価を残してくれるかもしれません。そして、満足でも不満足でもない中間の顧客もいます。そうした人たちから連絡は来ないかもしれませんが、それでも連絡を取り、やり取りの機会を作るべきです。
あらゆる企業が、顧客に注意を払う能力を備えているわけではありません。だからこそ、企業はテクノロジーの力を借りて、その作業を少しでも容易にする必要があるのです。カスタマージャーニーを計画することは重要ですが、同様に、反応を測定してフィードバックを得る方法を持つことも重要です。
大切なことは、顧客との関係を維持するとはどういうことかを考え、連絡を保つこと、役に立つこと、そして約束を果たすことのバランスを適切に微調整することです。