グループ共通の「シェアハウス型」
デジタルコミュニケーションプラットフォームを構築。サイト制作・運用の負担を減らして戦略的活用を促進
三菱電機株式会社
130サイト・6,000ページ
サービス開始後1年での移行数
導入製品 :
課題
・グループ内でサイトの品質やガバナンス、セキュリティレベルにばらつきがあった
・新規サイトの公開やリニューアルに伴う申請手続きが煩雑だった
・サイトの制作や更新に時間とコストがかかり、戦略的活用に十分なリソースを割けなかった
成果
・ CMSやCDN、フォーム、アクセス解析などを共通基盤に集約し、ガバナンスを強化
・制作センターに制作業務を集約したことにより、軽微な修正の反映期間を5日程度から1日程度に短縮
・サービス開始から1年で130サイト、6,000ページを移行し、サイト制作・運用にかかる負担を削減
・「制作」と「戦略」の業務比率を8:2から2:8へ転換することを目指し、サイトの設計や分析・検証など戦略的業務に注力できる仕組みを構築
・申請手続きに関する問い合わせから、分析結果を踏まえたリニューアルなど高度な相談へと変化
“単なるwebサイトの共通基盤ではなく、真のデジタルコミュニケーションプラットフォームに成長させていくためにも、将来さまざまなアドビのソリューションと組み合わせて拡張できる可能性を見据えると、Adobe Experience Managerは最適解だったと思います。導入時よりも、1年半経った今の方がより『選んでよかった』と感じています”
浅尾 陽子氏
ブランドコミュニケーション部
デジタルコミュニケーショングループ グループマネージャー
家電製品から産業機器、宇宙システム、社会インフラまで幅広い事業を展開する大手総合電機メーカーの三菱電機株式会社。三菱電機グループ全体のブランド力向上をデジタルで支援するブランドコミュニケーション部デジタルコミュニケーショングループでは、2025年からグループ各社が戦略的にサイトを運営するための共通基盤「DCPシェアハウス」の提供を開始した。
webサイトのガバナンスと制作・申請にかかる負担が課題に
デジタルコミュニケーショングループでは、グループ企業各社が安心してwebサイトを運営できるように、社内ホスティングサービスの提供や、情報発信にあたってのルール策定、アクセシビリティに対応するためのガイドラインの整備などを行ってきた。
しかし、国内外に多数のグループ企業が存在するため、担当者によってガイドラインの解釈が異なるなど、ガバナンスが機能しにくい状況があった。
また、新規サイトとして公開する際や大規模リニューアル時には、デジタルコミュニケーショングループを含む複数の部門が運営する事務局に申請手続きを行う必要があり、セキュリティ調査結果等を含む申請書類の準備だけで1〜2カ月、さらに承認完了まで3〜4週間を要するなど、事務局とサイトオーナーの双方にかかる負担も大きかった。グループマネージャーの浅尾 陽子氏は、DCPシェアハウスの構築前に実感していた課題をこう振り返る。
「webサイトは単に情報を発信するだけではなく、事業の促進や採用活動などの目的を果たすために戦略的に活用するもの。本来は戦略策定や検証・改善にコストと時間をかけるべきなのに、実際はサイトの制作作業や申請手続きに時間がとられており、この状況を効率的に解決できる方法はないか、という長年の悩みがありました」
サイト運営の共通基盤「DCPシェアハウス」を構築
状況を打開するために、webサイト運営に長く関わっていたグループメンバーのアイディアを結集してたどり着いたのが「DCPシェアハウス」だ。サイト運営に必要なCMSやCDN、フォーム、アクセス解析などを組み合わせたプラットフォームである。
例えるなら、従来のホスティングサービスは「最低限のインフラを整備した綺麗な土地を提供し、建物はサイトオーナーが自由に建てる」というモデル。自由度が高い分、最新設備を備えた建物もあれば、耐震性能が十分ではない建物もあるなど、サイトオーナーに委ねられる「建物」=webサイトの品質にばらつきがあった。
一方、DCPシェアハウスは「超高級マンションに、身一つで入居できる」というモデル。webサイトに必要な機能やパーツ、セキュリティ対策は、「家主」であるデジタルコミュニケーショングループが用意する。
「例えば、多くのサイトオーナーから『プールが欲しい』という要望があれば、共通機能として追加します。これまでサイトごとに独自で作っていた機能を共通化でき、保守のコストが削減できます」(浅尾氏)
このDCPシェアハウスでCMS(コンテンツ管理システム)を担っているのがAdobe Experience Manager(AEM)だ。導入の決め手について、浅尾氏は次のように話す。
「AEMは利用可能なパーツが豊富に用意されているため、コンセプトに合わせて柔軟にカスタマイズできます。リリース後も機能を追加してサービスを拡充できる可能性を秘めているとともに、ガバナンスの範囲も柔軟に調整できます」
導入のもう一つの決め手となったのが、アドビのソリューションが持つ拡張性の高さだ。
「DCP(Digital Communication Platform)という言葉通り、webサイトだけではない『デジタルコミュニケーションのプラットフォーム』として成長させるために、アドビの他のソリューションを組み合わせる将来も視野に入れています。グローバルなデジタルの最先端企業として、顧客視点に立ったソリューションを提供しているアドビのAEMこそが最適解だと考えました」(浅尾氏)
