【Adobe Summit 2023 Report】 シスコのWebサイト改革は、「リイマジン」の精神で想像力を働かせ、ゼロベースで考え直す

Adobe Summit 2023では、さまざまな業界向けに、製品やソリューション、事例について取り上げる数多くのセッションが開催されました。その中で、製造業界向けのセッションでは、ネットワーク機器開発/販売の世界最大手であるシスコ社の事例が注目を集めました。

もくじ

  • 想像力を働かせ、ゼロベースで考え直し、本格的なパーソナライズを可能に
  • 3年プロジェクトの1年目が完了。成功の指標となるKPIはすべて正しい方向に向かっている

想像力を働かせ、ゼロベースで考え直し、本格的なパーソナライズを可能に

シスコ社は、近年そのビジネスモデルを大きく変化させています。機器の販売・アフターサポートが中心ではなく、ソフトウェアの提供やサブスクリプション契約を含むビジネスポートフォリオへの移行を進めており、いまではビジネスの44%が新領域。しかしながら、同社のWebサイトは以前のままのデザインで、機器の機能説明が中心でした。ソフトウェア会社のような見せ方ではなく、サブスクリプション契約を促すような仕掛けも作り込めていませんでした。

同社は既存事業の強化や、事業領域の拡大を目指し、積極的なM&Aを展開してきたことはよく知られています。すでに世界的な大企業となった現在もM&Aの手はゆるめず、スピード感をもって成長し続けています。一方、M&A後に実施する事業統合の過程で、Webサイトの複雑性が増すという問題は常に抱えていました。既存のブランドを残す形であればデザイン上の大きな問題はありませんが、パーソナライズを進めるとなると顧客を単体で見てポートフォリオのすべてをまたいだ行動を分析する必要が出てきます。

多数のM&Aにより、ビジネスの見せ方にも工夫が必要になります。新たなビジネスモデルへ移行し、シンプルでわかりやすい価値提供を目指すにあたって、それを後押してくれるWebサイトが必要になったのです。

デジタルエクスペリエンス担当シニアディレクター Monica Koedel氏は、「顧客は、シンプルで、魅力的で、人間らしさがあり、自分自身について深く知った上でパーソナライズした体験を届けてくれるWebサイトであることを期待しています」と話します。「そのために、私たちは、cisco.comをリイマジン(=再考)する必要がありました。進化させるのでも、変革するのでもありません。想像力を働かせてゼロベースで考え直し、本格的なパーソナライズを可能にする新たなプラットフォームを作り上げようとしたのです」と話します。

58か国に展開し、年間に5000万人のユニークビジターがあり、年間13%トラフィックが増えているこの企業の顔を、リイマジンする大掛かりなプロジェクトです。シスコはアドビとシステムインテグレーターを加えた3社でプロジェクト体制を組み上げました。シスコには、エンパワーメントの文化があります。全社的なプロジェクトであり、すべての関係者がバーチャルなクロスファンクショナルチームを組み、自発的に推進体制を支えてくれるよう働きかけました。

マーケティングオペレーション担当シニアディレクター Chad Reese氏は、「お客様が何を必要としているのかを理解し、それを提供する必要がありました。さらに、お客様のニーズを充たす体験を提供することも必要です。そして、顧客体験の変革には、プラットフォームとアーキテクチャを変革しなければなりません。そのため、デジタルに対応できるプラットフォームとアーキテクチャを備えていることをシステム要件とし、Adobe Experience Manager as a Cloud Serviceを選定しました」と話します。

3年プロジェクトの1年目が完了。成功の指標となるKPIはすべて正しい方向に向かっている

プロジェクト期間は3年間を想定しています。2022年は基礎固めの年ですが、すでに2000ページを新プラットフォームへ移行。いくつかの成果を得ることができています。

まずは、Adobe Museを活用してテンプレート化を進めたこと。外注するコンテンツ制作業者に統一されたデザイン内にコンテンツを収めるように要請しました。これにより、顧客に均質な体験を提供するとともに、検品時の業務負荷を削減することができました。

パーソナライズしたページでは、顧客が興味を持ってくれてさまざまなページを回遊してくれることもわかりました。パーソナライズしていないページに比べると、パーソナライズしたページを起点とする回遊率は6倍に達し、クリックスルーやコールトゥアクションといったコンバージョンは6~7倍になりました。ページのロードタイムが改善したこともこの結果に寄与しているかもしれません。新プラットフォームでは、以前のものより46%素早くページが表示されるようになっています。

「さらに、購入アクションは31%増加しました。これは、オンラインで購入してくれる人が1か月あたり1000人増えたことを意味します。今後、Webサイトだけでさらにクロスセルやアップセルを成功させることができれば、大きなビジネスインパクトをもたらしてくれるでしょう」(Koedel氏)。

現在、プロジェクトは2年目に入っています。さらなる活用と全世界への展開を完了させ、3年目には完全に統合された1つのプラットフォームのもとでさまざまなパーソナライズ施策を展開できる見込みです。Reese氏は、「現在のところ、成功の指標となるKPIはすべて正しい方向に向かっています。柔軟なアーキテクチャを手に入れたことで、M&AでWebサイトを統合する際に、“必要な機能がないから統合できない”と言われることはなくなるでしょう」と話してくれました。

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