MAの運用を成功させるには?業務内容や失敗例、ポイントを解説
MA(マーケティングオートメーション)の運用を成功させるコツについて、ツールの導入前に把握しておきたいという方も多いでしょう。
実際、近年の急速なデジタル化、デバイスの多様化などを受けて、MAを導入する企業は急増していますが、運用の段階で壁にぶつかるケースが少なくありません。
この記事では、MA運用の業務内容や解決できる課題、運用を成功させるためのポイントなどを解説します。MAを活用できていないマーケティング担当者や、MAの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
MA(マーケティングオートメーション)とは?
そもそもMA(マーケティングオートメーション)とは、見込み顧客(リード)をターゲットにした一連のマーケティング活動を可視化し、自動化するツールのことです。
MAツールで管理する活動は、大きく以下の3つに分けられます。
- 見込み顧客の獲得(リードジェネレーション)
- 見込み顧客の育成(リードナーチャリング)
- 見込み顧客の選別、抽出(リードクオリフィケーション)
現在では、様々な企業が異なる特徴を持つMAツールを提供しているので、自社に最適なツールを選定することが大切です。
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MAツールの導入が増加している理由

近年、MAツールを導入する企業が増加している背景には、大きく分けて2つの理由があります。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
インターネットの普及による顧客行動や購入プロセスの多様化
インターネットの普及によって、顧客の購入行動や購入プロセスには大きな変化が生まれました。製品やサービスに興味を持った顧客は、従来のように営業担当者の連絡や訪問を待つことなく、自ら検索して情報を収集するようになったのです。
その結果、営業担当者がアポイントをとろうとしたときには、製品の選定はおろか、購入まで完了していることが珍しくなくなりました。
自社の製品やサービスを選択肢に加えてもらうには、顧客に対してできるだけ早く接触機会を持ち、購入意欲の変化に応じてアプローチしなくてはなりません。
多様化/複雑化する顧客の行動に対して、オフラインでもオンラインでもすばやく対応していくために、マーケティング活動を自動化してくれるMAへの関心が高まっています。
既存顧客へのマーケティングの見直し
営業のプロセスのうち、顧客との接点づくりが最も時間とコストを必要とします。
新規開拓営業は顧客との接点づくりを避けられませんが、既存営業は顧客との接点づくりにかかる時間とコストを省くことが可能です。
経営状態の変化によってコスト削減を優先する企業が増え、新規顧客よりも低コストで売上を獲得できる既存顧客との関係維持が重視されるようになりました。
そのため、既存顧客の情報を一元管理し、継続的なコミュニケーションを構築するのに適しているMAツールへのニーズも増加しています。
ただし、MAツールを導入すればすべての課題を解決できるわけではありません。課題を解決できるかどうかは、ツール導入後の運用にかかっています。
MA運用の業務内容
続いては、MAツールをどのように運用していくのか、おもな業務内容を紹介します。
顧客情報管理
企業は、展示会への出展やセミナーの開催、テレアポ、web広告、コンテンツマーケティングなど、オフライン/オンラインの多様な方法で見込み顧客の情報を獲得します。
こうした情報は、オフラインなら名刺、オンラインなら申込みフォームといったように、形式がバラバラになりがちです。また、営業担当が個人で情報を管理していたり、部署ごとにExcelなどで管理していたりと、管理方法が統一されていない場合もあります。
MA運用においては、交換した名刺をはじめ、収集したメールアドレスや個人名(企業名)、既存顧客との取引履歴など、あらゆる顧客情報を集約して一元管理します。
メール配信
MAツールは、すべての顧客に同一の情報を一斉送信できるのはもちろん、以下のようなメールも配信可能です。
- 設定されたシナリオに沿って内容を変えていくステップメール
- 設定したトリガー(特定の行動)に応じて配信されるトリガーメール
MA運用では、メールの開封率やクリック率の測定のほか、メールからの流入によるアクセス履歴のトラッキングも行います。これらの情報をもとに、顧客一人ひとりが興味を持っているポイントや、その移り変わりを視覚的に把握して、適切な施策につなげます。
なお、メールマーケティングについては、下記のページから無料でダウンロードできるeBookで詳しく説明しているので、併せて参考にしてください。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/offer-003329-ma-basic-email-marketing
シナリオ設定
