プロジェクト成果物とは?定義や目的、種類、具体例をわかりやすく解説
プロジェクト成果物に関する知識が不足していると、プロジェクトの時間や予算を守りつつ、最小限のトラブルで完了させることが難しくなります。
自社のビジネス基盤を強固にするためにも、プロジェクト成果物の定義や種類などを把握することが大切です。
この記事では、プロジェクト成果物の定義や目的、種類、例一覧を紹介します。さらに、プロジェクト成果物を管理する手順や、適切に追跡するためのヒントなどもわかりやすく解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
プロジェクト成果物とは?
プロジェクト成果物とは、プロジェクトやビジネスの目標を達成するために必要な結果や出力と定義されています。
また、プロジェクト成果物は、プロジェクトの範囲や設定したゴールによって、内部的/外部的な成果物になったり、有形/無形の成果物になったりすることも特徴です。
例えば、有形の成果物として、仕様書や設計書といった文書類などが該当します。一方、無形の成果物には、プログラムなどが当てはまるでしょう。なお、英語ではプロジェクト成果物を「Project Deliverables」と呼びます。
プロジェクト成果物と混同して使われることが多い用語に、プロジェクト目的やプロジェクトマイルストーンがあります。次の項目で、プロジェクト成果物との違いについて見ていきましょう。
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プロジェクト目的との違い
プロジェクト目的とは、より広い範囲で、プロジェクト成果物が何であるかを定義する「プロジェクトの全体的な目標」のことです。プロジェクト目的は最終的なゴールなどを指しますが、プロジェクト成果物は具体的なアウトプットを指す点に違いがあるといえます。
例えば、見込み顧客(リード)が契約に至るまでのプロセスを示す「マーケティングパイプライン」でいうと、プロジェクトの目的はリード数を増加させることです。
一方、プロジェクト成果物には、リード数の増加を達成するために構築された広告施策などが挙げられます。
プロジェクトマイルストーンとの違い
プロジェクトマイルストーンとは、成果物を達成するための途中の目印や、重要な節目のことです。
例えば、プロジェクト成果物が広告施策の場合、マイルストーンは施策を実施するためのタスクとなります。具体的には、マーケティングコピーの作成やデジタルメディアの制作、オンライン広告の出稿方法の選択などが該当します。
納品物との違い
納品物が顧客に提出するすべてのものを指す一方、プロジェクト成果物は顧客に提出しないものも含みます。
例えば、プロジェクトにおけるタスク管理のためのToDoリストを作成した場合、このリストは社内の関係者のみで共有するものであり、顧客には納品しないので成果物の扱いとなります。プロジェクト成果物の一部に、納品物も含まれているといえるでしょう。
プロジェクト成果物の目的

プロジェクト成果物は、プロジェクトをタスクにしたがって、時間どおり、予算どおりに進行するために必要な活動を明確化するものです。これがプロジェクト成果物の目的といえます。
また、プロジェクト成果物はチームの連携や取り組みの調整、タスクの優先順位の決定にも役立ちます。さらに、柔軟に定義付けできることも特徴です。例えば、成果物をミニプロジェクトとして独立させたり、より大きな取り組みの一部にしたりすることもできます。
成果物は、プロジェクトの中間あるいは最後に、関係者に提出するものです。社内の関係者や外部の顧客など、社内外の様々な対象者に提供することができます。
プロジェクト成果物について理解することは、企業がミクロまたはマクロのスケールで目的を定め、予算や売上などの目標を達成するのに役立つでしょう。
プロジェクト成果物の種類
プロジェクト成果物は、その対象や位置付けによって複数の種類があります。以下では、プロジェクト成果物の対象と位置付けによる分類を確認しましょう。
成果物の対象による分類
プロジェクト成果物の対象による分類では、主に内部向けと外部向けの2種類があります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
内部向けプロジェクト成果物
内部向けプロジェクト成果物は、直接顧客には影響を及ぼさない成果物です。この成果物は、通常、プロジェクトを円滑に進行させるためのものであり、顧客には提出しないことが一般的です。
