データは現代ビジネスを動かす新たな資産です。しかし、その真の価値は、データからアクションにつながるインサイトを引き出す力に左右されます。デジタルデータが爆発的に増加し、web 分析プラットフォームも高度化が進む一方で、多くの企業はいまだそのポテンシャルを十分に発揮できていません。
アドビのお客様の多くは、データからアクションにつながるインサイトを得ようとする際、まずAdobe Analyticsの機能から入ろうとする傾向があります。しかし推奨するのは、まず大局的な視点から始めることです。自社の収益拡大やコスト削減に直結する最上位のビジネス目標を見渡すところから始めてください。4つのステップを通じてビジネス目標をAdobe Analyticsの機能へと落とし込むことで、製品をより体系的かつ効果的に活用することができます。
ステップ1:最上位のデジタル目標を特定する
この最初の段階では、次の2つのキー要素を整理する必要があります。
- 収益と効率のあらゆる領域を網羅する、最上位のキービジネス目標 (KBO)
- これら2つの価値指標を向上させるために必要な、デジタル固有のアクション
例えば、アドビが支援したホスピタリティ業界のグローバルリーダー企業は、3つの重点領域を設定し、それぞれにKBOを定めていました。その内容は以下のとおりです。
- 予約数の増加によるゲストジャーニー全体での価値の最大化
- アクティブなロイヤルティ会員の拡大による顧客関係の強化
- マーケティングコストの削減と業務効率の向上による効率化の推進
各KBOに対して、達成に必要な具体的なアクションを特定しました。「予約数の増加による価値の最大化」というKBOの場合、このホスピタリティ企業はサイトのナビゲーション改善やサイト全体へのパーソナライゼーションの展開など、具体的な価値ドライバーへの対応が求められました。
包括的なKBOとデジタル施策のリストを策定することで、この企業は分析アプローチの強固な基盤を構築することができました。そして今や、Adobe Analyticsを活用したすべての分析が、これらの最上位目標を支えるものとなっています。
ステップ2:目標達成に不可欠なキー分析とジャーニーステップを特定する
KBOを推進するアクションを特定しただけでは、基盤を整えたに過ぎません。社内目標の整合を図るとともに、お客様視点に立ち、最適化すべきジャーニーステップを具体的に定めることが不可欠です。
ジャーニーマップを作成してタッチポイントを各フェーズに紐付けることは一般的な手法ですが、お客様の行動や嗜好を明らかにするための質問リストを体系的かつ一貫した方法で整備している組織は多くありません。多くの場合、お客様の行動に「耳を傾ける」前に、何が必要かを先回りして決めてしまう傾向があります。これは、発見のための根拠を持たないまま、いきなりAdobe Analyticsの製品機能に飛びつくという大きな傾向とも根本的に共通しています。
企業は、ユーザーエクスペリエンスの改善方法に加え、webサイトのナビゲーション向上やパーソナライズ機能といった価値を創出する要因にどう対応するかを問う質問を策定する必要があります。
ホスピタリティ業界のクライアントを例に見ると、ゲストのジャーニーの各ステージで、お客様視点と企業視点の両面から重要な質問が設けられていることがわかります。たとえば、リサーチステージでは、「サイトのどの種類のページから訪問者が離脱しているか?」という重要な質問があります。この質問は、「旅行計画をお客様にとってよりスムーズにするにはどうすればよいか?」という課題解決に役立つと同時に、「予約を妨げる障壁を取り除いてコンバージョン率を高めるにはどうすればよいか?」という問いにも応えるものです。
各分析タイプのパフォーマンストラッキングは、それぞれ異なるビジネスユニットが担当する場合があります。たとえば、有料メディアグループがトラフィックソース分析を担当し、eコマースグループがサイトパフォーマンス分析を担当するケースが典型的です。しかし、カスタマージャーニー全体で実施されるすべての分析を一元的に把握することで、Adobe Analyticsから最大限の成果を引き出すことができます。具体的には、分析対象データに関するクロスファンクショナルな整合、KPIの統一、そして未解決の課題に対処するアカウンタビリティの仕組みの確立が実現します。
ステップ3:各分析タイプに最適な実行環境の決定
従来、特に大規模で複雑なビジネスを持つ組織では、チャネルやジャーニーステージをサイロで管理してきました。これはお客様の一元的なビューを妨げるだけでなく、web分析の観点からも非効率を招きます。Adobe Analyticsなどのベンダーソフトウェアを活用する能力がビジネスユニットごとに異なるためです。その結果、組織全体での導入に一貫性がなくなったり、Adobe Analyticsに加えて自社プラットフォームを保有している場合には分析が重複するケースも生じます。