MAツールには、行動や属性に応じてセグメントした顧客に自動的にアプローチできるよう、シナリオ設定機能が搭載されています。シナリオとは、マーケティングで求める成果を得るための筋書きのことです。
シナリオ設定機能を活かし、MA運用では「このwebページを見た顧客にこのメールを送信する」といったシナリオを設定しておきます。これにより、タイミングを逃さず顧客にアプローチすることが可能です。
MAのシナリオについては、下記の記事で詳しく説明しています。
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リードスコアリング
MA運用で実施する「リードスコアリング」とは、見込み顧客の行動に応じて点数をつけることです。
リードスコアリングを行うと、点数によって受注確度が高い顧客を可視化できたり、リスト化して営業に提供できたりするというメリットがあります。
リードスコアリングについては、下記のeBookで詳しく説明しているので、併せて参考にしてください。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/offer-ma-dg2ls
Webページ構築
MAツールを活用すれば、ランディングページや問い合わせフォームなどのwebページを、デザイナーやエンジニアに依頼しなくても簡単に作成できます。
ただし、最適なwebページであり続けるためには、内容を常に改善する必要があります。Webページの構築に加え、内容の維持管理もMA運用の大切な業務内容です。
コンテンツのパーソナライゼーション
MA運用では、webサイトに来訪した顧客の情報をもとに、適切なコンテンツを表示します。
ツールによってはAIを活用し、webサイト上のあらゆるコンテンツの検索や分類を自動で行い、顧客に最適なコンテンツを瞬時に選び出すことも可能です。
コンテンツのパーソナライゼーション機能については、下記のページで詳しく説明しています。
【Adobe Marketo Engage】
SFAやCRMとの連携
MAツールは、営業支援ツールのSFA(Sales Force Automation)や、顧客管理ツールのCRM(Customer Relationship Management)と連携できます。
MAとSFAやCRMが連携することで、見込み顧客の獲得からリピーター創出までのマーケティングを、より効率化することが可能です。
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MA運用で解決できる課題

MAの運用によって、マーケティングの様々な課題を解決できます。ここでは、どのような課題を解決できるのか具体的に紹介します。
顧客のニーズの取りこぼし
顧客が増え続けると、各顧客と充実したコミュニケーションをとることが難しくなるでしょう。その結果、顧客のニーズの変化を見極められないという課題が生まれます。
MAを運用すれば、顧客情報を一元管理し、顧客の行動を可視化できます。よって、ニーズが顕在化したタイミングでの速やかなアプローチが可能になり、顧客のニーズを取りこぼす心配がありません。
マーケティング担当者の負担増大
顧客や施策が増加すると、マーケティングが複雑になり、マーケティング担当者の負担が増加します。
マーケティング担当者が手作業で行っていた作業をMAで効率化すれば、マーケティング担当者の負担を軽減可能です。また、空いた時間でほかの業務を行うことで、生産性の向上も期待できるでしょう。
非効率的な営業
マーケティングの段階で顧客の購入意欲や受注確度を把握できていないと、営業が非効率になり、契約や売上などの成果が挙がらないという課題が発生してしまいます。
MAの運用により、顧客の購入意欲を高めて受注確度を見極めたうえで、優先順位を付けて営業ができるようになるので、営業を効率化することが可能です。
既存顧客のLTVの低迷
企業が安定的な売上を得るためには、既存顧客のLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)向上が重要です。
MAツールでは、最初にシナリオを設定するだけで、既存顧客へのアプローチを自動化できます。MAを運用して既存顧客に継続的なアプローチをすることで、LTV向上が期待できるでしょう。
MA運用時のよくある失敗
ここでは、MAを運用する際に陥りやすい、失敗パターンを紹介します。
ツール導入の目的が明確でない
自社の課題と、そのソリューションとなる施策が結びついていないと、MAツールを導入しても成果を実感できません。
「ツールを導入しただけ」の状態にならないよう、何のためにMAツールを導入するのか、成果として何を求めるのかを念頭に置きつつ運用しましょう。
運用体制が整っていない
MAツールを扱える人材の不足は、MAを運用している企業によく見られます。
MAを運用するには、戦略設計、データマネジメント、コンテンツマネジメント、分析といった役割と、実施するためのスキルが必要です。
MA運用への理解が不十分でリソースが不足していると、必然的に「できる人」に依存して属人化した運用体制になり、組織としてツールを使いこなせません。社内リソースを確保し、属人化しない運用体制を構築しましょう。