例えば、新しいwebサイトの再設計プロジェクトに取り組む場合、マーケティング部門の承認を得るために、内部向けプロジェクト成果物として「ワイヤーフレーム」を作成することがあります。
これらの内部向けプロジェクト成果物を外部関係者が見ることは基本的にありませんが、全体像の一部として完成させなければなりません。
内部向けプロジェクト成果物のそのほかの例には、時間の追跡や品質保証テストなどが挙げられます。
外部向けプロジェクト成果物
外部向けプロジェクト成果物は、完了した作業のうち、顧客向けの成果物です。株主や消費者など、組織の外部で共有されることを目的に作成されます。
先述の新しいwebサイトの再設計プロジェクトの例でいえば、外部向けプロジェクト成果物は、最終的に公開されるwebサイトです。また、完成した販売向けの最終製品のほか、時間や資金がどのように使われたかを説明する公的な報告書なども該当します。
成果物の位置付けによる分類
プロジェクト成果物の位置付けによって、プロセス成果物と製品成果物のどちらかに分類されます。以下で特徴を見ていきましょう。
プロセス成果物
プロセス成果物は、生産における中間手順に影響を与える成果物と位置付けられます。あくまで最終製品の開発における各要素や、完成までにたどる手順であり、製品そのものではありません。
プロセス成果物の具体例には、プロジェクトのワークフローチャートやチェックリスト、内部バグレポート、ガントチャートなどが含まれます。
製品成果物
製品成果物は、一般消費者向けの最終製品に影響を与える成果物、または消費者のために市場へ投入される準備が整った製品そのものと位置付けられます。
関係するあらゆる作業、取り組み全体の進捗を追跡して確認するマイルストーンの最終結果、あるいは最終成果物といえるでしょう。製品成果物の具体例として、開発が完了したアプリケーションやwebサイトなどが当てはまります。
なお、プロジェクト遂行のために、クライアントや協力会社から支給、または貸与される成果物は「受領物」と呼ばれています。
プロジェクト成果物の例一覧

部門や業界によってプロジェクト成果物の例は異なるものの、どのような成果物であっても、プロジェクトにおける成功を定義する上で重要です。
ここでは、部門ごとの成果物例を一覧で紹介した上で、それぞれの詳細を解説します。
【クリエイティブ部門】
- オンライン記事
- インフォグラフィックス
- 動画
- パッケージデザイン
- ロゴ
- ポスターなど
【プロフェッショナルサービス部門】
- 内部向け成果物:財務報告書など
- 外部向け成果物:システムドキュメント、サポートサービスなど
【プロダクト部門(プロダクトマーケティングローンチ)】
- 製品仕様やUXの概要を示すプレゼンテーション、計画など
【マーケティング部門(マーケティングキャンペーン計画)】
- 内部向け成果物:納期、KPIなど
- 外部向け成果物:マーケティングキャンペーン、メールキャンペーンなど
【代理店(企業イベント企画)】
- 内部向け成果物:メディア計画など
- 外部向け成果物:プレスリリース、ソーシャルメディア投稿など
【営業部門(営業計画)】
- 月次または四半期ごとのノルマの達成
- 販売計画
- 収益目標の作成
- 成果測定のためのツールの導入など
クリエイティブ部門
クリエイティブ部門は、社内外の関係者のために、文章やビジュアルコンテンツといった成果物を制作することが一般的です。プロジェクト成果物の例として、オンライン記事やインフォグラフィックス、動画などがあります。
また、製品デザインのプロジェクト成果物には、パッケージデザインやロゴ、ポスターなどが含まれます。
プロフェッショナルサービス部門
プロフェッショナルサービス部門では、財務や会計、ITなどの専門家が、専門的なサービスやプロジェクト成果物を提供します。
例えば、会計士は財務報告書などの内部向け成果物を作成することが一般的です。また、ITの専門家はシステムドキュメントやサポートサービスなどの外部向けプロジェクト成果物で、クライアントをサポートします。
プロダクト部門(プロダクトマーケティングローンチ)
プロダクト部門は、主に製品開発のローンチを構成する内部向けプロジェクト成果物を提供します。具体例には、管理者と設計者が協力して、製品の仕様/ユーザーエクスペリエンス(UX)の概要を示すプレゼンテーションや計画が挙げられます。
