パーソナライゼーションとは?具体例やメリット、注意点、MAの活用法を解説
人々の価値観が多様化するなか、必要不可欠とされるのが「パーソナライゼーション」です。パーソナライゼーションとは、顧客一人ひとりに合わせて情報やサービスを提供することをいいます。
この記事では、パーソナライゼーションの概要やカスタマイゼーションとの違い、パーソナライゼーションのメリット、注意点などを解説します。
また、パーソナライゼーションに役立つMAの活用法についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
パーソナライゼーションとは?
パーソナライゼーションとは、顧客一人ひとりのニーズやライフスタイルに合わせて、提供する情報やサービスを最適化するマーケティング手法です。
より具体的には、顧客の属性や行動履歴などの様々なデータを分析し、適切な「情報やサービス」を、適切な「タイミング」かつ適切な「方法」で届けることを意味します。
パーソナライゼーションが可能なチャネル(企業と顧客の接点)には、以下のようなものが挙げられます。
- Webサイト
- アプリ
- 広告
- メール
- カスタマーサポート
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パーソナライゼーションの具体例
ECサイトなどにおける「おすすめ」機能や、検索エンジンなどにおける検索結果の最適化は、パーソナライゼーションの代表的な例です。
最近では、人間との会話に近い感覚でコミュニケーションがとれるチャットボットも、パーソナライズされたメッセージを送る手法として注目されるようになりました。
ここでは、パーソナライゼーションをより深く理解するために、身近な具体例を見ていきましょう。
Amazon:レコメンド機能
Amazonのアプリやwebサイトを開くと、最近検索または購入した商品に似た商品が「おすすめ」として表示されます。これは、レコメンド機能とよばれるパーソナライゼーションの手法です。
顧客の閲覧履歴や行動履歴に合った商品を示して興味を引くことによって、webサイトの滞在時間が長くなり、商品の購買率が高まります。
また「自分の嗜好を理解してくれる」「自分に合った商品を勧めてくれる」といった価値ある体験の提供により、Amazonのサービスへのロイヤリティ向上にもつながっています。
Google:パーソナライズド検索
Googleは、ユーザーが検索したキーワードをもとに、求めているものや意図、目的を予測して、検索結果に反映する「パーソナライズド検索」を2005年からスタートさせました。
パーソナライズド検索は、ユーザーの所在地、検索履歴、過去に訪問したwebサイト、クリックしたURLなどを参考にして検索結果に反映させているといわれています。
これも、個人の興味関心に沿った情報提供により、顧客満足度を上げるパーソナライゼーションのひとつです。
Netflix:レコメンド機能
Netflixでは、ユーザーが好みの番組や映画のタイトルを見つけられるよう、独自のレコメンド機能を提供しています。
レコメンドの基準になっているのは、以下のような情報です。
- 過去に視聴した番組やその評価
- 似た属性を持つユーザーの視聴傾向
- よく視聴する時間帯と視聴時間
- 視聴に使用しているデバイス
これらの情報をアルゴリズムで処理し、パーソナライズされた提案をすることで、ユーザーのモチベーションをアップさせています。ユーザー本人の行動だけでなく、似た属性を持つユーザーの行動をパーソナライゼーションに利用している点もポイントです。
ハイパーパーソナライゼーションとは?