機能を十分に理解していない
MAツールは多機能なので、使いこなすには機能の理解が欠かせません。「MAを導入したが、メール配信にしか活用できていない」といったことにならないよう、機能を十分に理解して活用することが大切です。
また、MAツールは煩雑な作業の効率化に役立ちますが、導入しただけですべての作業が自動化されるわけではありません。
他社のMA導入事例をもとに、どのようなシナリオを実現できるのか、どのように社内の仕組みづくりができるのかを考えることが、MAの効果的な運用につながります。
アドビのMA製品「Adobe Marketo Engage」の導入事例は、下記のページからご確認ください。
【Adobe Marketo Engage】
配信するコンテンツが足りない
MAの効果を実感するためには、webサイトやオウンドメディア、SNSなど、顧客とのタッチポイントに存在する各種コンテンツの充実が絶対条件です。
コンテンツを充実させ、顧客の状態(ステージ)に応じた最適なマーケティングを実施することで、購入意欲を高めていくことができます。
なお、コンテンツはリッチなものでなくても構いません。営業資料や社員のブログなど、自社で蓄積されている情報が活用できる場合もあります。
社内でリソースを確保することが難しい場合は、コンテンツ制作を外注するのもおすすめです。
MA運用を成功させるための8つのポイント

ここでは、MAの運用を成功させるコツを紹介します。
1.ツール導入前の要件定義
MAでマーケティングを「自動化/効率化」できることばかりに注目し、ツール導入そのものが目的になると、運用の段階でつまずいてしまいます。
まずは「何のためにMAツールを導入するのか」を考え、ツールの要件定義をしましょう。要件定義の際には、現在のマーケティングにおける課題や強化したいポイント、ボトルネックになっている作業を確認しておくのがおすすめです。
2.自社に適したツールの選定
課題や強化ポイントが明確になったら、導入するツールを検討しましょう。
ツールはMAだけでなく、名刺管理ツール、SFA、CRMなども対象です。MAとそのほかのツールを併用している企業も多くあります。
- 課題解決のために最も必要な機能は何か
- ビジネス全体にインパクトを与えられるか
- 導入後に業務の効率化や高度化が望めるか
以上のような点を考え、自社にマッチしたツールを選定します。ITリテラシーの高い人が少ない場合や、何から始めていいかわからない場合は、ヘルプ機能やサポート体制なども比較しましょう。
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3.運用体制の構築
ツールの選定が終わったら、運用体制を構築します。運用体制を構築する際には、下記の3点に注意しましょう。
リソースの確保
初めに、MAの運用に必要なリソースを確保します。限られた人に負荷が集中して属人化しないよう、MAの運用責任者を筆頭に、メールマーケティング、効果測定、顧客管理など、必要な業務ごとに担当者を配置できるとよいでしょう。
手間がかかるプロセスには、複数名の担当者を配置するのが理想です。その際には、業務ごとに責任者を決めることで、業務の抜け漏れを防げます。
ツールの連携準備
運用体制には、ツールの連携準備も含まれます。
以下のように、既に導入しているツールがある場合は、導入を予定しているMAツールとの連携がスムーズにできるかどうかを確認しましょう。
- CRMやDMP(データマネジメントプラットフォーム)などのデータ基盤
- チャットボットやSMSなどのコミュニケーションチャネル
併せて、MAをスムーズに運用にできるよう、webサイトの構築も行っておきます。
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連携部署との役割分担
運用体制を構築する際には、営業部門やカスタマーサービス部門など、社内の連携部署との役割分担も明確にしておきます。
4.ツール提供企業のサポート体制の確認
マーケティング担当者のスキルや知識が不足している場合は、MAツール提供企業のサポート体制も確認しておきましょう。
アドビが提供するMA製品「Adobe Marketo Engage」では、下記のようなサポートを行っています。
初期導入支援:Launch Pack
初期導入支援では、社内で基本的なオペレーションが可能な状態を目指します。
具体的には、コンサルタントがAdobe Marketo Engageの基本機能をお伝えしつつ、初期キャンペーンのローンチと効果測定を支援します。
マーケティング戦略立案支援:Strategic Engagement Service
マーケティング戦略立案支援で提供しているのは、カスタマージャーニーの見直しを通じた戦略立案や、運用体制の構築といったコンサルティングサービスです。
企業ごとに、担当のコンサルタントをアサインします。
システム連携開発支援:Technical Service
システム連携開発支援では、多様なスキルセットを持ったコンサルタントが、Adobe Marketo Engageと他社ツールの連携開発を支援します。
