企業のAI活用準備状況についてのグローバル調査結果
上位5%のAI先行企業は組織作りで成功
Adobe Comms
11-02-2026
多くの企業がすでに、パイロットプロジェクト(実証実験)の立ち上げ、ツール稼働、ロードマップの策定など、何らかの形でAIを活用しています。しかし、その取り組みが思うように拡大せず、なぜ停滞しているのか明確になっていないケースも少なくありません。
アドビは、調査会社の米Incisivと共同で、意思決定権を持つ12業界・11市場の経営幹部5,633人(うち日本は461人)を対象とした調査および50人以上への詳細なインタビューを実施し、企業でのAI活用の拡大を阻む要因を分析しました。
調査の結果、実際にAI活用を拡大できるかどうかを決定づけていたのは、導入したテクノロジーそのものではなく、 AIの責任者を誰にするのか、成果をどのように測定するのか、ビジネス部門とIT部門がどう連携するのか、そして業務そのものをどう再設計するのかといった、 AIを取り巻く組織設計であることが明らかになりました。
58%の企業がAI導入の停滞期に
本調査によると、グローバルと日本のいずれも58%の企業が、AIの実証実験や導入を進めているものの、全社的な本格展開には至っていない「停滞期(Frozen Middle )」のフェーズにとどまっていると回答しています(図1)。このフェーズの企業では、ツールは本番環境で稼働し、初期成果も出ている一方で、それを支える全社的なオペレーティングモデルが整備されていません。そのため、各部門が個別にAI活用を進め、全社で統一した方針のもとに取り組みを推進できていない状況です。新たな実証実験が次々と始まる一方で、既存の取り組みは本格展開に至らず、停滞してしまいます。
図1 マーケティングおよびカスタマーエクスペリエンス(顧客体験)のワークフローにおける、貴社の現在のAI導入状況を最もよく表しているものはどれか
日本企業の76%が「初期段階」、AI活用を支える組織体制や業務プロセスに課題
この調査では、AIの導入率と成熟度から企業を「リーダー企業」「準備が整った段階」「脆弱な段階」「初期段階」 の4つの象限に分類しています。
日本では、AI導入とオペレーティングモデルの成熟度がともに「初期段階(Nascent)」にある企業が76%と、グローバルの70%を上回っています。一方、AI活用を全社的に拡大し、継続的に成果を生み出すためのオペレーティングモデルを構築できている企業は、わずか5%、24社(グローバルは6%、342社)でした。本調査では、これらの企業を「リーダー企業」と位置付けています。リーダー企業は、その他の企業と比べて、実証実験から本格運用への移行率が約4倍に達しています。
また、日本ではAI活用を支える組織体制や業務プロセスの整備が大きな課題となっています。日本のリーダー企業と全調査対象企業について、AI活用を支える6つの項目(組織・責任体制、業務プロセス、テクノロジー、戦略、人材、ガバナンス)の整備・定着度を比較すると、「組織・責任体制」ではリーダー企業のスコアが63%高く、「業務プロセス」では46%高い結果となりました。グローバルでも、 リーダー企業のスコアは組織・責任体制で57%、 業務プロセスで50%高く、同様に大きな差が見られます。企業がAI活用を全社的に拡大するためには、責任体制の明確化や、AIを日常業務に組み込むためのプロセス整備が重要な課題であることが示されています。
図2 AI活用を支える6つの項目 リーダー企業と全体との比較
日本のAI活用「リーダー」企業の96%がAI責任者を設置
AI活用におけるオペレーティングモデルの成熟度についても、全業界に共通した傾向が見られます。戦略やガバナンスの点では整備が進んでいる一方で、それを支える基盤である組織体制や業務プロセスの整備が追い付いていないのが実情です。その背景には、企業における組織横断的な変革の難しさがあります。戦略の策定や方針の決定は経営会議などで進められる一方、役割や権限の見直し、部門をまたぐ業務プロセスの再設計には、より多くの時間と労力を要します。そのため、多くの企業でこうした取り組みは後回しになり、AI活用の全社展開を妨げる要因となっていると考えられます。
こうした組織構造の課題を解消するうえで、まず重要なのが、AI活用を統括する責任者を明確にすることです。日本のリーダー企業では96%(グローバル92%)が正式なAI責任者を設置している一方、AI導入とオペレーティングモデルの成熟度が初期段階にある企業では16%(グローバル20%)にとどまります。
