クッキーレス
クッキーレスとは、企業が3rdパーティCookieに依存しないマーケティング手法を採用することです。Cookieは、サイト訪問者の利用するブラウザーごとに、サイトに関する何らかの情報を記録したものです。消費者のプライバシー保護を目的としたwebブラウザーのポリシー変更により、3rdパーティCookieのサポートが廃止されることが決定しています。 【英:Cookieless】
もくじ
- クッキーレスとはどういう意味ですか?
- 実際にCookieは完全になくなるのでしょうか?
- クッキーレス時代はマーケターにどのような影響を与えるのでしょうか?
- マーケターはどのようにしてクッキーレスの世界に備えることができますか?
- 3rdパーティCookie以外に、企業はどのような種類のデータを利用できますか?
- クッキーレスは消費者にどのような影響を与えますか?
ポイント
- Cookieとは、Google Chrome、Safari、Firefoxなどのwebブラウザーで使用されるデータトラッカーのことです。Cookieを利用することで、企業がマーケティングに用いる、利用者に関する情報を収集できます。
- Cookieの概念が完全になくなるわけではありません。1stパーティCookieは、自社のwebサイトで引き続き利用できますが、3rdパーティCookieは、主要なwebブラウザーでサポートされなくなります。
- 3rdパーティCookieを利用できなくなることで、マーケティングは、利用者の同意にもとづいて収集された1stパーティデータを中心とするように、方向転換する必要があります。
クッキーレスに関する様々な疑問に、Asa Whillockが回答します。Asaは、Adobe Digital Experienceの製品運用および戦略担当の責任者で、ソフトウェアのライフサイクルとコミュニケーションを担当しています。アドビに入社して約15年、技術分野の専門家として、またエンジニアとして、その才能を発揮しています。
クッキーレスとはどういう意味ですか?
クッキーレスとは、マーケターが3rdパーティCookieに依存することのないマーケティング手法を採用することを意味しています。Cookieは、消費者の個人識別情報を含むデータの断片です。
クッキーレスの世界の考え方を理解するには、この大きなエコシステムの変化に関わる3つの異なる層の人々を考察するのが最適です。
ベースとなる層は消費者です。消費者は、積極的なマーケティングや的外れなターゲティングなど、節度をわきまえないデジタルマーケティング活動に常々悩まされてきました。しかし、これまで消費者には対抗する手段がありませんでした。企業はそのような消費者の不満を理解するようになり、顧客体験を構築する際に考慮するようになっています。さらに、法律が成立したことで、企業がデータを自由に使用するのではなく、消費者自身が使用方法について理解し、制御できるようになりました。
第2の層は、アップルやグーグルのようなwebブラウザーを運営するテクノロジー企業で、あらゆるデジタルマーケティング活動を支えるテクノロジー基盤に影響を与える3rdパーティCookieの制限を実施しています。
エコシステムの最後の層は、これらのテクノロジーの変化に対応するマーケターです。マーケターにとって、クッキーレスの世界に備えることは、未知のユーザーを既知の顧客に変えるマーケティング活動のために新たなアプローチを模索することです。それによって、マーケティング部門は、既知の顧客プロファイルに結びつく永続的な識別情報にもとづいてパーソナライズをおこなえるようになります。
実際にCookieは完全になくなるのでしょうか?
Cookieが完全になくなるわけではありません。消費者は、必ずしもCookieがなくなることを望んでいませんが、プライバシーに関する懸念が尊重されることを望んでおり、いくつかの重要な変更が行われる予定です。3rdパーティCookieに最も大きな変化があり、パーソナライゼーションや新規顧客の獲得に影響があります。
クッキーレス時代はマーケターにどのような影響を与えるのでしょうか?
マーケターには様々な責任が課せられています。マーケターは、認知からエンゲージメント、コンバージョン、長期的な関係の構築に至るまで、セールスファネルの様々な段階をまたいで顧客を育成する責任を有しています。今回のCookieの変更で最も影響を受けるのは、企業とのやり取りにおいて、利用者が連絡先情報を提供していない初期の段階です。今日、マーケターは、自社のサイトを閲覧した未知の利用者を識別してデジタル広告を提示し、再訪問を促すために3rdパーティCookieを利用しています。
マーケターは、これまでもテクノロジーの変化に適応してきました。しかし、今回の変化は、利用者が見込み客から顧客に転じる前の段階に影響を与えるため、より破壊的であると言えます。
このことをよく理解するために、大手ホームセンターが、デジタル広告を使用してDIY用品のマーケティングを開始しようとしていると考えてみてください。まずは、マーケティングの対象者を定めるために、外部ベンダーからデータを購入して、DIY関連のコンテンツに関心を持つ消費者や、自社商品に最も興味を示す消費者を特定するのではないでしょうか。このデータは多くの場合、3rdパーティCookieを利用して作成されており、この情報を利用して消費者のセグメントを構築できます。そして、このセグメントにもとづいて、DIYコンテンツに関心を持つ消費者に対して、自社サイトを訪問したときにパーソナライズされたオファーを提供できるようになるのです。
現状では、Google Chromeブラウザーで閲覧している利用者がサイトを離れた場合、予算を追加してマーケティングテクノロジーを利用し、3rdパーティCookieにもとづいてリターゲティングすることが可能です。つまり、ソーシャルメディアやwebサイトで利用者を追跡し、自社サイトを再訪問するよう促すことができます。このアプローチは、一部の消費者が不満を感じているものであり、今後、見込み客や未知のサイト訪問者に対して実行するのは困難になるでしょう。
3rdパーティCookieがなければ、企業のwebサイトにアクセスした利用者が、購入も連絡先情報の提供(ニュースレターの購読など)もおこなわずにサイトを離れた場合、その見込み客を1対1のリターゲティングのターゲットにすることはできません。これは、3rdパーティCookieを使用して設計されたデータドリブン型のセグメントを中心に、パーソナライゼーションと最適化に関する多くの戦略を構築してきたマーケターにとって憂慮すべきことです。こうしたCookieがなければ、マーケターは潜在顧客に対して類似セグメントを作成できません。
マーケターはどのようにしてクッキーレスの世界に備えることができますか?