支援対象は、各種CRM連携開発、3rd Partyシステムとの連携開発のほか、他社のMAツールからのデータやコンテンツの移行なども行います。
トレーニング
Adobe Marketo Engageのユーザー向けに、有償トレーニングを定期的に開催しています。初級/中級/上級のトレーニングがあり、ユーザーの習熟度に合わせて受講可能です。
なお、Adobe Marketo Engageのサポート体制については、下記の記事でも詳しく説明しています。
【Adobe Marketo Engage】
5.顧客データの蓄積
MAが単なるメール配信ツールにならないよう、営業およびマーケティングの状況を可視化できるだけの顧客データを収集し、蓄積させましょう。
顧客データの収集にあたっては、以下のようなツールとの連携がおすすめです。
- 各種サーバーに蓄積されるビッグデータや自社のwebサイトのログデータなどを集約して管理するDMP
- 組織データを収集、蓄積、分析して意思決定を助けるBI(ビジネスインテリジェンス)ツール
顧客の行動データが不足していて状況を把握しにくい場合は、顧客に行動してもらうためのシナリオを設計して、データの蓄積から始めることもあります。
6.カスタマージャーニーマップの作成
MAの運用で欠かせないのが「カスタマージャーニーマップ」の作成です。
カスタマージャーニーマップは、顧客が自社の製品やサービスを認知してから購入するまでの流れにおける感情や思考の変化、それに付随する行動を時系列に可視化したものです。
企業との接点などの外的要因によって変化する顧客の状況を、客観的かつ視覚的に把握し、正しい判断につなげるために活用します。
カスタマージャーニーマップの大まかな作成手順は、以下のとおりです。
- ペルソナ(典型的なユーザー像)を設定する
- ペルソナの行動を細分化する
- ステージごとに、ペルソナの心理を想定する
- ペルソナとのタッチポイントごとの施策を策定する
なお、MAはステージごとの見込み顧客の行動から購入意欲を見極めるため、見込み顧客に行動を起こさせるだけのコンテンツ量が必要です。
カスタマージャーニーマップをもとに、新たに追加/強化が必要なコンテンツを把握したら、それらのコンテンツの充実を図りましょう。
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7.KPIの設定
各施策の成果や費用対効果を検証するために、目標値となるKPIを設定することがMA運用のコツの一つです。
KPIを設定することで、施策が成功した理由や失敗した理由が明確になります。KPIの例は、以下のとおりです。
- メールクリック数、ターゲットとするコンテンツの閲覧数
- キャンペーンへの申込数
- ホットリード創出数
- 営業へ引き継いだ案件数
- 営業へ引き継いだ案件の商談化率、受注率
- 受注単価
- LTV
KPI設定後は効果検証をして、成功要件は何か、ボトルネックは何かを見直します。施策を改善しながら、成功を再現できる仕組みを整えましょう。
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8.スモールスタートを意識
ここまで様々なポイントを紹介してきましたが、大切なのは「無理のない範囲から始める」ことです。最初から完璧なMA運用を目指そうとすると、逆に失敗しやすくなります。
シナリオはシンプルに設計し、メール配信などの施策も必要最低限なものに絞って、スモールスタートするとよいでしょう。慣れてきたら徐々に範囲を広げてみてください。
MAの運用を成功させるには事前準備が重要

MAは、マーケティングを自動化/効率化し、マーケティング担当者の負担を軽減できるツールです。ただし「導入して終わり」「メール配信ツールとして使っているだけ」といった状態に陥らないためには、事前準備が重要です。
Adobe Marketo Engageは、豊富な機能を備えているだけでなく、導入後の運用が不安な担当者のために、トレーニングやコンサルタントによるサポートが充実しています。
マーケティング担当者がMAを使いこなし、MAをスムーズに運用できる社内体制を整えられるよう、Adobe Marketo Engageがサポートします。
Adobe Marketo Engageの運用についてさらに詳しく知りたい方は、下記のeBookをご参照ください。
Adobe Marketo Engageで成果の出るMA運用を
MA運用では、顧客情報の管理をはじめ、メール配信やリードスコアリングなどの様々な業務を行います。
まずは現在のマーケティング活動を見直し、ほかのツールとの連携も加味してMAツールの必要性を検討しましょう。併せて、ツール導入後のサポート体制についても確認しておくと安心です。
アドビのMA「Adobe Marketo Engage」は、MA運用を成功させたい方にぴったりのツールです。Adobe Marketo Engageを活用し、マーケティングの課題解決を目指しましょう。
(公開日:2022/9/15)