マーケティング部門(マーケティングキャンペーン計画)
マーケティング部門のプロジェクト成果物の例には、納期やKPIなどの内部向け成果物、マーケティングキャンペーン、メールキャンペーンなどの外部向け成果物が該当します。
代理店(企業イベント企画)
代理店は、企画や顧客とのコミュニケーションのための成果物を提供します。プロジェクト成果物の例として、メディア計画といった内部向けプロジェクト成果物のほか、プレスリリースや、一般に向けたソーシャルメディア投稿などの外部向け成果物が挙げられます。
営業部門(営業計画)
営業部門は、新規ビジネスの獲得やビジネスの継続に対する責任を負っています。営業部門の成果物の例として、月次または四半期ごとのノルマの達成、販売計画、収益目標の作成、成果測定のためのツールの導入などがあります。
プロジェクト成果物を管理する手順

続いて、プロジェクト成果物を管理する手順を確認しましょう。
1.成果物をリストアップする
プロジェクト成果物に着手する準備ができたら、チーム全体がレビューして理解できるように、成果物を明確に定義します。
成果物の定義は、プロジェクトの分野などで異なることに留意が必要です。例えば、システム開発プロジェクトの場合、企画書や計画書、システム設計書、進捗管理表などが成果物となります。
これらのポイントを押さえつつ、プロジェクトの目的/目標を踏まえて、成果物をリストアップしましょう。リスト化することで、プロジェクトの管理者が完了項目や残りの項目を把握しやすくなり、リソースの適正配置も可能になります。
2.成果物の管理ルールを決める
管理ルールを策定することで、一貫性を保った状態で成果物を管理できます。ルールの具体例として、データフォーマットの管理やファイル名の付け方、使用ツール、保存場所などに関するものが挙げられます。
プロジェクトメンバー間での管理ルールの共有が不十分だと、プロジェクトにおいて後戻り工程などが発生する可能性もあるので注意しましょう。
また、プロジェクト管理計画を作成して、成果物が全体像にどのように適合するかを検討し、プロジェクト目的をあらゆる関係者に伝えることも重要です。
3.プロジェクトのスケジュールに反映する
成果物の期日について、プロジェクトのスケジュールに反映していきましょう。その際、成果物の進捗状況を測るための基準を決めておく必要があります。
例えば、システム開発におけるドキュメントの成果物の場合、1か月ごとに900ページ作成し、3か月で計2,700ページ作成するといった基準を設定しておけば、進捗を把握しやすくなります。
4.成果物を管理する
プロジェクトが進行している期間中は、ルールやスケジュールに沿って成果物が出力されるように管理します。成果物の出力が遅れている場合は、ルールの見直しや原因の洗い出しなどを行い、随時改善していきましょう。
また、プロジェクト完了後は、次回に向けた改善点などをプロジェクト関係者で共有し、社内ノウハウの蓄積を図ることが大切です。
プロジェクト成果物を定義し、追跡するためのヒント7つ
ここでは、プロジェクトの管理プロセスにおけるプロジェクト成果物を適切に定義し、追跡するためのヒントを厳選して紹介します。
これらのヒントを組み合わせて適用することで、プロジェクトのそのほかの管理プロセスと区別しながら、成果物を明確に定義することができます。

- プロジェクト管理ソフトウェアを利用する
多くのデータ入力をフィルタリングし、様々な関係者のニーズを満たす適切な成果物を提供できるソフトウェアを導入します。各タスクのステータスやその責任者などを含め、プロジェクト成果物について常に把握できる体制を構築することが重要です。
- クライアントと協力して優先順位を決める
予算に沿ったプロジェクトの範囲を把握するにあたり、作業がプロジェクト範囲を超えて拡大している場合は、ニーズと優先順位についてクライアントと相談します。
- 重要ポイントを追跡する
教訓に関するライブラリを作成し、プロジェクトを進行させる中で期待を上回ったり、予想以上に優れた結果を残したりした作業をまとめます。重要ポイントを追跡し、俯瞰的に把握することで、障害に備える計画を立てましょう。
- より広範な計画との整合性を図る
プロジェクト計画の立案と並行してプロジェクト成果物を定義し、最終的な目標や、目標達成に向けた計画を明確にします。
- 定期的にコミュニケーションを図る
