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課題
- 新型コロナウイルスの感染拡大でドラマ撮影が制約され、撮り置きの限られた画像や映像を使用せざるを得ない状況だった
成果
- ドラマのシーンに耐えうる、高画質でインパクトのある画像・映像が充実
- ロケ撮影時にかかっていた多額のコストを削減
- イメージに近い画像・映像をAIが提案
- 素材を自由に加工でき、Adobe Premiere Proなどでシームレスに画像・映像を編集が可能に
「Adobe Stockの画像や映像素材は自由な編集が認められている素材が多いので助かっています。実景シーンとして馴染むクオリティの高さに驚かされています」
コンテンツ制作局 ドラマ制作部 三宅 勇輝氏
ドラマやバラエティ、報道・スポーツ番組など、多彩なジャンルのテレビ番組を制作、放送する株式会社TBS テレビ。なかでも良質でエンタテインメント性の高いドラマづくりには定評がある。コロナ禍の影響でロケの頻度を減らさざるを得なくなった2020 年、同局はロケ撮影の一部をAdobe Stockの高品質な動画・静止画素材で代替する取り組みを始めた。
コロナ禍の影響でロケ撮影の頻度が減少
1955年の開局以来、民間放送テレビ局として質の高い番組を数多く制作、放送してきた株式会社TBSテレビ(以下、TBS)。多彩なジャンルの番組を手掛けているが、長年「報道のTBS」「ドラマのTBS」と言われてきたように、この2つの分野の番組は同局の看板とも呼べる存在となっている。なかでもドラマは、開局翌年の1956年から放送されている「日曜劇場」をはじめ、良質でエンタテインメント性の高い番組が多く人気が高い。
近年は、地上波やBS、CS などのテレビ放送のほか、動画配信サービスU-NEXT などインターネットによる配信にも力を入れている。テレビでドラマを楽しむのは主に40 代以上の視聴者だが、より若年層の視聴者は、スマートフォンやタブレット端末で視聴できる配信サービスを利用する割合が高く、テレビで放映したドラマのスピンオフ作品を配信限定で提供するといった新しいビジネスも次々と生まれている。優れたドラマづくりで定評のある同社にとって、視聴手段の多様化は、ビジネス機会を大きく広げるチャンスにもつながっているようだ。
一方で、ドラマ制作をめぐっては、2020 年に大きな逆風が巻き起こった。新型コロナウイルスの感染拡大によって、多数のスタッフが集まるドラマ撮影が制約され、番組が通常通り制作できなくなるという事態に陥った。ほどなく、参加人数の制限や一定距離の確保といったルールのもとで撮影は再開されたが、コロナ前に比べると撮影の規模は縮小せざるを得なくなり、大人数のスタッフを要するロケ撮影の頻度は著しく減ったという。
テレビ放送の品質に適した高画質な画像・映像が多く、類似素材も豊富
撮影が思うようにできなくなれば、ストックされている風景の画像や映像を使用せざるを得ない。
「自社のテレビ局が所有する撮り置き素材はありますが、監督がイメージする良い素材が見つかったとしても、不特定多数の人が利用する公共の場所や他人が所有・管理している場所などは各方面から使用許諾を得るのに、また相当な時間と労力を要することが多いので、何か良い方法はないかと考えていました」
そう語るのは、TBSのコンテンツ制作局 ドラマ制作部で現在ドラマ制作の助監督を務める三宅 勇輝氏である。
「いまやテレビは4Kが主流ですが、その繊細な表現に対応できる十分な画質がなければ、ドラマに使用できません。コロナ禍以前からさまざまなストックサービスを使うことはありましたが、Adobe Stockは他サービスと比べても素材のクオリティが高く、素材数が圧倒的に多いだけでなく、非常に高画質な画像・映像が充実していることが使用の決め手になりました。縦型の素材が豊富なのもありがたいです」(三宅氏)
さらに三宅氏が注目したのが、検索性の高さと柔軟さだ。Adobe Stockはイメージしている素材のキーワードや静止画ファイルで検索すると、Adobe SenseiによるAI基盤を使ったレコメンド機能が、類似する素材を表示する。「候補が増えることで『これならもっと良いシーンが作れるかも』と発想も広がります」(三宅氏)
利用料金を情報システム部門に確認したところ、同局はアドビとエンタープライズタームライセンス契約(ETLA)でAdobe Stockを拡張ライセンスで利用できる契約を締結しており、ニーズに合わせて利用するサービスやライセンスの追加が柔軟に行えることがわかった。情報システム部門から、「ドラマ制作の効率化やコスト削減に寄与するのであれば、積極的に先例を作ってほしい」とゴーサインを得た三宅氏は、早速Adobe Stockの活用を開始した。
海外ロケを縮小し、多額のコストを削減
三宅氏が最初にAdobe Stockの画像・映像を活用したのは、TBSテレビが2021年10月から「日曜劇場」で放映したドラマだった。このドラマの第1話の冒頭で、地球温暖化の影響により世界中で起こった天変地異の様子が次々と映し出される。大氷河が轟音を立てて崩れ落ちる様子、広大な森林を焼き尽くす山火事、工業地帯や道路から大量に吐き出される二酸化炭素など、どれもが衝撃的なシーンばかりだ。その多くが、Adobe Stockの膨大なコンテンツ素材の中から三宅氏が選び出した映像である。
「実際に数カ月間におよぶ海外撮影を実施すると、多額の費用がかかります。そもそも山火事のようなアクシデントは、タイミングよく撮れるものではありません。そんな映像を格段に安いコストで、時間もかけずに利用できるのですから、効果は非常に大きいと言えます。現在制作に携わっているドラマでは、Adobe Stockにあった中東の街並みの空撮映像や爆破シーンのイメージ映像を実際に活用して、海外での撮影を最小限に抑えました。国内でも撮影が困難な場所があれば、TBSのスタジオにあるグリーンバックを背景に撮影し、後日編集でAdobe Stockの素材を投影することもあります」と三宅氏は説明する。
購入した素材を合成・編集してドラマのワンシーンを補助
もう1つ、三宅氏がAdobe Stockのメリットとして感じているのは、テレビ放送を前提とした合成や編集を自由に行える素材が多い点だ。たとえば過去に携わったドラマでは、Adobe Stockの中から選んだ1羽のカラスの動画を何千、何万羽にも増殖させ、一斉に飛び立たせるという現実には撮影が困難なシーンを描いた。
「素材の加工は著作権に注意を払う必要がありますが、Adobe Stockは自由な加工が認められている素材が多いので助かっています。また、AdobeのCreative Cloud製品であるPremiere Proの編集画面からも直接シームレスにAdobe Stockを検索して直接取り込めるので、今後の編集作業の効率改善につなげたいです」(三宅氏)
車窓風景にもAdobe Stockを活用していきたい
一時期のコロナ禍が過ぎ去った現在も、コストを抑え時間短縮と品質確保ができることからAdobe Stockの素材をドラマ制作に活用するケースはむしろ増えており、映像より画像素材を活用する機会の方が多いと言う三宅氏。例えば、部屋や廊下などのシーンに映りこむポスターなど小道具の美術発注や、ドラマのDVD BOXの背景とバナーにもAdobe Stock素材を基に加工された画像が使用されている。
「現在は、スタジオ内に置いた車等の外側に大型LEDディスプレイを設置し、走行中の風景動画を表示しながら撮影する機会が増えています。Adobe Stock素材は大型LEDディスプレイを用いた撮影にも使えるので、今後もAdobe Stockを取り入れながら新しい時代の表現に挑戦していきたいです」と期待を込めて語った。
※掲載された情報は、2023年9月現在のものです。