シェアハウスの移行事例を示し、サイトオーナーの不安を払拭
社内でDCPシェアハウスを発表したとき、サイトオーナーから期待が集まる反面、「自分たちのwebサイトがどう変わるのかわからない」という不安の声もあり、その不安を覆すためには事例が必要だった。そこで、先行してデジタルコミュニケーショングループで統括する38カ国/地域、26言語、 61の企業情報サイトを移行し、事例として展開。さらに、いち早く利用を希望したサイトも優先的に移行を進めて事例を増やしていった。
「複数の移行事例ができたことで、他のサイトも移行が促進されるようになりました。最初に移行を打診したあるサイトオーナーから、1年半経った先日、『移行のイメージがより具体化したので、決心がつきました』という言葉をいただきました」(浅尾氏)
「DCP制作センター」のワンストップサポートで「戦略」に注力
DCPシェアハウスでは、「DCP制作センター(以下、制作センター)」がコンポーネントや標準機能への置き換えなど制作業務を一手に引き受け、サイトの品質を均一化している。サイトオーナーはページ構成やデザインの方向性などを用意すれば、制作センターが制作・更新から公開までの工程をワンストップでサポートしてくれる。
「制作センターがAEMのコンポーネントを組み合わせてサイトを制作するので、ガバナンスを担保でき、サイトオーナーの負担軽減にもつながります。これまで『制作』と『戦略』にかける業務の比率が8:2だったところを、2:8に逆転させることを目指しています」(浅尾氏)
DCPシェアハウスの料金体系はコンテンツ数に応じた月額固定で、インフラ費用・制作センター稼働費・CDN・セキュリティをすべて含む「オールインクルーシブ方式」が採用されている。
「サイトオーナーにヒアリングすると、限られた年間予算の中で更新に時間とコストがかかり、分析や検証までリソースを割けられないという声がありました。制作センターに一任できるようになり、効果検証はもちろん、目的に合わせたサイト設計など戦略的業務に集中できるようになります。AEMのオーサリング機能と、制作業務を代行する制作センターの運用体制を組み合わせることで、品質を保ちながらサイトオーナーの負担とコストを抑え、成果の最大化を実現しています」(浅尾氏)
130サイト・6,000ページを移行、制作・運用の負担を削減
サービス開始から1年半で130サイト・6,000ページの移行を達成したDCPシェアハウス。サイトオーナーからは、工数やコストの削減効果が評価されている。これまでは、軽微な修正でも更新スキームが煩雑化していたため、公開までに5日ほどかかっていたが、現在はDCP制作センターが一気通貫して対応するため最短で翌日には公開できるまでに短縮している。
加えて、従来のホスティングサービスよりセキュリティレベルが大幅に向上したほか、AEMのコンポーネントをベースに制作することで、HTMLの構造品質やアクセシビリティも均一化。ブランドコミュニケーション部が指示しているブランドガイドラインに準拠したページができる仕組みにより、必然的にガバナンスも向上しているという。
「これまで、サイトオーナーからの相談は申請手続きに関する問い合わせがほとんどでしたが、最近は分析結果を踏まえたリニューアルなど高度な相談が増えてきています。戦略にリソースを割けるようになった兆候だと評価しています」(浅尾氏)
Adobe Ultimate SuccessがDCPシェアハウスの成長を支援
さらに同社では、アドビのCustomer Success Managerが同社とアドビの間に立ち、関係するステークホルダーとのコミュニケーションを支援する「Adobe Ultimate Success」を利用している。このサービスについて、浅尾氏は3つの点を評価している。
1つ目は障害対応だ。DCPシェアハウスは複数ベンダーが関与する構成であるため、障害対応の難易度が高い。複数ベンダーをブランドコミュニケーション部が束ねる中、アドビが率先して問題箇所の切り分けを行い、各ベンダーとの調査方針の調整を支援することで、早期解決につながっている。
2つ目は、毎月1回開催される情報共有会などを通して、Adobeソリューションの最新情報が共有されることだ。定期的に開催されるアドビのイベントも他社の担当者との橋渡しとなり、成功事例を共有し合う社外のつながりを生み出しているという。
そして3つ目が、DCPシェアハウスの将来設計を見据えた提案だ。
「我々だけでは視野が狭くなりがちなので、新しい視点からの提案をもらうことで成長の可能性が広がります。デジタルの世界がどのように変容するかわからない中で、これからも心強いサポーターとしてグローバルな情報や気づきを提供していただき、デジタルを通じた顧客体験価値の向上を実現するアドビと共にロードマップを描いていきます」(浅尾氏)
今後は社内のホスティングサービスを終了し、利用中のサイトを優先的に移行。将来的には、社内のホスティングサービスを利用していなかったサイトも含めたすべてのサイトを集約することを目指す。
「アメリカ・アジア・中国・欧州の4拠点のキーマンとの対話も開始しています。グローバルに移行事例を示しながら誘致活動を推進して、グループ全体のデジタルガバナンス強化を確実に達成したいと思います。『2026 Japan Adobe Advocates』に選出していただいたこともプロジェクトの箔付けとなり、国内外における今後の誘致活動の強力な後押しになると期待しています」(浅尾氏)
※掲載された情報は2026年10月現在のものです。