責任者には、単に肩書きを与えるだけでなく、専任の予算と、部門をまたいで意思決定を行う権限を持たせることが重要です。リーダー企業では、経営幹部に報告する部門責任者が、予算執行権限を持ちながら、ビジネス部門とIT部門を横断して組織全体のAI活用を推進しています。
AIのROIを包括的に測定している日本企業はわずか8%
AI活用を継続的なビジネス成果につなげるには、導入後ではなく、プログラムの開始段階から成果を測定することが重要です。 AI活用による成果の評価には、導入前の状態と比較し、成果指標を明確にする必要があるからです。しかし実際には、 AIのROIを包括的に測定している企業は、グローバル全体でわずか11%にすぎません。
日本では、AIのROIを包括的に測定している企業は8%にとどまり、グローバルの11%を下回っています。さらに、先進的な取り組みを進める国内のリーダー企業の中でも33%にとどまり、グローバルのリーダー企業の44%を下回る数値です。また、ROI測定に取り組む企業の中でも、成果をAI施策に適切に結び付けて評価できず、効果の可視化に課題を抱える企業は、日本で32%に上ります。これはグローバルの28%より高い水準です。日本企業におけるAI導入の大きな課題として、効果測定の指標が定まっていないことがうかがえます。
AI導入を本番環境につなげる仕組みづくりが重要
日本の企業内で提案されたAI活用の取り組みの中で、本番環境へ移行する前に85%が脱落します。そのうち53%が本番環境以前にIT評価とセキュリティ審査の段階で見送られています。
図3 日本企業において、AIを活用した業務改善や新規事業の提案(ユースケース)が100件あった場合、そのうち何件が各プロセスを通過するか
課題となるのはAI導入の提案そのものではなく、企業側に、AI活用の取り組みを本番環境へスムーズに移行するための、承認済みプロセスが十分に整っていないことにあります。具体的には、承認済みのシステム連携方法、標準化されたセキュリティ審査、あらかじめ確保された予算項目などがなければ、提案のたびに必要な確認や手続きをゼロから進めることになり、成功に至る可能性が大きく低下してしまいます。
国内の例を見ても、リーダー企業においては、79%の企業がパイロットプロジェクトの50%以上を本番環境へ移行できています。AI活用を拡大するには、個々の取り組みを立ち上げるだけでなく、実験から本番環境へ移行するための仕組みをあらかじめ整えておくことが重要です。
日本のリーダー企業に見る、AI活用を支える長期的な投資
リーダー企業は、同じテクノロジーを活用しながらも、その他の企業より1.4~1.6倍の価値を引き出しています。使っているモデルは同じでも、それを支える組織や業務の仕組みが異なるのです。
日本では、AI活用を進めるリーダー企業の54%がAI活用に向けて18カ月以上の予算を確保しており、グローバルのリーダー企業の44%を上回っています。一方、全体では日本が34%、グローバルが37%となり、日本のリーダー企業はグローバルと比較して長期的な投資に積極的である一方、日本の企業全体では、長期的な予算確保が相対的に進んでいないことがわかります。
責任体制が整うことで、成果測定に必要な予算や仕組みが確保されます。成果を可視化することで、ビジネス部門とIT部門が共通のデータに基づいて議論できるようになり、部門間の連携や失敗から学び改善につなげる取り組みが促進されます。そして、そうした人材や取り組みの成果が、さらなる責任体制や投資の必要性を示します。このサイクルが繰り返されるたびに、「停滞期(Frozen Middle)」にとどまる企業とのAI活用の差は広がっていきます。
新しいツールを導入する前に取り組むべきこと
AI活用を全社的に拡大・定着させるには、テクノロジーを導入するだけでは十分ではありません。誰が責任を持ち、どのように成果を測定し、どのように組織や業務を変えていくのか。こうした組織運営の仕組みを整え、継続的に改善していくことが、AI活用を次の段階へと進め、持続的な成果を生み出す鍵となります。
自社のAI活用が現在どの段階にあるのか、そしてリーダー企業はどのようにAI活用を進めているのか、詳しくはレポート全文をご覧ください。
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