アドビは2026年8月4日、TAKANAWA GATEWAY Convention Centerにおいて、「Adobe Summit Tokyo」を開催しました。本イベントは、2026年4月に米国Las Vegasで開催された「Adobe Summit」をベースに、基調講演や顧客事例、実践型セッション、来場者同士のネットワーキングなど、AIを成果につなげるヒントを共有する場となりました。
Agenda
●メインセッション
・Adobe Summit Tokyo 2026 keynote
・Customer Fireside Chat:NVIDIA
・Strategy keynote ① AI/Agentic 事例紹介:カシオ計算機株式会社
・Strategy keynote ② Brand Visibility 事例紹介:KDDI株式会社
・Strategy keynote ③ Customer Engagement 事例紹介:ディップ株式会社
・Strategy keynote ④ Content Supply Chain 事例紹介:アドビ株式会社
・Japan Adobe Advocates授与式
・ネットワーキング
●Hands-on labsセッション
・Adobe Experience Manager Sites
・Customer Journey Analytics + Journey Optimizer
・Firefly Enterprise + Workfront
「Adobe Summit」で発表された新ソリューションを紹介
<Adobe Summit Tokyo 2026 keynote>
幕開けとなる基調講演「Adobe Summit Tokyo 2026 keynote」では、アドビの三石 バンデラス 竜史と澤田慶子が登壇しました。
ここでは、エージェント型AIの急速な進化に伴い、チャンネルが多様化し、AIがブランド発見の主役となっていることを説明。また、2026年4月のAdobe Summit 2026で発表されたAdobe CX EnterpriseやAdobe CX Enterprise Coworkerを紹介、これらを活用したマーケティング業務自動化のデモが披露されました。
アドビ株式会社
デジタルストラテジーグループ
執行役員 本部長
三石 バンデラス 竜史
アドビ株式会社
ソリューションコンサルティング部
シニア ソリューション コンサルタント
澤田 慶子
<Customer Fireside Chat>
「Customer Fireside Chat」では、NVIDIAの堀内朗氏が登壇し、アドビの松山敏夫が実践事例について聞きました。
堀内氏は、AIを「知識を答える存在」から「仕事の成果を生み出す存在」へと進化させる取り組みを紹介。スモールスタートからデータを蓄積し、2024年以降は自律的にタスクを遂行するエージェント体制を確立、現在は複数のエージェント同士が連携し合うマルチエージェント体制を構築できていると言います。
堀内氏は「Adobe Experience Cloudを含むマーケティング基盤上で、マルチエージェント活用を進めており、エージェントがアイデア出しや基本業務を担い、オーケストレーションや戦略的な意思決定などのより高度な判断を人間が行うことで、効率的なマーケティング運用体制を実現しています」と語りました。
NVIDIA
エンタープライズマーケティング本部
本部長
堀内 朗氏
アドビ株式会社
チーフ トランスフォーメーションオフィサー
専務執行役員
松山 敏夫
Strategy keynoteの各テーマに沿った4つの事例
「Adobe Summit Tokyo 2026 keynote」では、メインセッションとして4つのStrategy keynoteを開催。いずれも、まずはアドビがテーマの概要とテーマに合致するソリューションのデモを行い、事例企業での取り組みや成果を紹介する流れで進みました。
<Strategy keynote ① AI/Agentic 事例:カシオ計算機株式会社>
最初のテーマは「AI/Agentic」で、セッションタイトルは「AIの“実験”から、顧客体験を動かす“成果”へ」。事例はカシオ計算機株式会社の顧客体験(CX)変革の取り組みが紹介されました。セッション最初の登壇者、アドビ 鵜瀬総一郎は、AIが購買の入り口となる中、「企業はAIをツールではなくチームメイトと捉え、CXを再設計する必要があります。そのコアになるのがAdobe CX Enterpriseです」と語りました。
これを受け、Adobe Inc. のホーグ タイラーが登壇し、美容ブランドのマーケティング マネージャーとして、AIとAdobe CX Enterpriseを組み合わせたキャンペーン設計のデモを展開。
タイラーは、SNSなどで美容製品がトレンド化したケースを例に挙げ、「トラフィックの急増を検知すると、AIとAdobe CX Enterpriseが原因を分析し、製品の在庫確認やキャンペーン更新のためのクリエイティブの自動生成までを行います。トレンドに即応して施策が自動最適化されることで、製品の売上アップに寄与します」と実際の画面を示しながら解説しました。
アドビ株式会社
ソリューションコンサルティング部
執行役員
鵜瀬 総一郎
Adobe Inc.