ハイパーパーソナライゼーションとは、顧客一人ひとりに、リアルタイムで最適化された体験を提供することを意味します。
従来のパーソナライゼーションは、検索行動や購買行動などの過去のデータにもとづいて実施されてきました。一方のハイパーパーソナライゼーションは、時間や位置情報などのリアルタイムデータやAI、機械学習を活用して実施するのが特徴です。
つまり、ハイパーパーソナライゼーションは、パーソナライゼーションの進化形といえます。
なお、本記事では、パーソナライゼーションとハイパーパーソナライゼーションは区別せずに解説していきます。
パーソナライゼーションとカスタマイゼーションの違い
パーソナライゼーションと混同されやすい言葉に、カスタマイゼーションがあります。
パーソナライゼーション(パーソナライズ)とカスタマイゼーション(カスタマイズ)は、情報やサービスを最適化する点では同じです。両者の違いは、最適化を行う主体にあります。
パーソナライゼーションは、顧客体験(CX)を向上させるために企業側が最適化を行うのに対し、カスタマイゼーションは、顧客側が自らの希望に沿うように最適化します。
例えば、ECサイトにおけるレコメンド機能やキャンペーン情報の送付は、パーソナライゼーションに該当するでしょう。
一方で、フィルタリング検索によって表示させる商品を絞り込んだり、興味のある商品をリストアップしたりする行為は、カスタマイゼーションに該当します。
パーソナライゼーションが現代のマーケティングに必要な理由
パーソナライゼーションが現代のマーケティングに必要とされるのには、インターネットの普及にともなう2つの要因が考えられます。
企業から顧客への主導権の移行
インターネットの普及によって顧客の行動範囲が広がり、企業の発信を待たずに自ら情報を収集して商品を選ぶようになりました。これにより、商品の購入に至るまでの主導権が、企業側から顧客側に移行したのです。
そのため、企業側は顧客が触れる情報を想定し、その情報をパーソナライゼーションによって個別最適化することで、商品やサービスへの興味関心を喚起する必要に迫られています。
情報収集チャネルと価値観の多様化
インターネット上の情報収集の手段が増加し、多彩な情報に触れられるようになったことで、顧客の価値観も多様化しました。近年は、多様性を尊重する風土も醸成されています。
結果として、従来の一方的かつ画一的なマスマーケティングで心を動かされる層が減り、パーソナライズされた情報提供の重要性が高まったと考えられます。
パーソナライゼーションで期待できる効果/メリット
ここでは、パーソナライゼーションを実践することで期待できる、代表的な効果(メリット)を紹介します。
コンバージョンの増加
パーソナライゼーションによって、顧客のニーズに合わせた情報を提示することで、コンバージョンの増加が期待できます。
顧客一人ひとりを深く分析するパーソナライゼーションは、顧客自身が気付いていない潜在的なニーズの掘り起こしにも寄与します。
「実はこういう商品が欲しかった」「この商品があればたしかに便利だ」といった気付きを与えられれば、効果的にコンバージョンにつなげられるでしょう。
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顧客エンゲージメントの向上
パーソナライゼーションでは、顧客一人ひとりの属性や行動履歴、ニーズを分析し、最適化した情報を提供することが可能です。
上質な体験により、顧客は「自分を大切にしてくれている」といった特別感を味わい、顧客エンゲージメントを高めて、企業との信頼関係を構築していきます。
LTVの最大化
LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)とは、顧客が自社と取引を開始してから終了するまでの間に、自社にもたらす利益を表す指標です。
効果的なパーソナライゼーションによってエンゲージメントが高まった顧客は、その企業から商品をリピート購入したり、サービスを継続的に使用したりします。
また、さらによい体験に期待して、より単価の高い商品やサービスの購入につなげられる可能性もあるでしょう。これらの理由により、LTVの最大化を目指せます。
パーソナライゼーションに活用されるデータの種類
パーソナライゼーションにおいては、デモグラフィック、コンテキスト、ビヘイビアーの3つのデータが欠かせません。ここでは、各データの概要を解説します。
デモグラフィック(顧客の属性)
デモグラフィックとは、人口統計学的な顧客の基本情報のことです。具体的には、以下のような項目が挙げられます。
- 年齢
- 性別
- 職業
- 興味関心
- 趣味
デモグラフィックデータは、webサイトやアプリの会員登録時などに収集可能です。
コンテキスト(顧客の環境)
コンテキストとは、顧客がwebサイトなどを利用した際の背景情報のことです。具体的には、以下のような項目が挙げられます。
- アクセスした地域
- アクセスした時間帯
- アクセスした際の使用デバイス
顧客が置かれている環境を把握することで、例えば、居住エリアや行動範囲にマッチする店舗情報を提供するといった活用方法があります。
ビヘイビアー(顧客の行動)
ビヘイビアーとは、顧客の行動や購買に関する履歴情報のことです。具体的には、以下のような項目が挙げられます。
- 検索キーワード
- 閲覧ページ
- カートに入れた商品
- クリックしたバナー
ビヘイビアーのデータの分析は、デモグラフィックやコンテキストデータに比べて難しいものの、パーソナライゼーションに最も役立つ情報とされています。
