パーソナライゼーションに大きく関わる規制
これまでご紹介したとおり、顧客の属性や行動履歴にもとづいて情報を個別最適化するパーソナライゼーションは、インターネットが普及した現代において非常に効果的なマーケティング手法です。一方で、パーソナライゼーションは個人情報が大きく関わることから、その扱いと規制には十分注意をしなくてはなりません。
個人情報に関する規制は世界中で進んでおり、企業には適切な個人情報の取り扱いが求められています。ここでは、パーソナライゼーションに大きく関わる規制を挙げておきましょう。
個人情報の保護に関する法律
日本の個人情報の保護に関する法律は、個人情報の収集や利用に関するルールを定めており、すべての事業者が対象です。住所や氏名、生年月日、電話番号のほか、顔写真、指紋、免許証番号、マイナンバーなども個人情報とされています。
また、個人情報の保護に関する法律は3年ごとに見直されているため、以前は努力義務であった情報漏洩時の通知が義務化したように、規制や罰則が厳しくなる可能性もあります。常に最新の情報を確認し、必要に応じて対策をとりましょう。
GDPR(General Data Protection Regulation:EU一般データ保護規則)
GDPRは、個人データの保護や扱い方について定めた、EU域内の各国に適用される法令です。日本の企業であっても、EU域内の居住者に商品やサービスを提供し、個人情報を取り扱っている場合はGDPRが適用されます。
GDPRでは、個人の基本的な権利を保護するために、画像、映像、メールアドレス、顧客名簿、音声など、幅広いデータを対象としています。また、事前の承諾なしにはデータを取得できないこと、個人データの侵害があればすぐに本人に知らせること、本人はデータの削除を管理者に依頼できることなど、厳しい規制を設けています。
GDPRへ対応すべきアプリケーションを提供しているアドビが、どのようにGDPRに対応しているかについては、下記で詳しく解説しています。
CCPA(California Consumer Privacy Act:カリフォルニア州消費者プライバシー法)
CCPAは、アメリカのカリフォルニア州の個人データ保護に関する法令です。
画像、映像、メールアドレス、顧客名簿、音声のほか、位置情報、インターネットの検索履歴や閲覧履歴なども個人データに含まれます。GDPRとは異なり、顧客の要請がなければ情報を開示する必要はないことを前提とし、使用については制限していません。
カリフォルニア州はアメリカで最も人口が多く、大手IT企業の本拠地も数多く存在していることから、この規制がほかの州、および他国に及ぼす影響は少なくないと考えられます。日本もその例外ではなく、よりハイレベルな個人情報管理を徹底していくべきでしょう。
Cookie規制/クッキーレス
Cookieの利用に、大幅な規制を設ける動きも活発化しています。歴史を紐解くと、まずGoogleは2021年3月、webサイト上の未知の訪問者のトラッキングや、顧客体験のパーソナライズ、広告のターゲット選定などに利用されてきたChromeの3rdパーティCookieを、2023年後半に終了すると発表しました。
また、Appleは、2013年からSafariでITP(Intelligent Tracking Prevention)を通じて、Cookieの保存期間の制限や無効化などのデータの安全性対策を実施しています。さらに、Appleは2021年に配信されたiOS 14.5からATT(Application Tracking Transparency)を開始し、アプリケーションのトラッキングについてユーザーの許可を求めるようになりました。
Googleはその後、3rdパーティCookieの廃止を段階的に延期しており、2022年7月の発表では、その時期を「2024年後半より順次」としています。このように、実際にいつから3rdパーティCookieを使用できなくなるかは、状況の変化次第ですが、いずれにしても、その到来に備えておかなければなりません。
3rdパーティCookieとは、ユーザーがアクセスしたwebサイトとは違うドメインが発行したCookieを指します。例えば、ユーザーがアクセスしたwebサイトに広告が掲載されていた場合、広告配信サーバーが発行したCookieは3rdパーティCookieとなります。ちなみに、1st パーティ Cookieとは、ユーザーがアクセスしたwebサイトと同じドメインが発行したCookieのことです。
企業は、新規ユーザーの獲得が困難になる中、魅力的な顧客体験を提供する方法を探っていかなくてはなりません。こうした動きを悲観せず、好機と捉える企業の中には、読者の会員化によるサブスクリプションモデルを確立したアメリカのニュースサイトBusiness Insiderなど、収益増に転じるケースも出てきました。
「クッキーレス」時代と呼ばれる、3rdパーティCookieが利用できなくなる未来は、間もなく訪れる可能性が高いです。それは日本にも例外なく訪れます。クッキーレス時代の到来に、いかに早く適応すべきかが、すべての企業に問われています。