Japan & Asia Pacific
プリンシパル プロダクト マーケティング マネージャー
ホーグ タイラー
続いて、事例紹介としてカシオ計算機の齋藤隆行氏を迎え、鵜瀬との対談を通して「AI/Agentic」の取り組みについて紹介しました。
齋藤氏は、「当社のAI活用は、議事録作成などの業務効率化が中心で、組織的な価値創出には至っていない点が課題でした」とした上で、「現在はより高い次元でのAI活用に挑戦しています」と語ります。具体的な取り組みについては、「ブランド価値の向上には、ゼロパーティデータに基づく大量の個別最適コンテンツを生成できるAIが必須です。そのため、Adobe CX Enterpriseを基盤に複数のAIエージェントとの協働を推進しています」と解説。
さらに齋藤氏によると、「AIの学習基盤を整備したことにより、顧客とブランドがAIを介して対話する体験設計が可能となり、マーケティングの高度化と顧客理解の深化が進んでいます」と成果を語りました。
カシオ計算機株式会社
デジタルイノベーション本部
副本部長
齋藤 隆行氏
<Strategy keynote ② Brand Visibility 事例:KDDI株式会社>
Strategy keynoteの2つ目のテーマは「Brand Visibility」で、セッションタイトルは「進化するブランド体験:エージェンティックweb時代の“発見される力”を設計する」。事例は、ブランドの可視性を高め、差別化を進めるKDDI株式会社の取り組みです。
最初の登壇者は、アドビ 田口恭平。AI時代には、ブランドがAIにどう認識されるかが重要になり、可視性と信頼性の最適化が求められるとの認識の上で、新しい可視性向上ソリューションのAdobe Brand Visibilityを紹介。「新しいオペレーションモデルであるExperience Flywheelである感知/生成/リーチ/学習を循環させることで、ブランド価値を高める仕組みを回し続けることができます」と効果を解説しました。
デモを担当したのは、アドビのバラハジャ ニコロ。スポーツ用品の小売企業を例に、シューズを探すユーザーがAI経由でECサイトへ移動し、コンシェルジュによる最適なシューズの提案から、在庫確認、購入、さらには地元ランニングクラブの紹介までを会話だけで完結させる様子を実演しました。
また、マーケター視点では、「インサイトを基に、キャンペーン設計から、コンテンツ生成、ガバナンスチェック、LLM向け体験のデプロイまでを複数エージェントが自動化することで、複数のチームで数週間をかけていたことが、1つのプロンプトで実行できます」と説明。「勝ち残るブランドとは、あらゆる瞬間に視界に入るブランドです」との言葉でデモを終えました。
アドビ株式会社
アドビカスタマーソリューションズ
サポート&サービスセールス統括本部
統括本部長, 執行役員
田口 恭平
アドビ株式会社
ソリューションコンサルティング部
シニア ソリューション コンサルタント
バラハジャ ニコロ
事例では、KDDIの合澤智子氏が登壇し、田口と対談を行いました。
合澤氏はまず、ブランドとしてAIに認識されなかったり、誤った価値観が伝達されたりといったリスク、クリエイティブの画一化など、AI時代だからこその課題を挙げます。そしてその対処として、Adobe Brand Visibility(導入時はAdobe LLM Optimizer)を採用し、AI上で自社ブランドがどう扱われているかを可視化し、誤情報の修正まで行える体制を構築したと説明。
また、従来の課題解決にとどまらず、今後は“人”がブランド差別化の鍵を握るとした上で、「5月に刷新したばかりの当社のブランドメッセージも、テクノロジーを通じて人と社会を輝かせるという意味で『Spark Your Journey』としました。人と会って体感することが、AI時代の差別化につながると思っています」と締めくくりました。
KDDI株式会社
ブランド・コミュニケーション本部長
合澤 智子氏
<Strategy keynote ③ Customer Engagement 事例:ディップ株式会社>
Strategy keynoteの3つ目テーマは「Customer Engagement」で、セッションタイトルは「“使うAI”から“共に働くAI”へ:エージェンティック時代のエンゲージメント」。事例は、「バイトル」を中心に求人サイトを運営するディップ株式会社の取り組みです。
セッション冒頭、アドビ 朝倉弘記が、カスタマーエクスペリエンスワークフローのエージェント型エンジン、Adobe CX Enterprise Coworkerを紹介。「ビジネス文脈やキャンペーン、オーディエンスを理解し、アドビの各ソリューションと連携しながら、柔軟な役割分担を実現します」と説明しました。
デモで登壇したアドビ 伊藤琢磨は、複数のエージェントが連携しながら業務を自動化するAdobe CX Enterprise Coworkerの仕組みを、実際の画面を示しながら解説。「トラフィック管理はもちろん、ワークフロービルダー機能を使えば、エンゲージメント低下の検知から施策判断、承認、公開、効果確認までを一貫して自動化できます」とその効果を語りました。
アドビ株式会社
カスタマーサクセス&カスタマーエンジニアリング本部
執行役員
朝倉 弘記
アドビ株式会社
ソリューションコンサルティング部
ソリューション コンサルタント
伊藤 琢磨
事例紹介では、ディップの谷田脩一郎氏が登壇して、アドビの朝倉と対談。谷田氏はディップでのAI活用について、「企業と求職者のマッチング、情報の均質化の解消、応募が伸び悩んだ際の理由特定などに活用しています」と説明。その結果、オペレーション業務の約3割が効率化できたため、人員を営業支援や価値提供に再配分していると言います。