お客様のジャーニー全体を横断する質問リストを起点にすることで、分析プラットフォームを最大限に活用する方法と、ツールの利用権限を付与すべき担当者をトップダウンで特定することができます。企業が独自の社内分析プラットフォームを持っている場合、まず取り組むべきは、どの主要な分析領域をどの環境で実行するかを見極めることです。
引き続きホスピタリティ業界のクライアントの例で説明すると、トラフィックソース分析を実施する場合、Adobe Analyticsをメインの分析環境として使用することで、認知から宿泊予約まで、ゲストのジャーニー全体を把握することができます。このツールにより、サイト訪問者のトラフィックの流入元と、そのトラフィックがサイト到着後にとる行動を追跡することができます。さらに、ホスピタリティ企業は、一貫したキャンペーン分類をAdobe Analyticsにインポートするといった依存関係も考慮する必要があります。分析プラットフォームの価値は、その実装とデータ収集ガバナンスの質によって決まるためです。
また全体として、分析の実施環境を決定する際には、Adobe Analytics固有の機能だけでなく、その制限についても考慮することが重要です。例えば、サービス/予約分析の場合、データにお客様の個人識別情報が含まれているため、クライアント所有の環境がより適切な選択肢となります。
ステップ4:Adobe Analyticsの現状活用を見直し、課題に対処する
ビジネス目標の整合、適切な質問の設定、そして調査実施環境の決定を経た今、Adobe Analyticsの製品機能を体系的に活用するための準備が整いました。
実際に、このメソドロジーを実践するにあたり弊社が支援した全国規模の小売業者の1社は、Adobe Analyticsの活用における課題を特定することができました。その結果、これまで見逃されていた収益向上とコスト削減の価値が明らかになりました。
この例では、ある企業がAdobe Analyticsの各機能の活用状況を評価し、それぞれの機能をビジネス目標に紐付けました。重要な点として、この作業は必ずしも機能とビジネス目標が1対1で対応するわけではなく、複数の目的に活用できる機能も存在します。その典型例がフォールアウトレポートです。フォールアウトレポートは、訪問者がサイトのどの段階で離脱しているかを把握するためのツールです。この機能をビジネス目標に照らし合わせると、小売業者はサイトトラフィックの拡大とサイト収益の向上という2つの目標に役立つことを確認できました。ビジネス目標を明確に示すバリューマップを起点にしていなければ、どう活用すべきかわからないフォールアウト率のデータが大量に蓄積されるだけに終わっていたかもしれません。
トラフィック増加の観点では、買い物客がサイトのどの段階で離脱しているかを把握することで、自社メディアや有料メディアチャネルでリターゲティングを実施すべき訪問者のアクションを特定することができます。カート放棄は多くのeコマース事業者が広く採用しているトリガーですが、購買ジャーニー全体のフォールアウトを分析しなければ、購入意欲が高いにもかかわらずカートへの追加に至らない訪問者を取り戻す機会を見逃してしまうかもしれません。
フォールアウトの発生ポイントを特定することは、サイトのフローに潜む問題や不適切な構造を明らかにし、サイト全体の収益向上にも貢献します。例えば、サイト内検索機能を利用する訪問者セグメントのフォールアウト率が時間とともに上昇している場合、それは検索・発見ツールの改善を検討すべきサインかもしれません。あるスポーツ用品小売業者が検索クエリを詳細に分析したところ、満足度の低い訪問者が取り扱いのないサイクリング用品ブランドを繰り返し検索しているという傾向が浮かび上がりました。この発見が契機となり、その小売業者はやがてそのブランドをwebサイトで取り扱うことを決定しました。
Adobe Analytics投資の費用対効果を高める
Adobe Analyticsの機能に紐づくビジネス向けユースケースは無数に存在します。最終的には、バリューチェーン全体のすべてのビジネス目標に上記のロジックを適用できる状態が理想です。どの機能がどのビジネス目標に対応しているか、現在十分に活用されていない機能はどれか、そしてクライアント固有の機能活用によって失われた価値をどのように回収するかを明確に把握することが目標です。こうして、分析プラットフォームを隅々まで活用し、投資対効果を最大化するために何をすべきかを理解できる、まさに理想の状態に到達することができます。手段からではなく最終目標を起点に取り組んだからこそ、ツールをより効果的に使いこなし、ビジネスインパクトを生み出し、カスタマーエクスペリエンスを向上させることができるのです。
アドビの同僚、デジタル戦略アソシエイト ケイティ クック氏、デジタル戦略グループ プリンシパル リシャブ ダヤル氏、トラベル&ホスピタリティ デジタル戦略責任者 アルバート バハル氏の貢献に感謝します。