マーケターの最大の関心事は、「どうすれば利用者を追跡する能力を再び手に入れることができるか」ということです。多くのマーケターが3rdパーティCookieに代わるものを期待していますが、これまでより短期間に、少ない情報セットにもとづいて、未知の見込み客に合わせた、効果の高いコンテンツを配信する方法に焦点を当てる必要があります。これを実現することは極めて重要であり、アドビは、3rdパーティCookieに依存しないリアルタイムのマシンラーニング(機械学習)とパーソナライゼーションの能力を構築するために、多くのことに取り組んできました。
マーケターは、3rdパーティCookieへの依存を軽減する1stパーティデータ戦略を構築する必要があります。マーケティング部門には、電子メールアドレスや携帯電話番号などの永続性のある識別情報を含む、包括的な顧客プロファイルを構築する能力が必要とされます。これらの情報は、顧客の同意を得て収集され、ブラウザーの制限を受けることはありません。
3rdパーティCookie以外に、企業はどのような種類のデータを利用できますか?
アドビでは、企業は1stパーティデータとゼロパーティデータの活用を優先させるようになると考えています。ゼロパーティデータとは、顧客体験を最適化するために、消費者の同意を得て収集した1stパーティデータのことです。例えば、動画配信サイトでは、動画を視聴する前に、コメディ、料理、ファッションなど、視聴者の関心を尋ねるチェックリストが表示されます。自分が興味を持っているものをチェックするように促された視聴者は、提供したゼロパーティデータにもとづいてサイトがコンテンツを表示し始めることを十分承知しています。
1stパーティデータの場合は、もう少し推測する必要があります。先ほどの動画サイトの例で言えば、チェックボックスを表示する代わりに、1stパーティCookieを利用してユーザーが視聴しているコンテンツの種類を追跡し、その情報を使用して、ユーザーの好みが明示されなくても、類似のコンテンツを表示することができます。
ブランドは、1stパーティデータの適用方法について、適度なバランスを取る必要があります。適用が早急すぎると、顧客を不快にさせる可能性があります。例えば、初めて訪れたコーヒーショップで、バリスタが自分の名前とお気に入りのコーヒーを既に知っていたとしましょう。このような場合は警戒心が先立ち、店から立ち去って、二度と行こうとは思わないでしょう。しかし、繰り返し通っている顧客であれば、バリスタが自分の「いつもの」注文を知っていても不快にはならないはずです。むしろ、そのコーヒーショップとの間に信頼関係が生まれるでしょう。
1stパーティデータが目指すことは、マーケティングや広告を推進する役割を果たすことです。しかし、その前に、消費者を快適にする方法を学ぶ必要があるのです。
クッキーレスは消費者にどのような影響を与えますか?
最大かつ最も明白なメリットは、消費者データのプライバシー向上です。これが、各種webブラウザーで発表された変更の主な理由です。マーケターは、抜け穴を見つけるような真似はするべきではありません。消費者が避けようとしているものに別の名前を付け、新たに組み合わせるようなことをするべきではありません。3rdパーティCookieに直接代わる規格はないでしょう。
また、消費者は、自分がやり取りしている企業からの積極的なマーケティングが減るか、少なくとも目立たなくなることを期待できます。マーケターは、利用者にとって適切な方法でタイミングを見計らって、電子メールアドレスやゼロパーティデータの提供を求める必要があります。これも消費者にとってメリットになります。
全体として、顧客と企業の関係は、3rdパーティから1stパーティへと変化していきます。こうした変化は既に当たり前のことになっていますが、大手企業の中にも、顧客との直接的な関係を満足に築けていないところがまだまだあります。1stパーティデータは、あらゆる規模の企業が顧客とよりよい関係を築き、優れた顧客体験を提供するのに役立ちます。
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