谷田氏は、Adobe CX Enterprise Coworkerについて、「業務の自動化で同じ作業を繰り返さないワークフロー設計が可能になるので、業務やプロダクトの改善、意思決定の効率化が図れます。今後はさらに、自動化領域を拡張する上で役立つと感じています」と評価しました。
ディップ株式会社
マーケティング本部
プラットフォームマーケティング部 部長
谷田 脩一郎氏
<Strategy keynote ④ Content Supply Chain 事例:アドビ株式会社>
Strategy keynoteの4つ目のテーマは「Content Supply Chain」で、セッションタイトルは「AI時代に向けたコンテンツサプライチェーンの変革」。事例は、アドビが自社での取り組みを紹介しました。
まずは、アドビ 宇野香織がコンテンツの重要性と、現在起きている変化について解説しました。「現在はAIエージェントによるトラフィックが人間を上回り、コンテンツの量だけでなく質も問われていますが、コンテキストデータの不足が課題となっています」と、コンテンツ供給の現状を報告。
この課題に対し、統合されたエンタープライズコンテキストを実現するソリューションとしてAdobe GenStudioを挙げ、「ワークフローやコンテキスト、ブランドをつなげるコンテンツサプライチェーンを実現します」と紹介しました。
続いて、アドビ 水谷肇志がデモを披露。このデモでは、Adobe CX Enterprise Coworkerによるキャンペーン戦略策定から始まり、Adobe GenStudioを活用したブランドチェック、コンテンツの生成、チャネル別の最適化、さらにはAdobe CX AnalyticsやAdobe CX Enterpriseに組み込まれているData Insights Agentによる分析、次の改善に向けたアクションなどが示されました。
アドビ株式会社
デジタルメディア事業統括本部
エンタープライズ製品戦略部
本部長
宇野 香織
アドビ株式会社
デジタルメディア事業統括本部
エンタープライズ製品戦略部
Firefly ソリューション コンサルタント
水谷 肇志
事例として紹介されたのが、アドビ自身のケースです。アドビ 倉持亜岐が登壇しました。
倉持は、増え続けるクリエイティブ需要に対し、Adobe Experience PlatformやAdobe GenStudioで大幅な効率化を進め、工数削減やクリック数向上を実現した成果を紹介。広告制作では、生成AIツールのAdobe Fireflyがコンテンツのサプライチェーンを支えていることを報告しました。「AIによる変革で重要なのは、テクノロジーそのものではなく、いかに活用するかというマネジメントです。ワークフローとガイドラインの積み重ねが、コンテンツの未来を築いていくと考えています」との言葉でセッションを締めくくりました。
アドビ株式会社
マーケティング本部
シニア マーケティングストラテジー&オペレーションズ マネジャー
倉持 亜岐
コミュニティを広げるエキスパート表彰やネットワーキング
<Japan Adobe Advocates授与式>
Japan Adobe Advocatesとは、Adobe Experience Cloud製品のエキスパートとして、高い情熱で目標に向かってチャレンジし、ユーザーコミュニティやイベント参加を通じて社内外でマーケター市場の活性化に貢献したユーザーに贈呈する称号です。
アドビでは毎年、Japan Adobe Advocatesを選定し、「Adobe Summit Japan」で表彰を行っています。2026年に選ばれた6名の皆様に対し、授与式を行いました。
詳しくはこちらの記事をご参照ください。
<ネットワーキング>
受付ロビー全体がネットワーキングのためのスペースとなっており、参加者同士の歓談や意見交換が活発に行われました。
お客様同士の交流はもちろん、業界のエキスパートやスポンサー企業、アドビ社員とのつながりが築けるのも「Adobe Summit Japan」の魅力です。今回も参加者同士の歓談や意見交換が活発に行われ、大いに盛り上がりました。
また、会場内では軽食やドリンクが用意されたほか、スポンサーブースやAdobe Brand Visibility、Adobe Customer Journey Analyticsなどアドビ製品を直に体験することができるアドビブースが設置されました。各ブースでは、多くの来場者が担当者のサポートを受けながら製品やソリューションを体験しました。
また、その他にも特別展示として筆記用具ブランドのSharpieとコラボしたAdobe×Sharpieのブースも出展。Sharpieのペンで色付けした絵をAdobe Fireflyによって実際に動く映像に変化させる体験型ブースに参加者も驚きの表情を浮かべていました。
さらに、オリジナルサコッシュが作れるPatch Barでは、各展示ブースで配布されるチケットと引き換えに無地のサコッシュと好みの柄のパッチを入手でき、アイロンコーナーでパッチを圧着してオリジナルサコッシュが作れるというものです。
「Adobe Summit Tokyo」は参加者同士の交流から情報交換、アクティビティまで、アドビの世界を堪能できる場です。今回参加された方はもちろん、興味を持たれている方も来年の「Adobe Summit Tokyo」へのご参加をお待ちしています。ぜひ次の機会もお楽しみください。