パーソナライゼーションで注意が必要な個人情報の規制
パーソナライゼーションには、顧客の個人情報が大きく関わります。個人情報に関する規制は世界中で進んでおり、企業は個人情報を適切に取り扱わなくてはなりません。
ここでは、パーソナライゼーションを実践する前に知っておきたい、個人情報の規制を紹介します。
個人情報の保護に関する法律
日本の「個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)」では、個人情報の収集や利用に関するルールを定めており、すべての事業者が対象です。
氏名や生年月日、住所、電話番号のほか、顔写真、指紋、免許証番号、マイナンバーなども個人情報に該当します。
また、以前は努力義務であった情報漏洩時の通知が義務化されたように、個人情報保護法の見直しによって規制や罰則が厳しくなる可能性もあります。常に最新の情報を確認し、必要に応じて対策をとりましょう。
GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)
GDPRは、個人データの保護や扱い方について定めた、EU域内の各国に適用される法令です。日本の企業であっても、EU域内の居住者に商品やサービスを提供し、個人情報を取り扱っている場合はGDPRが適用されます。
GDPRでは、個人の基本的な権利を守るために、画像、映像、メールアドレス、顧客名簿、音声など、幅広いデータを保護の対象としています。
また、以下のような厳しい規制も設けています。
- 事前の承諾なしには個人データを取得できないこと
- 個人データの侵害があればすぐに本人に知らせること
- 本人は個人データの削除を管理者に依頼できること
アプリケーションを提供しているアドビが、どのようにGDPRに対応しているかについては、下記で詳しく解説しています。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/page-privacy-gdpr
CCPA(California Consumer Privacy Act:カリフォルニア州消費者プライバシー法)
CCPAは、アメリカのカリフォルニア州の個人データ保護に関する法令です。画像、映像、メールアドレス、顧客名簿、音声のほか、位置情報、インターネットの検索履歴や閲覧履歴なども個人データに含まれます。
GDPRとは異なり、顧客の要請がなければ情報を開示する必要はないことを前提とし、使用については制限していません。
カリフォルニア州はアメリカで最も人口が多く、大手IT企業の本拠地も数多く存在していることから、この規制がほかの州や他国におよぼす影響は少なくないと考えられます。日本もその例外ではなく、よりハイレベルな個人情報管理を徹底していくべきでしょう。
Cookie規制/クッキーレス
Cookieの利用に、大幅な規制を設ける動きも活発化しています。
Googleは2021年3月、webサイト訪問者のトラッキングや、顧客体験のパーソナライズなどに利用されてきた3rdパーティCookieを、2023年後半に終了すると発表しました。
3rdパーティCookieとは、ユーザーがアクセスしたwebサイトとは違うドメインが発行したCookieを指します。例えば、ユーザーがアクセスしたwebサイトに広告が掲載されていた場合、広告配信サーバーが発行したCookieは3rdパーティCookieとなります。
Googleはその後、3rdパーティCookieの廃止を段階的に延期しており、実際にいつから3rdパーティCookieを使用できなくなるかは状況の変化次第です。
しかし「クッキーレス」時代と呼ばれる、3rdパーティCookieが利用できなくなる未来は、間もなく訪れる可能性が高いでしょう。
また、Appleは、2013年からSafariでITP(Intelligent Tracking Prevention)を通じて、Cookieの保存期間の制限や無効化などのデータの安全性対策を実施しています。
さらに、Appleは2021年に配信されたiOS 14.5からATT(Application Tracking Transparency)を開始し、アプリケーションのトラッキングについてユーザーの許可を求めるようになりました。
企業は、こうした動きを悲観せず、魅力的な顧客体験を提供する方法を探っていかなくてはなりません。クッキーレス時代の到来に、いかに早く適応できるかが、すべての企業に問われています。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/offer-003303-cookieless-world
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/offer-003301-data-privacy-business
ファーストパーティデータを活かしたパーソナライゼーションとMA
パーソナライズされた顧客体験への期待が高まる一方、個人情報の取り扱いが厳しく制限されているのが現状です。そのようななかで、企業はファーストパーティデータを用いて顧客を獲得していく必要があります。
ファーストパーティデータの代表例としては、氏名、メールアドレス、電話番号、購買履歴、アプリの利用ログなどが挙げられます。
ファーストパーティデータの収集や利用に役立つテクノロジーのひとつとして活用したいのが、MA(マーケティングオートメーション)です。MAは、マーケティング活動を自動化し、収益のプロセスを可視化するツールです。