主要な関係者に対して、効果的かつ頻繁にプロジェクト成果物を提示し、全員の認識を合わせます。プロジェクト進行上の問題やトラブルが発生した際、適切なアドバイスを受ける機会にもなります。
- 進捗状況を報告する
プロジェクト成果物の達成状況の概要を示すために、プロジェクト進捗レポートを共有しましょう。プロジェクトチームとステークホルダーの透明性を確保し、プロジェクトの成功確度を高めることにもつながります。
- 主要なチームメンバーに報告する
指標を集め、プロジェクト全体の進捗を評価し、チームと話し合う時間を必ず確保します。
プロジェクト成果物の管理を効率化するアドビの「Adobe Workfront」

適切なエンタープライズプランニングソフトウェアを利用すれば、プロジェクト成果物を容易に定義し、ワークフローに結び付け、全体的な戦略との整合性を維持することができます。
プロジェクト成果物の管理を効率化させたいなら、アドビの「Adobe Workfront」がおすすめです。Adobe Workfrontは、組織全体へのビジョンの展開はもちろん、チーム間の連携や、より大きな目標への作業の関連付けを容易に行えるプロジェクト管理ソリューションです。
このソフトウェアを活用すれば、ファイルやドキュメントなどのプロジェクト成果物を一元的に管理できるので、リアルタイムでの情報共有やチーム連携の強化などに役立ちます。
また、Adobe Workfrontでは、AIアシスタントを活用できることもポイントです。例えば「ドキュメントの要約」「プロジェクトの検索」などに関して質問すると、製品ドキュメントやAdobe Workfrontアプリの使用状況などにもとづき、AIが迅速に回答を生成します。
なお、Adobe Workfrontはスクラムやアジャイル、ウォーターフォールなど様々なフレームワークに対し、柔軟に対応できます。プロジェクトの内容や規模に合わせて、便利にご活用いただけるでしょう。
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プロジェクト成果物に関してよくあるQ&A
ここからは、プロジェクト成果物に関してよくある質問と、その回答を紹介します。
Q.プロジェクト成果物に関する合意はいつ行われる?
計画段階で、プロジェクトの目的を定義するときに行います。関係者全員とプロジェクトマネージャーとの間で合意を得て、チーム全体で達成することを明確に理解できるようにすることが重要です。
Q.プロジェクト中にプロジェクト成果物は変更できる?
プロジェクト中に問題などが発生した場合、プロジェクト成果物を変更できるケースもあります。
ただし、プロジェクト進行中に目標が拡大するような場合、作業負担が増えることに注意しなければなりません。要件変更に対応しつつ、プロジェクトの進捗を維持するためには、新たな成果物を最小限にするか、不要な成果物を排除する必要があります。
Q.プロジェクト成果物の監督は誰がする?
プロジェクトマネージャー(PM)が、プロジェクト成果物を監督します。プロジェクトマネージャーの責務は、プロジェクト管理計画をまとめ、目的や成果物、マイルストーンの達成を監督することです。
Q.成果物は作成後どのように扱われる?
プロジェクトマネージャーが、成果物について適切なチームに明確に伝えた上で、チームが成果物について質問をしたり、より小さく管理しやすいタスクに分解したりできるように手配します。
また、場合によっては、より大きなプロジェクト計画における期限やマイルストーンと、成果物を関連付ける必要があります。
Q.プロジェクトの主要な成果物は?
主要な成果物は業界や企業、プロジェクトによって異なりますが、主な目標のもとに策定されたプロジェクト計画における「最終的な成果物」であることが一般的です。
プロジェクト成果物の適切な管理が成功の鍵
プロジェクト成果物の種類や管理手順について理解することは、企業がミクロまたはマクロのスケールで目的を定め、予算や収益、成長の期待に沿った目標を達成するのに役立ちます。
また、計画のずれの修正や、異なるチーム間の連携促進を図りながら、プロジェクトの成功に貢献するタスクを確実に完了することにも役立つでしょう。
プロジェクト成果物の管理を効率化したいという方は、アドビの「Adobe Workfront」の導入をご検討ください。プロジェクト成果物の一元管理や、リアルタイムでの情報共有による管理の最適化を図れます。
(公開日:2023/5/26)