MAを導入することで、顧客情報の一元管理、見込み顧客の育成、マーケティング施策の効果の可視化、費用対効果の分析などを行うことができます。
MAの概要については、下記の資料で詳しく説明しているので、併せて参考にしてください。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/offer-marketo-dg2ma
Adobe Marketo Engageで実現するパーソナライゼーション
パーソナライゼーションの実現には、アドビのMA製品「Adobe Marketo Engage」が有効です。
Adobe Marketo Engageなら、webサイト訪問者の98%以上を占める匿名のリード(見込み顧客)に対して、関連性の高いコンテンツやパーソナライズされたメッセージを届け、エンゲージメントを高められます。
同時に、より購買に近い実名リードに対しても、さらにパーソナライズされた情報を提供することで、コンバージョンや収益への貢献も見込めます。
以下で、Adobe Marketo Engageの強みを詳しく見ていきましょう。
実名リードの管理と匿名リードの実名化
ファーストパーティデータを利用したパーソナライゼーションに欠かせないリードの管理は、Adobe Marketo Engageが最も得意とするところです。
例えば、Adobe Marketo Engageを利用した場合、以下の情報を一元管理できます。
- 展示会やセミナーなどで交換した名刺、出席者に記入してもらった申込書やアンケートといったオフラインで獲得した実名リード
- 問い合わせフォームや資料のダウンロードといったオンラインで獲得した実名リード
また、一度自社サイトを訪れた匿名の顧客情報を、名刺交換などによって得た個人情報に紐づけ、実名化することも可能です。
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顧客の検討ステージに合わせた中長期的なシナリオの作成
実名リードを獲得したあとは、中長期的なシナリオを組み、その反応によって緩やかに情報を変化させながらアプローチしていく必要があります。
Adobe Marketo Engageは、一度組んだシナリオの並べ替えのほか、顧客の興味や検討度合いに応じたシナリオの切り替え、施策の成果による見直しなども簡単に行うことができます。そのため、確実に顧客との関係性を深めていけるでしょう。
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顧客のモチベーションの見える化
Adobe Marketo Engageは、実名リードを以下のような行動履歴に応じてスコアリングします。
- 展示会やセミナーに参加した
- 自社サイトを訪問した
- ホワイトペーパーをダウンロードした
顧客の現時点でのモチベーションを見える化し、パーソナライズされたコミュニケーションを長期的、かつ継続的にとり続けることによって、受注確度を高められます。
マルチチャネルでのパーソナライズ支援
顧客ごとのパーソナライゼーションを効果的に行うには、チャネルごとの施策のデータを一元化することが重要です。
Adobe Marketo Engageは、以下のようなマルチチャネルでパーソナライゼーションを支援します。
- Webパーソナライゼーション
- メールのパーソナライゼーション
- リターゲティング連携
- 営業連携
これにより、良質なコミュニケーションを実現して優良顧客を増やし、アップセルやクロスセルにつなげることが可能です。
パーソナライズにAIを利用したコンテンツの配信
マーケティングにおけるAIの有効性は以前から注目されていますが、なかなか利用できていない担当者が多いようです。
しかし、AIの使い勝手は驚くほどのスピードで改善されており、手間と時間をかけることなく、パーソナライズされたコンテンツを配信できるようになりました。
Adobe Marketo Engageでは、蓄積されたデータをもとに、AIが自動的に高精度な予測モデルを作成します。予測値をリアルタイムで各チャネルと連携することによって、流入してきた顧客に対して瞬時にパーソナライズしたコンテンツの提供が可能です。
AIのパーソナライゼーションへの利用については、下記の製品情報を参考にしてください。
また、ここまでの内容に関するさらに詳しい情報や、Adobe Marketo Engageの導入については、以下からお気軽にご相談ください。
アドビのMAで高度かつ有効なパーソナライゼーションを実践
インターネットが普及した現代において、企業が利益を最大化するには、パーソナライゼーションの考え方が欠かせません。一方で、パーソナライゼーションでは、顧客の個人情報の取り扱いと規制に十分注意する必要があります。
こうした事態に対応していくため、MAを活用してファーストパーティデータの収集や利用を進めていきましょう。アドビの「Adobe Marketo Engage」なら、基本的なものからAIを活用した応用的なものまで、多様なパーソナライゼーションの施策を実施可能です。
なお、MA分野だけでなく、より幅広い分野も含めた包括的なパーソナライゼーションについては、以下のガイドを参考にしてください。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/offer-003356-personalization-playbook
(公開日:2022/7/7)